13:45 〜 15:15
[O06-P58] 恐竜類と鳥類における恥骨の役割の解明
キーワード:獣脚類、恥骨、肉眼的見地
1.はじめに
恐竜類(Dinosauria)(ここでいう恐竜は非鳥類型恐竜(Non-avian dinosaurs)を指す)の恥骨(Pubic bone)は種によって形が大きく異なるため,系統の分類に用いられる[1]。しかしながら,恥骨自体の役割は明らかになっていない。また獣脚類(Theropoda)の恐竜が鳥類へと進化していく際,恥骨は細くなり生える方向が下向きから後ろ向きへと変化した[2]。本研究はこの恥骨の形の変化に着目し,形態学的観点からその役割の解明を目指したものである。
2.研究手法
本研究では肉眼的見地から,図鑑[2]や国立科学博物館・群馬県立自然史博物館・美里オーストリッチファームダチョウの博物館・我孫子市鳥の博物館での恐竜および鳥類(Avian)の骨格の観察,またニワトリ(Gallus gallus domesticus) の解剖・観察を行った。
3.結果と考察
テリジノサウルス(Therizinosaurus cheloniformis)とティラノサウルス(Tyrannosaurus rex)は同じ獣脚類で二足歩行をし、同じ年代に生息していたが,双方の恥骨の間の幅を比べるとテリジノサウルスのほうが広かった。さらに,恐竜と近縁の走鳥類(Ratitae)であるダチョウ(Struthio camelus)の恥骨は恐竜に似て独立し,先端同士が接続した恥骨をもち,しっかりと何かを抱えこむ構造になっていた。この結果から,恐竜の恥骨には内臓を支える役割があると考察した。
骨格は「体を支える」「内臓を保護する」という役割を持つ[3]。一般的に飛翔する鳥類の恥骨は先端が離れており,後ろを向いて腸骨(Iliac bone)と癒合している。しかし,ダチョウは鳥類で飛び抜けて長く重い腸をもつため,恥骨がその重量を支える役割を果たしていたのではないかと考えられる。
さらに,テリジノサウルスとティラノサウルスの違いは食性であり,それがこの恥骨の大きさへの影響を与えていたと考えられる。
草食動物の方が消化に時間がかかるため,腸が長い傾向にあることは明らかになっており[4],草食のテリジノサウルスは長い腸をしまうために幅の広い恥骨を,逆に肉食のティラノサウルスは短い腸をしまうために幅の狭い恥骨をもっていたと示唆される。実際,鳥類は飛翔のために軽量化され,消化器官が矮小化していることが観察される[1]。系統樹に沿って獣脚類から鳥類の骨格をたどると,体の重量が軽くなるにつれて,恥骨が少しずつ細くなり後ろを向いていったことがわかる[2]。
しかし,例外も認められる。オルニトミムス(Ornithomimus edmontonicus)は軽量化が進んでいたものの,恥骨は前向きである。このことは走行能力や筋力の他,抱卵の必要性なども含めて考察中である。当日は,この考察も含めて発表をしたい。
参考文献
[1]David Fastovsky,David Weishampel,(真鍋真監訳),恐竜学入門一かたち・生態・絶滅一,東京化学同人,2015.
[2]Gregory S Paul,(東洋一・今井拓哉監訳),グレゴリー・ポール恐竜事典[原著第2版],共立出版株式会社,2020.
[3]菱沼典子,北村聖,改訂版人体の構造と機能,日本放送出版協会,2005.
[4]細矢治夫他,自然の探求 中学校理科2,教育出版株式会社,2017.
恐竜類(Dinosauria)(ここでいう恐竜は非鳥類型恐竜(Non-avian dinosaurs)を指す)の恥骨(Pubic bone)は種によって形が大きく異なるため,系統の分類に用いられる[1]。しかしながら,恥骨自体の役割は明らかになっていない。また獣脚類(Theropoda)の恐竜が鳥類へと進化していく際,恥骨は細くなり生える方向が下向きから後ろ向きへと変化した[2]。本研究はこの恥骨の形の変化に着目し,形態学的観点からその役割の解明を目指したものである。
2.研究手法
本研究では肉眼的見地から,図鑑[2]や国立科学博物館・群馬県立自然史博物館・美里オーストリッチファームダチョウの博物館・我孫子市鳥の博物館での恐竜および鳥類(Avian)の骨格の観察,またニワトリ(Gallus gallus domesticus) の解剖・観察を行った。
3.結果と考察
テリジノサウルス(Therizinosaurus cheloniformis)とティラノサウルス(Tyrannosaurus rex)は同じ獣脚類で二足歩行をし、同じ年代に生息していたが,双方の恥骨の間の幅を比べるとテリジノサウルスのほうが広かった。さらに,恐竜と近縁の走鳥類(Ratitae)であるダチョウ(Struthio camelus)の恥骨は恐竜に似て独立し,先端同士が接続した恥骨をもち,しっかりと何かを抱えこむ構造になっていた。この結果から,恐竜の恥骨には内臓を支える役割があると考察した。
骨格は「体を支える」「内臓を保護する」という役割を持つ[3]。一般的に飛翔する鳥類の恥骨は先端が離れており,後ろを向いて腸骨(Iliac bone)と癒合している。しかし,ダチョウは鳥類で飛び抜けて長く重い腸をもつため,恥骨がその重量を支える役割を果たしていたのではないかと考えられる。
さらに,テリジノサウルスとティラノサウルスの違いは食性であり,それがこの恥骨の大きさへの影響を与えていたと考えられる。
草食動物の方が消化に時間がかかるため,腸が長い傾向にあることは明らかになっており[4],草食のテリジノサウルスは長い腸をしまうために幅の広い恥骨を,逆に肉食のティラノサウルスは短い腸をしまうために幅の狭い恥骨をもっていたと示唆される。実際,鳥類は飛翔のために軽量化され,消化器官が矮小化していることが観察される[1]。系統樹に沿って獣脚類から鳥類の骨格をたどると,体の重量が軽くなるにつれて,恥骨が少しずつ細くなり後ろを向いていったことがわかる[2]。
しかし,例外も認められる。オルニトミムス(Ornithomimus edmontonicus)は軽量化が進んでいたものの,恥骨は前向きである。このことは走行能力や筋力の他,抱卵の必要性なども含めて考察中である。当日は,この考察も含めて発表をしたい。
参考文献
[1]David Fastovsky,David Weishampel,(真鍋真監訳),恐竜学入門一かたち・生態・絶滅一,東京化学同人,2015.
[2]Gregory S Paul,(東洋一・今井拓哉監訳),グレゴリー・ポール恐竜事典[原著第2版],共立出版株式会社,2020.
[3]菱沼典子,北村聖,改訂版人体の構造と機能,日本放送出版協会,2005.
[4]細矢治夫他,自然の探求 中学校理科2,教育出版株式会社,2017.