日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG37] 陸域生態系の物質循環

2024年5月28日(火) 15:30 〜 16:45 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:寺本 宗正(鳥取大学乾燥地研究センター)、加藤 知道(北海道大学農学研究院)、市井 和仁(千葉大学)、伊勢 武史(京都大学フィールド科学教育研究センター)、座長:伊勢 武史(京都大学フィールド科学教育研究センター)

16:15 〜 16:30

[ACG37-10] モンゴルゴビ砂漠ツォクトオボーにおける観測で分かってきた風食/ダスト発生条件

*黒崎 泰典1石塚 正秀2、Gantsetseg Batdelger3、Buyantogtokh Batjargal3武 靖1、江 嘉敏4関山 剛5 (1.鳥取大学乾燥地研究センター、2.香川大学創造工学部、3.モンゴル気象水文環境情報研究所、4.理化学研究所計算科学研究センター、5.気象庁気象研究所)

キーワード:風食、ダスト発生、土壌クラスト、レキ(石)、枯れ草

風食あるいはダスト(黄砂)発生現象は、主に乾燥地において見られる鉱物及び土壌中に含まれる炭素、窒素などの物質循環であり、枯れ草といった陸域生態系が風食/ダスト発生量の大きな条件になっている。鳥取大学乾燥地研究センターは、2012年3月にゴビ砂漠のツォクト・オボー(Tsogt-Ovoo, Mongolia)にダストモニタリングステーションを設置した。これまで、土壌クラスト、レキ(石)、枯れ草といった地表面要素に着目し、これらの受食性(風食/ダスト発生のしやすさ)への影響を調べてきた。受食性の指標として、臨界風速あるいは臨界摩擦速度(飛砂が発生し始める風速あるいは乱流を考慮した風速)を用いている。これまで、次のような結果が得られた。クラストについては、その崩壊が臨界風速を大きく低下させることを報告し、土壌の凍結融解過程がその崩壊を引き起こすという仮説を提案した(Ishizuka et al. 2012; Abulaiti et al. 2014; Kong et al. 2021)。Buyantogtokh et al. (2022)は、SAR衛星データを用いてその空間的広がりを調べた。レキについては、Buyantogtokh et al. (2021)が粗度密度(roughness density)と臨界摩擦速度の関係を調査した結果、WRF/Chem等で採用されているRaupachのモデルと一致することを確認した。また、窪地ではレキが少なく、山間部ではレキが多いことがわかった。Sekiyama et al. (2023)ではレキの風食/ダスト発生を抑制する効果(レキ効果)を数値モデルNHM-Chemに組み込み、シミュレーションを行った結果、レキ効果によって精度が向上することを確認した。植生については、Gantsetseg et al. (2017)は、降雨量の多い夏は窪地に雨水が集積し、たとえ砂漠であっても窪地に大量の植生が繁茂することを示した(NDVI=0.56)。これは、このような植生が翌年春においても枯れ草として残り、風食/ダスト発生を抑制することを示唆している(枯れ草効果)。Wu et al. (2021)は、枯れ草被覆率と様々な植生指標を比較した。その結果、MODISのバンド6と7から計算される指標(STI=B6/B7: Soil Tillage Index)と枯草被覆率の間に高い相関があることがわかった。この結果を用いて、Wu et al.(2023)は枯れ草のダスト発生への影響の時空間的な違いを調べた。

Abulaiti et al. (2014) https://doi.org/10.1016/j.aeolia.2014.05.002
Buyantogtokh et al. (2021) https://doi.org/10.1007/s40333-021-0072-7
Buyantogtokh et al. (2022) https://doi.org/10.1016/j.jaridenv.2022.104772
Gantsetseg et al. (2017) https://doi.org/10.1007/s40333-016-0090-z
Ishizuka et al. (2012) https://doi.org/10.2151/sola.2012-032
Kong et al. (2021) https://doi.org/10.1016/j.aeolia.2021.100716
Sekiyama et al. (2023) https://doi.org/10.1029/2022JD037295
Wu et al. (2021) https://doi.org/10.1016/j.jag.2021.102417
Wu et al. (2023) https://doi.org/10.2151/jmsj.2023-004