日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS07] 災害リスク軽減のための防災リテラシー

2023年5月22日(月) 10:45 〜 12:15 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:高橋 誠(名古屋大学大学院環境学研究科)、木村 玲欧(兵庫県立大学)、座長:高橋 誠(名古屋大学大学院環境学研究科)、木村 玲欧(兵庫県立大学)、井ノ口 宗成(国立大学法人 富山大学)


11:30 〜 11:45

[HDS07-09] 被災者生活再建支援の対応記録に基づく相談内容の傾向分析

*井ノ口 宗成1田村 圭子2 (1.富山大学、2.新潟大学)


キーワード:生活再建支援、中越沖地震、共起ネットワーク分析

ひとたび災害が発生すると、被災者はたとえ命が保証されたとしても、様々な財産を失う。これに対して、被災者は生活再建に関わる活動を開始し、実行しなければならない。しかしながら、災害後の生活再建に関する支援策は多岐にわたるものの、各被災者はどの支援に申請でき、どれほど支援されるかが分からない。そのため、被災自治体では「生活再建総合相談窓口」を設置し、被災者からの問い合わせに対応している。この生活再建総合相談の対応業務は、平時には実施せず、災害後に初めて実施する業務であるとともに、その業務量は膨大である。被災自治体において、業務の効率化を検討する上で、被災者からの相談内容を想定した情報発信や知識の強化が欠かせない。
そこで本研究では、2007年新潟県中越沖地震における柏崎市の対応を事例として、相談窓口で記録された対応記録および課題を文章化したデータを分析することで、相談内容の傾向を導出する。また、その後の支援の申請状況から、被災者の特徴を特定し、支援の予測に資する基礎分析を実施する。
2007年7月に発生した新潟県中越沖地震では、全壊1,121棟、半壊4,583棟の住家被害が発生した。多くの被災者は住家での被害を受け、その後の長期的な生活再建が余儀なくされた。柏崎市では復興支援室を設立し、生活再建に関する専用の相談窓口を開設した。特に仮設住宅入居者および住家が全壊した世帯を対象に、継続的な相談対応を実施し、それらを記録した。
そこで、それらの記録データに対して、1つの文章ごとに発生する名詞に着目し、共起ネットワーク分析を実施することで、その傾向を明らかにした。具体的には、記録の残された780件の対応記録から、8,178個の文章を抽出し、6,293種類、計10,1436個の名詞を抽出した。これらの名詞に対して、各文章内での共起状態を分析することで、名詞間の強いつながりを把握するとともに、相談内容の全体における傾向を解明した。結果として、復興支援策に関する問い合わせや再建相談に加えて、仮設住宅の退去に関する相談、建物の再築に関する業者・工事に関する相談、さらには公営住宅への入居希望等についての相談が強い共起を示した。すなわち、被災者の再建を推進する上では、住宅の再建方法のあり方やその後の方針についての情報を提示する必要性があることが明らかとなった。
一方で、住宅の再建方法には応急住宅修理を選択する方法もある。応急住宅修理では、支援対象となる修理箇所および支給限度額が決められているため、必ずしも支援額が被災者の再建に必要な経費とはいえない。そのため支給実績だけでは、被災者が必要とした経費額は把握できない。そこで、災害種別は異なるが、2023年8月豪雨における新潟県関川村を事例として分析を実施した。本事例の選定理由は、申請時において修繕に必要な見積書が添付されていたためである。個人属性および世帯構成、住家の被害程度等の説明変数を用いて重回帰分析を実施したところ、乳幼児を有する世帯では修繕費が高くなる傾向が明らかとなった。