日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC31] 火山噴火のダイナミクスと素過程

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.16

コンビーナ:鈴木 雄治郎(東京大学地震研究所)、並木 敦子(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻)、大橋 正俊(東京大学地震研究所)

17:15 〜 18:30

[SVC31-P07] 伊豆大島火山山頂噴火の噴出物組織

*池永 有弥1、前野 深1、安田 敦1 (1.東京大学 地震研究所)


キーワード:伊豆大島、気泡組織、マイクロライト

玄武岩質マグマを噴出する活火山である伊豆大島は, 山頂および山腹からこれまでに数多くの噴火を起こしてきた. 最近の噴火としては1986年や1950年などの中規模噴火が知られており, さらに昔には150-200年おきに大規模噴火を起こしてきたことがわかっている(Nakamura 1964, 一色 1984, 小山・早川 1996, 遠藤ほか 1988). 伊豆大島ではこれまでに数多くの地質・岩石学的研究が行われ, それぞれの噴火の推移やマグマシステムが明らかになりつつある(川辺 1991, Nakano and Yamamoto 1991, Hamada 2014, Ishizuka et al. 2015). 一方で噴出物組織の解析を行った研究は少なく, 噴火強度と噴出物組織の関係は明らかになっていない. そこで本研究では山頂火口から発生した噴火に注目し, ストロンボリ式噴火として1986年噴火, サブプリニー式噴火としてY1, Y2, Y4, Y6噴火のスコリアについて, 気泡およびマイクロライト組織の分析を行った. Y1噴火については前半(Unit A)および最盛期である後半(Unit C)の2つの層準に分けて分析した.

まずガラスビーズを用いてスコリア粒子の密度を計測し, 各噴火について低密度の試料から1粒子, 平均的な密度の試料から2粒子, 高密度の試料から1粒子を選び, 薄片を製作した. さらにFE-EPMAを用いて反射電子像を取得し, ImageJを用いて画像解析を行った.

気泡組織については噴火様式ごとに違いが見られ, ストロンボリ式噴火である1986年噴火のスコリアでは大きいサイズの気泡が多く見られた. 一方サブプリニー式噴火のスコリアでは小さいサイズの気泡が多く, 気泡数密度は1986年噴火より高いものが多くなった. Y1噴火のUnit Cでは気泡数密度が特に高い値となった. スコリアの密度はY1噴火のUnit Cで最も高くなった. マイクロライトはほとんどの噴火で観察されたが, Y1噴火のUnit Cではマイクロライトが比較的少なかった.

気泡組織の分析から, 噴火強度が高いほど小さい気泡が多く存在する傾向が見られる. 高い強度の噴火では, マグマ上昇速度が大きく, 揮発性成分に対する過飽和度が大きくなることで気泡の核形成が進んだと考えられる. 一方1986年噴火などの弱い噴火では, 気泡の成長, 合体, 脱ガスなどが進んだ結果, 大きな気泡の割合が高くなり, 気泡数密度が小さくなったと考えられる. マイクロライトは強度が高いY1 Unit Cではほとんど見られなかった. 過飽和度は高かったと考えられるが, 大きな上昇速度のため十分に発泡することができず, リキダスの低下が十分に進まず結晶化が起こらないまま噴出した可能性がある.