日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG52] 海洋底地球科学

2023年5月23日(火) 09:00 〜 10:15 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)、田所 敬一(名古屋大学地震火山研究センター)、座長:佐藤 暢(専修大学経営学部)、藤井 昌和(国立極地研究所 / 総合研究大学院大学)

09:00 〜 09:15

[SCG52-06] インド洋ロドリゲス三重会合点付近、かいれい熱水域における人工及び自然地震による地震波速度構造と地震活動

*佐藤 利典1森井 彩斗2、高田 裕能1山田 知朗3篠原 雅尚3 (1.千葉大学大学院理学研究院、2.千葉大学大学院融合理工学府、3.東京大学地震研究所)

キーワード:P波、S波速度構造、Vp/Vs比、かいれい熱水域、蛇紋岩化、インド洋、地震活動

1.はじめに
インド洋ロドリゲス三重会合点の北側に伸びる中央インド洋海嶺の第1セグメント東側には、かいれい熱水域があり、水素を豊富に含む熱水が噴出している。この熱水域は、白鳳海丘と呼ばれる玄武岩質の海丘にあるが、その周辺では斑れい岩やかんらん岩が確認されている。このような地下深部の岩石が海底面近くまで上昇し、海水との作用により蛇紋岩化することで水素に富んだ熱水が発生していると考えられている。この地域の地下構造等を解明するために、2013年海底地震計(OBS)と人工震源を用いた地震波探査を行った。これまで、高田 他(JpGU、2015)によってP波速度構造が報告され、白鳳海丘とその北側のYokoniwa Riseの地下1-2km付近でP波速度6.0km/sを超える高速度領域が確認され、地下深部の岩石の上昇が示唆されている。これらが蛇紋岩化しているかどうかなどを調べるには、S波構造を求めることが重要となる。そこで本研究では、人工震源及び自然地震を用いたP波とS波の両方の速度構造の解析を行った。

2.データと解析方法
2013年1月27日から3月19日にかけて海洋研究開発機構、観測調査船「よこすか」を用いて人工震源構造調査および自然地震観測を行った (YK13-01航海、YK13-03航海)。地震波探査では、19台のOBSと1台のエアガン(G I gun)を使用した。S波と思われるPhaseを見やすくするため、地震計の水平2成分をRadial方向とTransverse方向に回転させて、S波到達時刻の読み取りを行った。この際必要となる地震計の方位は、水中直達波の振動軌跡から推定した。3次元速度モデルの推定は、まず人工地震のみを用いFAST(Zelt and Barton, 1998)を使用して行った。続いて、人工地震で推定したモデルを初期モデルとして自然地震も含めて3次元モデルを推定した。このとき、tomoDD(Zhang and Thurber, 2003)を使用した。この際、同時に震源の再決定も行われる。

3.結果
人工地震のみを用いた解析の結果、P波速度構造から見えていた白鳳海丘とYokoniwa Riseの下の高速度領域において、Vp/Vs比は2.0程度となった。これは斑れい岩の1.9、かんらん岩の1.7と比べると高い値である。蛇紋岩のVp/Vs比は、1.8-2.2程度といわれており、この結果は蛇紋岩化を示唆する可能性がある。自然地震を用いた3次元モデルでも、人工地震のみを用いた結果と同様に2.0程度の高いVp/Vs比が熱水噴出孔周辺で見られた。また、自然地震の震源を見ると、熱水噴出孔の北西数kmでクラスターが見られた。こうした地震を引き起こす断層が熱水の移動経路となっていて、そこで熱水とかんらん岩が反応し蛇紋岩化していることが考えられる。海嶺軸の第1セグメント北部には、上下2つに分かれた地震のクラスターが観測された。観測期間で上部は間欠的に発生し、下部はほぼ連続的に発生していた。この活動の違いは、マグマの上昇過程を表している可能性がある。

謝辞: 観測に関して、海洋研究開発機構の観測調査船「よこすか」の船長と乗組員の方々の協力を頂きました。本研究は科研費新学術領域 20109002 の助成を受けて行われました。