日本地球惑星科学連合2022年大会

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[J] ポスター発表

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[O-08] 高校生ポスター発表O08-P41~P60

2022年5月29日(日) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (1) (Ch.01)

15:30 〜 17:00

[O08-P45] 火星で発生した大規模ダストストーム

*三角 眞子1、*岡田 和歩1、*三宅 杏佳1、*茂幾 理生1、*高嶋 桃羽1、*上田 凛々花1、*津川 真由1、*小玉 佳路1、*薮田 美羽1、*藤本 凪砂1、*大山 莉央1、*三村 泰誠1 (1.熊本県立第一高等学校)


キーワード:火星、ダストストーム、温室効果、輝度、モデル実験

2019年までの私たちの研究では、2018年に火星で発生した大規模ダストストームが、火星南極冠に与える影響について調べた。その結果、2018年と未発生の2003年の南極冠の観測結果から、大規模ダストストームが発生すると南極冠の縮小を促進することがわかった。2020年の研究では、火星表面とダストストームのモデル実験から、火星の大規模ダストストームは低い高度を漂う構造で、火星大気を温めることがわかり、極冠の縮小を促進させることがわかった。本研究の目的は、大規模ダストストームが火星の大気を温める仕組みや条件をモデル実験等によって調べることである。これらを調べるために、ダストストームの密度や成分が、地表面や大気上層部の気温変化に及ぼす影響をモデル実験によって調べた。実験モデルは簡易日射計と、ダストストームのモデルである密度の小さい綿状の素材であるロックウール、グラスウール、スチールウールを用いて作成した。それぞれの厚さを2cmに揃え、質量を1g,2g,3gと変え、簡易日射計の受熱板の上に載せて密度の異なる9種類のモデルを作成した。それぞれのモデルに白熱電球を40分照射し、その後白熱電球を消して40分の温度変化を、日射計の水タンクの温度計と赤外線放射温度計を用いて、5分ごとに計測した。さらに、これらのモデル表面の輝度(赤外線反射量)を測定し、実験結果と比較した。また、火星と各素材の組成、各素材の比熱と熱伝導率について調べた。モデル上層部では、実験開始から5分ほど経過すると、ダスト表面に入射するエネルギー量と赤外放射によって放出されるエネルギー量が等しくなる、熱平衡の状態となり、上昇温度が一定となる。ダストの上層部の温度変化については、ウールの表面が平面ではないため、数ミリの違いで誤差が出てしまう。そのため、正確な数値が測定できないなど課題が多く、今回は考察することができなかった。各素材で火星表面の温度が最も上昇したのはロックウールで、密度が最も小さいモデルである。また、ロックウールとグラスウールのモデル表面の色の平均を取り、RGB値をもとに輝度値(赤外線反射量)を調べたところ、ロックウールでは176.0,グラスウールでは182.2だった。このことから2つのモデルとしてロックウールが最も適当であったといえる。
ロックウールを素材として使ったモデルが最も温度が上昇した。文献調査から火星地表面の成分とグラスウールでのSiO₂の含有量は似ているがMgOやFeOではロックウールのほうが、成分に近いことが分かった。よって、温室効果は、MgOやFeOなどの物質に関係することが分かった。これらの物質は火星表面にも多く存在している。最も密度が小さいロックウールのモデルが、温度上昇が大きくなった。したがって、ダストストームは、ダストの密度が小さいモデルのほうが温度上昇が大きくなった。また、ダストストームは、ダストの密度が小さいロックウールのモデルが、温度上昇が大きくなった。そのため、ダストストームは、ダストの密度が小さい場合に大きく、密度が大きい場合日傘効果をもたらすことが分かった。二酸化炭素による温室効果は濃度に比例するが、ダストストームによる温室効果は、密度が大きくなると日傘効果となる。しかし、ダストが全くないと温室効果はない。スチールウールのみ密度が大きいモデルで温度上昇が大きくなったのは、スチールウールが鉄100%でできているため熱伝導率が高いことが原因だと考えられる。また、ダストストームが鉄100%から成るとは考えにくいため、スチールウールはダストのモデルとして適当ではなかったといえる。また、スチールウールを酸化させたモデルを作成しようと試みたが、酸化鉄はもろく、綿状の状態を保つことができなかったため、今回は実験に使用できなかった。