11:00 〜 13:00
[AAS11-P04] GOSAT–2データを用いた温室効果ガス発生源のEnhancement Ratioの解析
キーワード:GOSAT-2、二酸化炭素、メタン、一酸化炭素
人工衛星GOSAT–2(Greenhouse gases Observing SATellite – 2)に搭載のTANSO–FTS–2(Thermal and Near–infrared Sensor for Carbon Observation – Fourier Transform Spectrometer – 2)の短波長赤外バンドの輝度スペクトルから、二酸化炭素、メタン、一酸化炭素のカラム平均気体濃度(XCO2、XCH4、XCO)が導出されている。本研究では、これらのGOSAT–2のカラム平均気体濃度の同時・同視野の観測データを用いて、全球で新たな統一的手法による「Enhancement Ratio(ER)」の算出を試みた。ERは、各気体のバックグラウンド濃度からの超過濃度を計算し、二つの気体について超過濃度の比を取ることで定義される[Andreae and Merlet, 2001]。ERは気体のエミッションの情報を表す指標で火災からの気体排出量の推定にも必要な要素である。
まず、GOSAT-2の各気体のカラム平均気体濃度を用いて月別のバックグラウンド濃度を算出した。算出したバックグラウンド濃度の全球分布は、発生過程や消失過程の傾向を反映していた。本研究のカラム平均気体濃度のバックグラウンド濃度と気象庁の地上観測による大気バックグラウンド汚染観測データを比較したところ、本研究のバックグラウンド濃度は気象庁のデータと比較して季節変動の位相が1 – 2ヶ月ほど遅れていた。また、両者には気体濃度の鉛直プロファイルおよびその季節変動に起因すると思われる濃度差が見られた。
次に、GOSAT-2の各気体の超過濃度(ΔXCO2、ΔXCH4、ΔXCO)を求めた。算出した超過濃度には、発生源の影響を反映した全球分布や季節性が見られた。さらに、緯度・経度5度ごとに二種類の気体の超過濃度を両軸に取ったときの最小二乗法による線形回帰直線の傾きでERを算出したところ、ΔXCH4/ΔXCO2とΔXCH4/ΔXCOについては、各超過濃度間に有意な正相関が見られ、全球の広範囲でERを定義できた。一方、ΔXCO/ΔXCO2については超過濃度間に有意な相関が見られず、全球の広域でERを定義できなかった。
さらに、特徴的な領域についてΔXCH4/ΔXCO2とΔXCH4/ΔXCOを算出した。バイオマス燃焼の頻発地域では、燃焼が盛んな時期に他の季節よりもΔXCH4とΔXCO2の相関が強い傾向が見られた。燃焼地域におけるΔXCH4/ΔXCO2の算出値は、ポートハーコート周辺のサバンナ等の燃焼で最も大きく(4.93 ppb/ppm)、次いでシドニー周辺の温帯林の燃焼(3.20 ppb/ppm)、アマゾンにおける熱帯林の燃焼(2.27 ppb/ppm)の順に大きく、アラスカ、シベリアにおける北方林の燃焼で最も小さい(2.16、1.69 ppb/ppm)という結果が得られた。なお、本研究で算出したERは、Parker et al.[2016]のERとサバンナの燃焼では概ね一致したが熱帯林の燃焼では一致しなかった。他の特徴的な結果として、ムンバイやテヘランでは雨季の終了とともにΔXCH4/ΔXCOが急増する結果が見られた。
また、本研究から、ERの算出値はバックグラウンド濃度や解析対象範囲の設定に大きく依存しうることがわかった。講演では、バックグラウンド濃度算出手法を変えた場合のERへの影響についても議論する。
まず、GOSAT-2の各気体のカラム平均気体濃度を用いて月別のバックグラウンド濃度を算出した。算出したバックグラウンド濃度の全球分布は、発生過程や消失過程の傾向を反映していた。本研究のカラム平均気体濃度のバックグラウンド濃度と気象庁の地上観測による大気バックグラウンド汚染観測データを比較したところ、本研究のバックグラウンド濃度は気象庁のデータと比較して季節変動の位相が1 – 2ヶ月ほど遅れていた。また、両者には気体濃度の鉛直プロファイルおよびその季節変動に起因すると思われる濃度差が見られた。
次に、GOSAT-2の各気体の超過濃度(ΔXCO2、ΔXCH4、ΔXCO)を求めた。算出した超過濃度には、発生源の影響を反映した全球分布や季節性が見られた。さらに、緯度・経度5度ごとに二種類の気体の超過濃度を両軸に取ったときの最小二乗法による線形回帰直線の傾きでERを算出したところ、ΔXCH4/ΔXCO2とΔXCH4/ΔXCOについては、各超過濃度間に有意な正相関が見られ、全球の広範囲でERを定義できた。一方、ΔXCO/ΔXCO2については超過濃度間に有意な相関が見られず、全球の広域でERを定義できなかった。
さらに、特徴的な領域についてΔXCH4/ΔXCO2とΔXCH4/ΔXCOを算出した。バイオマス燃焼の頻発地域では、燃焼が盛んな時期に他の季節よりもΔXCH4とΔXCO2の相関が強い傾向が見られた。燃焼地域におけるΔXCH4/ΔXCO2の算出値は、ポートハーコート周辺のサバンナ等の燃焼で最も大きく(4.93 ppb/ppm)、次いでシドニー周辺の温帯林の燃焼(3.20 ppb/ppm)、アマゾンにおける熱帯林の燃焼(2.27 ppb/ppm)の順に大きく、アラスカ、シベリアにおける北方林の燃焼で最も小さい(2.16、1.69 ppb/ppm)という結果が得られた。なお、本研究で算出したERは、Parker et al.[2016]のERとサバンナの燃焼では概ね一致したが熱帯林の燃焼では一致しなかった。他の特徴的な結果として、ムンバイやテヘランでは雨季の終了とともにΔXCH4/ΔXCOが急増する結果が見られた。
また、本研究から、ERの算出値はバックグラウンド濃度や解析対象範囲の設定に大きく依存しうることがわかった。講演では、バックグラウンド濃度算出手法を変えた場合のERへの影響についても議論する。