日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG37] 陸域生態系の物質循環

2024年5月28日(火) 13:45 〜 15:15 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:寺本 宗正(鳥取大学乾燥地研究センター)、加藤 知道(北海道大学農学研究院)、市井 和仁(千葉大学)、伊勢 武史(京都大学フィールド科学教育研究センター)、座長:寺本 宗正(鳥取大学乾燥地研究センター)

15:00 〜 15:15

[ACG37-06] パブリックデータを活用した低コスト・高効率植生識別手法の開発:既存手法との比較

*伊勢 武史1、藏田 典子2 (1.京都大学フィールド科学教育研究センター、2.山口県立大学国際文化学部)

キーワード:ディープラーニング、植生識別、空中写真、こま切れ画像法

植生を把握することは、広域での物質循環の把握や土地利用のプランニングに必要不可欠な情報である。陸上生態系、特に森林は炭素循環に大きな影響を持つため、気候変動の抑制のためにそのはたらきを理解することは重要だが、全球炭素循環を左右するほどの規模の森林植生の把握は非常に困難だった。日本では環境省の植生調査などの大規模データの整備が行われているが、それらは精度・コスト・更新頻度のいずれについても十分とはいいがたい。そこで本研究では、国土地理院がパブリックデータとして公開している空中写真に人工知能を適用することで、高い識別精度とコストパフォーマンスを両立することを目的とする。本研究では、物体をそのテクスチャで識別することで不定形な対象物の分類を可能にする「こま切れ画像法」を応用することにした。対象地として島根県津和野町および高知県東洋町の国有林を選定し、その空中写真を取得した。そこから「スギ人工林」「ヒノキ人工林」「その他」の3タイプの教師画像を取得し学習させることで植生識別モデルを構築した。その結果、植生識別モデルは対象地の植生を的確に分類できることがわかった。その性能は、環境省植生調査や国有林のGISデータを凌駕することも多く、従来は人手に頼っていた広域での植生分類は、人工知能で代替可能である可能性を示した。本研究では無償のパブリックデータを活用したため、従来よりはるかに低コストである。人工知能モデルは作業者の特性・気分・疲労などに左右されず安定した識別が可能で、作業の自動化による高効率化も期待できる。本研究のモデル作成ではYOLOv8という比較的簡便に実装可能なフレームワークを用いることも可能で、これは本技術の普及に役立つと思われる。