日本地球惑星科学連合2022年大会

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[O-08] 高校生ポスター発表O08-P61~P80

2022年5月29日(日) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (2) (Ch.02)

15:30 〜 17:00

[O08-P75] 校舎に生じる亀裂の謎について

*河西 美優希1、北村 まる1 (1.長野県諏訪清陵高等学校)


キーワード:断層、地下構造

私の在籍する諏訪清陵高校の廊下には,10 mm ほどの段差が生じている.言われなければ気づかないほどのわずかな段差だが,長年本校に勤務されていた先生によれば,この段差は昔は無かったうえ,徐々に高さの差が開いてきていたそうだ.それを聞いて興味を持ち,この段差の原因について研究を始めた.まずはその高さの差が開いているのかを確かめるため,昨年五月頃から,週一回の測定と高さの変化の観察を始めた.値の範囲は 8 mm 〜 15.5 mm であったが,定規と長い棒を用いた簡易的な測り方であるため誤差が大きいと考えられる.近似値で見ると,およそ一年で 2 mm ほどの変化であった.
 また他に,昇降口前のタイル張りの地面に時々,わずかな膨らみを伴った亀裂が生じる.修理してもその度に別の場所に生じるため,昇降口前のタイル張りの地面には修理の跡が多くある.しかし,すぐに修理されてしまううえ不規則に生じるため,継続した測定ができていない.この亀裂と廊下の段差との関係も,本研究の問いの一つである.
 私はこれらの段差の原因について「付近の断層が影響している」「地下の水の流れが影響している」という二つの仮説をたてた.
 一つ目の仮説を検証するため,長野県地質図活用普及事業研究会が編集した『長野県デジタル地質図 2015』を参照して付近の地質を,また地理院地図を参照して付近の断層を調査した.それらの文献によると,諏訪清陵高校は諏訪断層群の内部に位置しており,敷地の地下は主に砂質〜泥質の河成堆積物と安山岩で構成されているということが分かった.また,地震調査研究推進本部地震調査委員会による『糸魚川-静岡構造線断層帯の長期評価(第二版)』は,諏訪断層群の一般走向について N40°W と示していたが,クリノメーターで廊下の段差と昇降口前のタイルの亀裂の走向を測ったところ,ともに NW であった.しかし,廊下の段差は北校舎と南校舎の継ぎ目に沿っており,昇降口前の亀裂はタイルの敷かれた方向に沿っている.表面の人工物に沿った向きになるために,実際と異なる走向に見えている可能性が高い.これから人工物の影響を受けていない他の段差や亀裂を付近で探し,その走向を計測していく予定である.
 二つ目の仮説を検証するため,校舎が改築された際の 1983 年の地盤調査委託業務報告書を閲覧した.その中の土質柱状図と Google Earth から,CAD を用いた敷地内の土質の可視化を試みている.デジタル地質図や地理院地図から読み取ることのできなかった表面の土質が部分的に分かった.データが完成し次第,モデル実験によって段差のある場所に土質のずれや水の通りそうな場所がないかを分析する予定である.
 この研究はまだ初期段階である.今後は段差や亀裂の正確かつ継続的な測定方法を検討するほか,地学的観点からの考察をより深める必要がある.