日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS10] 地震活動とその物理

2023年5月22日(月) 10:45 〜 12:00 302 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:楠城 一嘉(静岡県立大学)、直井 誠(京都大学)、座長:勝俣 啓(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)、福田 孔達(東京大学地震研究所)

11:00 〜 11:15

[SSS10-06] 遠地地震によって動的に誘発された日本列島における地震活動に関する定量的評価

*松尾 凌1宮澤 理稔2 (1.京都大学大学院理学研究科、2.京都大学防災研究所)


キーワード:動的誘発、遠地地震、日本の地震活動、誘発強度

地震の動的誘発(遠地誘発)とは、比較的大規模な地震による表面波などが応力擾乱をもたらしながら伝播することによって、遠隔地で別の地震を誘発する自然現象のことであり、そのメカニズムは十分に解明されていない。地震発生時に断層の永久変位によって生じる静的応力変化による余震の誘発とは異なり、地震波伝播に伴う動的な応力変化量は静的応力変化量よりも距離減衰が小さいためため、遠地での地震の誘発に寄与していると考えられる。近年、世界規模で地震観測網が密になったことにより動的誘発に関する事例が多く報告されているが、定量的な研究は充分に進んでいない。
 本研究では動的誘発に関する定量的な評価を日本列島の地震活動に対して行う。このために、誘発のされやすさを示す指標として、van der Elst & Brodsky (2010)の提唱した誘発強度nを用いる。n値は、誘発の原因となる遠地地震の表面波到達の前後の、地震活動度λの変化比で定義され、n値が0よりも大きいと表面波通過後に地震活動が活発化したと表現される。通常λを求めるには充分な観測期間が必要だが、高頻度に発生する遠地地震について調べるには、どの遠地地震の影響を受けたかを分離できず、長い期間を取ったλを求めることは不適当である。そのため、表面波が到達する1つ前のイベントから誘発する波が到達するまでの時間t1と、誘発する波が到達してから最初にイベントが起こるまでの時間t2から算出される、比R=t2/(t1+t2)のアンサンブル平均を用いて、 (van der Elst &Brodsky,2010)。遠地地震にはANSSの地震カタログ記載のM6以上を選び、動的誘発を調べる日本列島の地震活動には気象庁一元化処理震源(深さ20km以浅,マグニチュード2以上)を用いた。日本列島を0.5°×0.5°のグリッドに分け、グリッドごとのn値を調べた。2020年の地震活動に関してn値の分布を求めたところ、北海道支笏湖周辺と沖縄県宮古列島付近、岩手県沿岸付近で1.0に近い極めて大きな正の値を示した。地震活動域や火山との明瞭な対応は見られていない。