15:30 〜 15:48
[U02-06] 東日本大震災からの復興に向けてー漁業・水産業の復興を目指したTEAMS研究-
★招待講演
キーワード:東日本大震災、漁業復興、東北マリンサイエンス拠点形成事業(海洋生態系の調査研究)、海洋生態系
2011年3月11日、宮城県牡鹿半島沖合を震源とするマグニチュード9.0 の東北地方太平洋沖地震が発生した。また、地震による大津波が東北地方太平洋側沿岸に押し寄せた。沿岸の街では多くの民家が破壊され、鉄道や道路も寸断された。列車が山手に流された場所もあった。多くの自動車は津波に飲まれ、沿岸の工場等産業施設やビルなども倒壊した。地盤沈下も起こった。水産関連施設も同様に港湾の破壊、船舶の沈没や流出、水産加工場や冷凍冷蔵施設も機能不全に陥った。養殖施設もそのほとんどが破壊され、沈下あるいは浮遊している状況になった。そして、陸上で破壊された様々な物体が瓦礫となり海へ流出した。オイルなどの有害物質も海へ流れ出ていった。三陸の主要産業である漁業・水産業は壊滅状態となった。
陸上の被害状況は一目瞭然であるが、海洋の被害状況は、予測こそできるものの、瓦礫の種類や量、有害物質の有無、魚介類の状況、海水の状態など、その実態を容易に知ることはできない。調査船や潜水器具などを使用することなど、専門家による調査によらなければならなかった。この未曽有の災害に対して文部科学省は海洋生態系の回復を促進させる技術開発や科学的知見により漁業・水産業の復興に寄与することを目標としたプロジェクト、「東北マリンサイエンス拠点形成事業(海洋系の調査研究)(以下TEAMSと略す)」を開始した。TEAMSは東北大学が代表機関、東京大学大気海洋研究所、並びに海洋研究開発機構が副代表機関となり、東京海洋大学、岩手大学、北里大学、東海大学、(株)ヤンマーが機関として参加(委託機関)するとともに、全国の大学や研究機関に所属する研究者や技術者なども参画するプロジェクトとなった。
漁業・水産業は、海洋(河川や湖沼も含め)という環境や生態系が保有する自然の生産力を活用した産業である。それ故、漁業・水産業の復興を目指した場合、東日本大震災によって海洋環境や海洋生態系がどのような状態になったのかを正確に、科学的に知ることが基盤となる。それらの情報がなければ復興の方策もビジョンも立てることができない。海洋科学のあらゆる分野のエキスパートが集まったTEAMSは、三陸沿岸域から三陸沖合域の表層から底層に至る範囲の状態を調査することから始めた。海底地形の変化やがれきの量と分布、海水温や塩分、クロロフィルa量や動植物プランクトンの種類や量、有害物質の分布やがれきの分布、生物の種組成や分布、栄養塩の量、流れなど、物理学的、化学的、生物学的、地球科学的調査を行い、震災前のデータと比較することで被害状況を明らかにしてきた。調査地域があまりにも広範囲に及ぶことから、東北大学農学研究科の教育研究拠点がある女川湾と東京大学大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センターがある大槌湾を拠点に、最も被害が大きかった宮城県から岩手県に至る海域を中心に調査した。同時に、壊滅状態となった漁業・水産業の復興に対しても海域の状況調査と共に、現場のニーズに寄り添い、復興に必要な技術や手法の開発も少しずつではあるが開始した。
政府は前半5年間を「集中復興期間」、後半5年間を「復興・創生期間」と位置付け、基本方針を明記した。TEAMSは前半に漁業・水産業復興の基盤となる海洋環境、海洋生態系の変化を明らかにしてきた。集中復興期間には海洋環境、海洋生態系モニタリング調査を中心に行った結果、調査項目によっては震災前の状態に戻る場所、まだまだ変化を続ける場所などがあった。一方、変化に対応しながら養殖業や漁船漁業が開始されはじめ、実際の復興活動をしながら漁業・水産業を創造する動きが出てきた。そこで、「復興・創生期間」では、モニタリング調査を継続し、基盤となるデータを集積するとともに、実際の漁業・水産業復興への貢献を目指した科学的調査研究活動も実施した。具体的には震災後ウニ類の大量発生により磯焼けとなった漁場の再生と管理、養殖ワカメの色落ちに対応した養殖技術の開発と実践、マボヤ・マガキ・ホタテガイ養殖における餌料の違いや適性収容量(養殖量)の推定、瓦礫によって不可能となったホッキガイ漁業の漁法開発、シジミ資源の漁場開発と資源管理法、漁業資源の保護を目的とした長期時系列観測カメラの開発と運用、先端技術を用いたサケの病害防除や沿岸回遊分析、地元要望に基づくマナマコの増養殖生産などに関する研究を実施した。さらに、今後の持続的漁業・水産業の展開に寄与するために、本事業当初からの多項目、多地点の長期モニタリング調査データを活用して、ハビタットマップの作成や物理モデルの構築を行った。これらの調査結果は、国内外のシンポジウムや研究集会などの学術的な発表だけではなく、ステークホルダーとなる漁業者、漁業関係団体、地方自治体への成果報告会と説明会を積極的に行い、漁業復興や持続的漁業展開に向けた科学の重要性について理解を深めた。
