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[SEM15-P06] 房総半島に分布する鮮新-更新統の堆積岩に記録された残留磁化の構成成分のSQUID顕微鏡を用いた予察的分析
キーワード:古地磁気学、岩石磁気、SQUID顕微鏡、二次磁化
房総半島には鮮新―更新統が多数分布している.これらの地層群は安定した古地磁気シグナルを保持していることから,盛んに古地磁気学的な研究が行われてきた(たとえば,小竹ほか, 1995).しかし,段階熱消磁(pThD)や段階交流消磁(pAFD)のみでは二次磁化を十分に取り除くことができず,逆転テストに合格しないことが指摘されている(たとえば,岡田ほか,2012).
二次磁化は詳細な古地磁気変動を復元する場合や構造運動による変形量を議論する上で障害となるため,その詳細を明らかにし,分離することは古地磁気学的研究において極めて重要な課題である.近年,ThDとpAFDを組み合わせた消磁法によって堆積岩の二次磁化を取り除く試みが行われるようになった(たとえば,Okada el al., 2017; Konishi and Okada, 2020; 谷元ほか,2022JpGU).これらの研究で消磁された二次磁化は化学残留磁化(CRM)や(熱)粘性残留磁化と推定されている.その詳細はわかっていないが,CRMを獲得した磁性鉱物の例として房総半島寺崎の露頭では堆積初期に形成されたグレグレガイトおよび堆積層が陸化後に形成されたFeroxyhyte [δ-Fe3+O(OH)]の存在が指摘されている(Oda et al., 2022).このように,二次磁化を消磁することに焦点を当てた研究は行われてきたが,それらを担う磁性鉱物とその形態,二次磁化の起源などについて包括的に検討し,残留磁化に対する二次磁化の寄与を評価した例は少ない.そこで、SQUID顕微鏡を用いて試料表面の磁化分布を可視化することで定量的に評価できる可能性を検討した.
これまでに,上総層群国本層,千倉層群畑層および布良層のシルト岩試料について250〜300℃のThD前後の磁化分布を比較するためにガラス転移温度が285℃の耐熱樹脂(RO-8659; SANYU REC社製)を使用してSQUID顕微鏡分析用の薄片試料を作成した.本発表では,薄片作成時点(150°Cで加熱硬化)での試料表面の磁化分布をSQUID顕微鏡でマッピングし,可視化したのでその予察結果を報告する.今後,ThDを行った上で再測定を行うなどして残留磁化を構成する成分を分離し,その寄与について評価することを試みる予定である.
引用文献
小竹 信宏, 小山 真人, 亀尾 浩司 (1995) 房総半島南端地域に分布する千倉・豊房層群(鮮新-更新統)の古地磁気および微化石層序. 地質学雑誌, 101巻7号. Konishi, T., Okada, M. (2020) A paleomagnetic record of the early Matuyama chron including the Réunion subchron and the onset Olduvai boundary: High-resolution magnetostratigraphy and insights from transitional geomagnetic fields. Progress in Earth and Planetary Science, 7:35. Oda, H., Nakazato, H., Nanayama, F., Harigane, Y. (2022) Matuyama–Brunhes geomagnetic reversal record and associated key tephra layers in Boso Peninsula: extraction of primary magnetization of geomagnetic fields from mixed magnetic minerals of depositional, diagenesis, and weathering processes. Earth Planets Space 74:80. Okada, M., Suganuma, Y., Haneda, Y., Kazaoka, O. (2017) Paleomagnetic direction and paleointensity variations during the Matuyama–Brunhes polarity transition from a marine succession in the Chiba composite section of the Boso Peninsula, central Japan. Earth, Planets and Space, 69:45. 岡田 誠・所 佳実・内田剛行・荒井裕司・斉藤敬二・房総半島南端千倉層群における鮮新統–更新統境界層準の古地磁気–酸素同位体複合層序.地質学雑誌,第118巻2号.谷元瞭太,岡田誠,林亮太(2022)房総半島南端,千倉層群布良層の古地磁気層序. 日本地球惑星科学連合2022年大会講演要旨.
二次磁化は詳細な古地磁気変動を復元する場合や構造運動による変形量を議論する上で障害となるため,その詳細を明らかにし,分離することは古地磁気学的研究において極めて重要な課題である.近年,ThDとpAFDを組み合わせた消磁法によって堆積岩の二次磁化を取り除く試みが行われるようになった(たとえば,Okada el al., 2017; Konishi and Okada, 2020; 谷元ほか,2022JpGU).これらの研究で消磁された二次磁化は化学残留磁化(CRM)や(熱)粘性残留磁化と推定されている.その詳細はわかっていないが,CRMを獲得した磁性鉱物の例として房総半島寺崎の露頭では堆積初期に形成されたグレグレガイトおよび堆積層が陸化後に形成されたFeroxyhyte [δ-Fe3+O(OH)]の存在が指摘されている(Oda et al., 2022).このように,二次磁化を消磁することに焦点を当てた研究は行われてきたが,それらを担う磁性鉱物とその形態,二次磁化の起源などについて包括的に検討し,残留磁化に対する二次磁化の寄与を評価した例は少ない.そこで、SQUID顕微鏡を用いて試料表面の磁化分布を可視化することで定量的に評価できる可能性を検討した.
これまでに,上総層群国本層,千倉層群畑層および布良層のシルト岩試料について250〜300℃のThD前後の磁化分布を比較するためにガラス転移温度が285℃の耐熱樹脂(RO-8659; SANYU REC社製)を使用してSQUID顕微鏡分析用の薄片試料を作成した.本発表では,薄片作成時点(150°Cで加熱硬化)での試料表面の磁化分布をSQUID顕微鏡でマッピングし,可視化したのでその予察結果を報告する.今後,ThDを行った上で再測定を行うなどして残留磁化を構成する成分を分離し,その寄与について評価することを試みる予定である.
引用文献
小竹 信宏, 小山 真人, 亀尾 浩司 (1995) 房総半島南端地域に分布する千倉・豊房層群(鮮新-更新統)の古地磁気および微化石層序. 地質学雑誌, 101巻7号. Konishi, T., Okada, M. (2020) A paleomagnetic record of the early Matuyama chron including the Réunion subchron and the onset Olduvai boundary: High-resolution magnetostratigraphy and insights from transitional geomagnetic fields. Progress in Earth and Planetary Science, 7:35. Oda, H., Nakazato, H., Nanayama, F., Harigane, Y. (2022) Matuyama–Brunhes geomagnetic reversal record and associated key tephra layers in Boso Peninsula: extraction of primary magnetization of geomagnetic fields from mixed magnetic minerals of depositional, diagenesis, and weathering processes. Earth Planets Space 74:80. Okada, M., Suganuma, Y., Haneda, Y., Kazaoka, O. (2017) Paleomagnetic direction and paleointensity variations during the Matuyama–Brunhes polarity transition from a marine succession in the Chiba composite section of the Boso Peninsula, central Japan. Earth, Planets and Space, 69:45. 岡田 誠・所 佳実・内田剛行・荒井裕司・斉藤敬二・房総半島南端千倉層群における鮮新統–更新統境界層準の古地磁気–酸素同位体複合層序.地質学雑誌,第118巻2号.谷元瞭太,岡田誠,林亮太(2022)房総半島南端,千倉層群布良層の古地磁気層序. 日本地球惑星科学連合2022年大会講演要旨.