日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC30] 火山・火成活動および長期予測

2021年6月3日(木) 13:45 〜 15:15 Ch.25 (Zoom会場25)

コンビーナ:長谷川 健(茨城大学理学部地球環境科学コース)、及川 輝樹(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、三浦 大助(大阪府立大学 大学院理学系研究科 物理科学専攻)、下司 信夫(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、座長:辻 智大(山口大学大学院創成科学研究科地球科学分野)、穴井 千里(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)

15:00 〜 15:15

[SVC30-06] 西之島は2020年噴火で何を噴出したのか?

*田村 芳彦1、佐藤 智紀1、吉田 健太1、前野 深2、石塚 治1,3、平井 康裕1、多田 訓子1、馬場 聖至2、末次 大輔1、三好 真依子4、小野 重明1 (1.海洋研究開発機構 海域地震火山部門、2.東京大学地震研究所、3.産業技術総合研究所、4.日本放送協会)

キーワード:バイオレント・ストロンボリ式噴火、安山岩マグマ、バイモーダル火山活動

2013年、40年ぶりに噴火を再開した小笠原弧・西之島は安山岩溶岩を噴出するストロンボリ式噴火を断続的に継続した。地殻が薄い海洋島弧における安山岩マグマの生成は大陸の起源と密接に関係している(Tamura et al., 2016; 2018)。ところが、2020年6-8月には、溶岩流出から一転して、大量の火山灰を噴出するバイオレント・ストロンボリ式噴火に移行した(栁澤ほか、2020)。溶岩でおおわれていた島は火山灰におおわれ、円錐形をしていた火砕丘は大きく裂けた。この噴火様式の突然で劇的な変化は、今後の爆発的な噴火を示唆するのだろうか。

海洋島弧においてもカルデラを生成する巨大噴火が知られている(eg., Yuasa et al., 1991)。伊豆弧のスミス島やマリアナ弧のウエスト・ロタ火山は直径10㎞のカルデラをもつ。これらのカルデラ壁を潜水艇で観察すると、流紋岩マグマ(軽石)を大量に噴出したカルデラ生成の巨大噴火の下位にはバイモーダルな火山活動(黒白火山灰の互層)が見られる(Tamura et al, 2005; Shukuno et al., 2006; Tani et al., 2008; Stern et al., 2008)。バイモーダルな火山活動がカルデラ噴火の前兆となっている可能性がある。西之島の2020年6月から8月のバイオレント・ストロンボリ式噴火は果たしてバイモーダルな火山活動だったのだろうか。

JAMSTECにおいて、2020年12月15日から12月29日にかけて西之島火山噴火調査(KR20-E06「かいれい」)がおこなわれた。西之島2020年噴火の火山噴出物の実体を明らかにすることを目的の一つとした緊急調査である。ボックスコアラー採泥器を用いて、西之島の海底斜面(水深1,000 m〜1,500 m)に堆積した火山砕屑物を採取した。ボックスコアラーは海底の表層(深さ20㎝前後)しか採取できないが、多量の溶岩岩片とともに、新鮮なスコリア(図1)や軽石(図2)が採取された。また2021年1月21日から1月30日の令和2年度共同利用航海(KS-21-2)において、西之島から15km北の水深2,500 mにおいて斜面に形成された段差の直上に厚さ約1mの黒白火山灰の互層を観察し(図3)、プッシュコアで未固結の火山灰を採取した。白い層は細粒の軽石を主体としており、そのガラス組成はシリカ量67%のデイサイトであった。

2020年のバイオレント・ストロンボリ式噴火は玄武岩質安山岩とデイサイトのバイモーダル火山活動であったと考えられる。安山岩マグマの流出からバイモーダル火山活動へと移行した可能性もあり、西之島の今後の活動を注視していく必要がある。