日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS17] 沿岸域の海洋循環と物質循環

2023年5月24日(水) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (4) (オンラインポスター)

コンビーナ:和田 茂樹(筑波大学)、高橋 大介(東海大学)、永井 平(水産研究教育機構)、増永 英治(Ibaraki University)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/23 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[AOS17-P04] 福山港泊地で観測された副振動

*向井 厚志1 (1.福山市立大学都市経営学部)

キーワード:副振動、福山港

福山港泊地は瀬戸内海に面した福山港から続く距離約8.5kmの折れ曲がりのある細長い水路であり,その幅は950mから150mへと内陸部ほど狭くなっている。この福山港泊地において2021年に約2か月間にわたる潮位変化の連続観測を実施したところ,周期約42分および約13分の副振動が励起されていた。本研究では,福山港泊地の潮位変化を数値計算することによって副振動が再現できることを確認し,これら副振動の特徴を明らかにした。
福山港泊地の左岸3か所に水圧計を設置し,2021年9月1日~11月4日の約64日間にわたって潮位観測を実施した。3か所の観測点A,BおよびCは,それぞれ福山港口からの遡上距離8.4,8.0および7.5km地点に位置する。潮位観測値は海面に加わる気圧変化を含むため,観測点A近傍で観測された気圧変化を用いて潮位観測値から気圧変化を除去した。
FFTを用いて潮位観測値の周波数特性を調べたところ,いずれの観測点においても海洋潮汐の鋭いピークに加えて,約42分と約13分の周期付近に幅広いピークが現れた。これらは副振動と考えられ,いずれの周期の振幅も泊地奥に向かうほど大きくなっている.点Cに対する点Aの振幅比は,周期42分で1.3,周期13分で2.7と求められた。
非線形浅水方程式を用いて規則波が入射する場合の福山港泊地の潮位変化を数値計算し,上記の副振動が再現できることを確認した。このとき,福山港泊地の水深分布は,日本水路協会の航海用海図を参考に設定した。数値計算の格子点間隔は10mであり,各格子点の潮位変化は0.0125秒の時間ステップで計算した。なお,境界条件として,海岸線に直交する流速は海岸線上でゼロとした。
数値計算で得られた潮位変化は,周期45分および14分付近で増幅されていた。これらの周期は,観測された副振動の周期42分および13分に近い。また,いずれの周期における計算結果も,観測結果と同様に,点Cより点Aで大きく増幅されていた。その振幅比は周期45分で1.1,周期14分で2.3であり,上記の観測結果とほぼ一致している。本研究の数値計算は福山港泊地の副振動を再現できていると考えられる。
数値計算によって得られた周期45分の副振動は,福山港口に節をもち福山港泊地全体を1/4波長とする固有振動を表している。実際,水深10m,長さ8.5kmの長方形湾内の副振動周期は解析的に56.5分と求まり,観測結果および計算結果に違い周期が得られる。
福山港泊地は福山港口から遡上距離6.0km付近で90°折れ曲がっており,そこから泊地最奥部までの長さ2.5kmを閉鎖的な長方形の海域で近似することができる。水深4m,長さ2.5kmの長方形水域で生じる固有振動のうち,中央に節をもつ1/2波長の振動モードの周期は解析的に13.3分と求まり,数値計算で得られた周期14分の副振動および観測された周期13分の副振動はこの固有振動に対応している。