日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC28] 活動的⽕⼭

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.16

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)

17:15 〜 18:30

[SVC28-P12] 2019-2020年西之島噴火における噴火様式の劇的な変化

*前野 深1、金子 隆之1、外西 奈津美1、安田 敦1、田村 芳彦2 (1.東京大学地震研究所、2.海洋研究開発機構)

キーワード:西之島、噴火、ドローン、玄武岩質安山岩、火砕堆積物、溶岩流

火山噴火では、一連の活動中に噴火様式が大きく変化することがある。そのような変化を引き起こす原因の解明は、噴火推移予測において重要である。西之島における最新噴火では、2020年6-7月に噴出率が急激に増加し、溶岩流主体の噴火から火砕物主体の噴火へと噴火様式が大きく変化した。本発表では、2020年12月に実施したかいれい航海 KR20-E06での調査観測で明らかにした西之島の最新の地質地形や活動状況について報告するとともに、ドローンによるサンプルリターンにより得られた噴出物の解析結果をもとに、最新噴火の推移や活動様式の変化の原因について考察する。
 2019-2020年の活動における最も大きな特徴は、活動様式が爆発的噴火へ変化したことにより、島全体が火砕堆積物で厚く覆われたことである。ドローンにより取得した静止画像をもとにDEMを作成し、最新噴火前後の地形変化量を推定した結果、増加体積は約1億m3、このうち火砕丘の占める割合は約60%と見積もられ、噴火前の約10%より大きく増加した。また、溶岩流は火山灰に厚く被覆されたが、侵食されて内部が露出した場所では噴気が生じ、高温状態を示す。噴火後、半年経っても活発な噴気活動や高温部が広く認められる状況は、これまでの西之島では観察されていなかった。このような変化の原因として、火砕堆積物の熱伝導率が低く、溶岩の冷却が遅れている可能性が考えられる。
 ドローンにより島の西側の複数箇所で火山礫および火山灰を採取した。火山礫の全岩化学組成を分析したところ、SiO2含有量54-55wt.%の玄武岩質安山岩であった。この結果は2020年7月に気象庁観測船が採取した火山灰バルク分析値とほぼ同じであり、今回の活動でマグマ組成がこれまでのSiO2含有量59-60wt.%の安山岩から大きく変わったことを裏付けるものである。斑晶鉱物についても、斜長石An値の増加、かんらん石が一般的に認められるようになるなど大きな変化がある。また、全岩化学組成においてはZr/Yなど液相濃集元素濃度比の変化も認められる。このような噴火様式やマグマの特徴の劇的な変化は、これまでの活動で定常的に混合していた苦鉄質マグマとは異なる、新たなマグマが噴火に関与した可能性を示唆する。具体的には、揮発性成分に富む未分化マグマが偶発的に深部から上昇した可能性や、長期の活動によりマグマ溜りから大量のマグマが排出されたことに起因して深部マグマの移動・再配置・上昇が起きた可能性が考えられる。