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[ACC26-08] グリーンランドカナック氷帽上における雪氷藻類繫殖の領域計算と衛星観測による検証
キーワード:雪氷藻類、氷河、数値モデリング、衛星観測
世界中の積雪および裸氷上では雪氷生物と呼ばれる耐冷性の生物が存在しており、その中でも光合成微生物の繫殖は雪氷面を暗色化させてアルベドを低下させる。この雪氷生物活動によるアルベド低下効果は雪氷暗色化という現象として近年認識されるようになってきた。微生物は雪氷上で光合成により増殖するため、その効果は単に大気から沈着する他の不純物とは異なる時空間的動態によって暗色化を引き起こす。このような雪氷暗色化のプロセスを解明するために、近年Arctic Challenge for Sustainability Ⅱ (ArCSⅡ)などの北極研究プロジェクトの枠組みで現在までにかけて多くの日本人研究者がグリーンランド北西部に位置するカナック氷帽を対象に現地氷河観測を実施してきた。これらのプロジェクトで、雪氷暗色化のプロセスとその雪氷融解への影響が数多く明らかになっている。しかしながら、これまでのカナックでの成果は主に現地観測に基づいたものである。また、全球の雪氷藻類繫殖を数十kmスケールで計算する数値モデルは開発されているものの、氷河のような数十mの解像度が必要な空間スケールには適用できていない。したがって、雪氷暗色化プロセスを空間的に解明するには至っていない。そこで、本研究では、全球雪氷藻類モデルBio-MATSIROを30m空間解像度に高解像度化し雪氷藻類繫殖の計算をカナック氷帽領域で実施した。モデルの高解像度化をするために、モデルで必要な標高などの陸面地形情報をArcticDEM Mosaicから作成、カナック氷帽の雪氷領域をSentinel-2のLevel-2A画像から抽出し、30m解像度の地形情報を用意した。Bio-MATSIROに入力する気象条件は、全球陸面再解析データERA5-Landから得られた地表面気象データを、前述した地形情報を用いて30mにダウンスケーリングすることで用意した。これらのデータを用いて、、2023年夏季のカナック氷帽で30mの空間解像度でAncylonema nordenskioldiiという氷河藻類の藻類量を計算した。計算した藻類量は、2023年8月に現地観測したデータおよびハイパースペクトルセンサを積んだ衛星であるPRISMAとEnMAPによる衛星観測データを使って検証する。本研究はArCSⅡ海外若手研究者プログラムの一環で2024/2/1-3/31の期間で主に行われるため、詳細な結果については当日発表する。