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[SSS08-P04] ニュージーランド北島北東沖の付加体及び浅部スロースリップ発生域へのAdjoint tomographyの適用
ニュージーランド北島のヒクランギ沈み込み帯には付加体や沈み込んだ海山が存在する。この領域ではスロースリップが繰り返し発生しているほか、巨大地震を引き起こしうる固着したプレート境界が存在しているが、スロースリップ発生領域と固着域を区分する要因の一つとして沈み込んだ海山の有無が指摘されている(Chow et al., 2022a,b) 。Chow et al. (2022a,b) は地震波トモグラフィーの手法の一つであるAdjoint tomographyをヒクランギ沈み込み帯に初めて適用することで、ニュージーランド北島東岸に2つの地震波高速度領域を検出した。海底地形データや周囲の地球物理学的なアノマリーの存在などの独立した研究結果から沈み込んだ海山の存在が示されていることから、これらの高速度異常体はこれまで知られていなかった深く沈み込んだ海山である可能性が高い。ニュージーランド北島近傍では2017-2018年にIODP(International Ocean Discovery Program)が海底掘削を実施したほか(Barnes et al., 2020)、2021年にはM7.3の地震が発生した(Okuwaki et al., 2021)。しかしこれらの領域における地震波速度構造については十分に調べられておらず、Chow et al. (2022a,b)の領域にも含まれていない。そこで本研究ではChow et al. (2022a,b)の速度構造モデルを沈み込み帯に沿って北東方向に400 ㎞拡大し、両者を領域内に含めたモデルを使用することで、新たな地震波速度異常の検出を試み、プレート間すべりとの空間関係を調べる。領域内で発生した60個の地震と9個の海底地震計を含む101個の広帯域地震計のデータを用いてモデルにadjoint tomographyを適用し、6 - 30秒の周期の地震波形データに合うよう繰り返しモデルのアップデートを進めている。ヒクランギ沈み込み帯の付加体構造のイメージング結果やその解釈について、現在までの取り組みを報告する。