日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG43] 北極域の科学

2022年5月27日(金) 09:00 〜 10:30 106 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:Ono Jun(JAMSTEC Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)、コンビーナ:両角 友喜(北海道大学 大学院農学研究院)、島田 利元(宇宙航空研究開発機構)、コンビーナ:堀 正岳(東京大学大気海洋研究所)、座長:堀 正岳(東京大学大気海洋研究所)、小野 純(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

09:45 〜 10:00

[ACG43-04] 夏季シベリアブロッキング高気圧の梅雨降水量への遠隔影響と長期変調

*中村 哲1佐藤 友徳1 (1.北海道大学大学院地球環境科学研究院)

キーワード:ブロッキング高気圧、梅雨前線、地球温暖化、北極温暖化、遠隔影響

夏季にシベリアで起こるブロッキング高気圧について、直下で起こる熱波だけなく、その遠隔影響について調査されてきた。2020年の事例解析では、シベリアブロッキングの発達に伴い梅雨前線帯での降水が強まるという関係が見出された。シベリアブロッキングについては、北極の温暖化進行に伴い頻度・強度ともに増大するという報告があり、全球的な温暖化傾向のもとにおいても将来予測の不確実性が大きいことが指摘される。本研究では夏季のシベリアブロッキングの遠隔影響について、過去60年分の再解析データを用いた統計的な解析を行い、梅雨前線帯の降水量との関係について調べた。ブロッキングの存在頻度を示す経験則を水平二次元領域に拡張し、シベリア領域でそれを満たす面積比をブロッキングの強度と定義した。シベリアブロッキングの強度が強まるにつれ、梅雨前線帯の降水量が増加することがわかった。ブロッキングの発達に伴う短周期擾乱のフィードバック効果により、その南方にはトラフが生じる。夏季のシベリアブロッキングはその南方に梅雨前線帯が存在するため、南方トラフにより降水が強化される。このような遠隔影響は他の経度帯のブロッキングには見られず、シベリア・東アジアに特有のものである。シベリアブロッキングの長期的な傾向については、緩やかな増加傾向とともに、顕著な10年規模変調が見られ、北極温暖化とともに、熱帯や中緯度海洋の影響も考慮する必要がある。