日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

現地ポスター発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-06] 高校生ポスター発表

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 現地ポスター会場 (幕張メッセ展示ホール8)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 13:45-15:15)

13:45 〜 15:15

[O06-P82] Twitterを活用した2022年6月2日,6月3日の降雹解析

*林 日菜子1 (1. 市川学園市川高等学校)

キーワード:雹、Twitter、気象解析


雹害をもたらすほど激しい降雹が2022年6月2日と6月3日に発生した。降雹における被害は各地方自治体や報道機関が発表しているが、全国的な降雹範囲の変化や降雹規模といった気象学的な情報は見受けられない。本研究ではTwitterを用いてこの降雹に関する情報を集め、Tweetから気象学的な考察を試みた。

 Twitterは日本で約4500万人が利用する匿名登録が可能なSNSで、Tweetと呼ばれる全角140字以内の短文でその時々の情報を投稿したり写真等のコンテンツを添付したりできる。石川ほか(2012)は、Twitterを用いた山陰地方豪雪災害時の被害の分析を行い、河井・藤代(2013)は、東日本大震災時に情報収集ツールとして利用されたTwitterに関する分析を行っている。しかし、これらはハッシュタグで繋がれたコミュニティの調査や、ウェブアンケートによる調査で、Twitter利用者の規模の大きさの特性を最大限に活用して分析していない。本研究では、常時観測されていない気象現象である雹についてキーワードのみを指定して全てのTweetを調査することで、調査対象の規模を大きくし、被害情報だけでなく詳細な気象学的情報を得ることを試みた。解析に用いた情報は、2022年6月2日11時から6月4日9時の46時間に投稿された全てのTweetのうち文章に「雹」というキーワードを含むものを検索・抽出し、その内容を全て読んで収集した。解析期間は2022年10月10日から2023年2月15日である。「雹」を含むTweet総数は90790件であり、その中で気象情報を含むものは47622件であった。そのようなTweetの位置情報を本文や投稿者のプロフィールから確認し、降雹時刻や添付された写真等も記録した。中には投稿者自身が撮影したものと断言できず、不正確なTweetが含まれる可能性もあるが、データの母数を大きくすることで不正確なTweetの割合を小さくし、投稿者が他者から提供されたと述べている場合を除き投稿内容は事実とみなした。また、投稿者がTweetした物体が直径5mm以上の雹ではなく直径5mm未満の霰である可能性も考えられるが、本研究ではTweetに雹と書かれているものは雹とみなした。

 以上の手法で収集したTweetから降雹地域の時間経過を考察した。熊谷地方気象台(2022)によると、6月2日の降雹地域は12時前に宮城に現れ、その後南西方向に移動した。18時頃には別の積乱雲が群馬南部から埼玉北部で激しく雹を降らせ、この時間帯にはTweet数も増加している。6月3日は8時頃から雹が降り始め、主な降雹範囲は山形南部、群馬中部、群馬西部の3つあったことがTweetの位置情報からわかった。いずれの降雹範囲も、山形南部から福島、群馬中部から茨城、群馬西部から千葉のように、東南東方向に移動した。ウェザーニュース(2022)より、群馬西部から南下した雲は東京と千葉の県境周辺で激しく雹を降らせた。この時間帯にはTweet数も増加している。Tweetからわかる降雹地域の多くは降水量10〜40mm/h以上の地点であることが雨雲レーダーとの比較によりわかった。しかし、2日間とも福島北部、千葉西部、東京中部では1日に何度も雹が降っており、どの地域も平野部で雹を降らせる積乱雲が発生しやすいためと考えられる。

 また、Tweet内容は雹の大きさなどの詳細な情報も含んでいた。Tweet情報のうち最大の雹はゴルフボール大またはピンポン玉大で、主に6月2日の群馬・埼玉を中心に降り、車庫の屋根に穴が空いたり怪我人が出たりなど甚大な被害を出した。6月3日の雹はパチンコ玉大のものが多く、窓ガラスや網戸が割れるなどの被害があった。

 また、ソーシャルメディアトレンド(2020)調べによる日本人の平均Tweet数と、今回収集したTweet数の推移を比較し、Tweetが増加した原因として降雹だけでなく人々が多く投稿しやすい時間帯である可能性を検討した。その結果、雹が降っていない時間帯にわずかにピークが確認され、その時間帯は多くの人が投稿する時間帯であったためにTweetが増えたことが確認できたが、雹が降った時間はそのような傾向と関係なく人々が「今降ってきた」と投稿したためTweetが増えたとわかった。

 以上のように、Tweetから降雹範囲を推定することができた。また雹の大きさなどの詳細を精査することで気象現象を解析でき、Twitterは常時観測していない現象の解析に有効な手段となる可能性が高い。SNSは誤った情報を含む可能性が高く現段階では膨大なデータの解析により誤った情報の割合を小さくし精度を高めることができると判断しているが、科学的検証に基づき誤った情報の扱い方を議論していないので今後の課題とする。