陸上の被害状況は一目瞭然であるが、海洋の被害状況は、予測こそできるものの、瓦礫の種類や量、有害物質の有無、魚介類の状況、海水の状態など、その実態を容易に知ることはできない。調査船や潜水器具などを使用することなど、専門家による調査によらなければならなかった。この未曽有の災害に対して文部科学省は海洋生態系の回復を促進させる技術開発や科学的知見により漁業・水産業の復興に寄与することを目標としたプロジェクト、「東北マリンサイエンス拠点形成事業(海洋系の調査研究)(以下TEAMSと略す)」を開始した。TEAMSは東北大学が代表機関、東京大学大気海洋研究所、並びに海洋研究開発機構が副代表機関となり、東京海洋大学、岩手大学、北里大学、東海大学、(株)ヤンマーが機関として参加(委託機関)するとともに、全国の大学や研究機関に所属する研究者や技術者なども参画するプロジェクトとなった。
漁業・水産業は、海洋(河川や湖沼も含め)という環境や生態系が保有する自然の生産力を活用した産業である。それ故、漁業・水産業の復興を目指した場合、東日本大震災によって海洋環境や海洋生態系がどのような状態になったのかを正確に、科学的に知ることが基盤となる。それらの情報がなければ復興の方策もビジョンも立てることができない。海洋科学のあらゆる分野のエキスパートが集まったTEAMSは、三陸沿岸域から三陸沖合域の表層から底層に至る範囲の状態を調査することから始めた。海底地形の変化やがれきの量と分布、海水温や塩分、クロロフィルa量や動植物プランクトンの種類や量、有害物質の分布やがれきの分布、生物の種組成や分布、栄養塩の量、流れなど、物理学的、化学的、生物学的、地球科学的調査を行い、震災前のデータと比較することで被害状況を明らかにしてきた。調査地域があまりにも広範囲に及ぶことから、東北大学農学研究科の教育研究拠点がある女川湾と東京大学大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センターがある大槌湾を拠点に、最も被害が大きかった宮城県から岩手県に至る海域を中心に調査した。同時に、壊滅状態となった漁業・水産業の復興に対しても海域の状況調査と共に、現場のニーズに寄り添い、復興に必要な技術や手法の開発も少しずつではあるが開始した。
政府は前半5年間を「集中復興期間」、後半5年間を「復興・創生期間」と位置付け、基本方針を明記した。TEAMSは前半に漁業・水産業復興の基盤となる海洋環境、海洋生態系の変化を明らかにしてきた。集中復興期間には海洋環境、海洋生態系モニタリング調査を中心に行った結果、調査項目によっては震災前の状態に戻る場所、まだまだ変化を続ける場所などがあった。一方、変化に対応しながら養殖業や漁船漁業が開始されはじめ、実際の復興活動をしながら漁業・水産業を創造する動きが出てきた。そこで、「復興・創生期間」では、モニタリング調査を継続し、基盤となるデータを集積するとともに、実際の漁業・水産業復興への貢献を目指した科学的調査研究活動も実施した。具体的には震災後ウニ類の大量発生により磯焼けとなった漁場の再生と管理、養殖ワカメの色落ちに対応した養殖技術の開発と実践、マボヤ・マガキ・ホタテガイ養殖における餌料の違いや適性収容量(養殖量)の推定、瓦礫によって不可能となったホッキガイ漁業の漁法開発、シジミ資源の漁場開発と資源管理法、漁業資源の保護を目的とした長期時系列観測カメラの開発と運用、先端技術を用いたサケの病害防除や沿岸回遊分析、地元要望に基づくマナマコの増養殖生産などに関する研究を実施した。さらに、今後の持続的漁業・水産業の展開に寄与するために、本事業当初からの多項目、多地点の長期モニタリング調査データを活用して、ハビタットマップの作成や物理モデルの構築を行った。これらの調査結果は、国内外のシンポジウムや研究集会などの学術的な発表だけではなく、ステークホルダーとなる漁業者、漁業関係団体、地方自治体への成果報告会と説明会を積極的に行い、漁業復興や持続的漁業展開に向けた科学の重要性について理解を深めた。