日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG45] 有人・無人航空機による気候・地球システム科学研究の推進

2024年5月28日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:高橋 暢宏(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、小池 真(東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻)、町田 敏暢(国立環境研究所)、篠田 太郎(名古屋大学宇宙地球環境研究所)

17:15 〜 18:45

[ACG45-P04] 効率的な気象環境観測のための無人航空機経路最適化:重要性定量化とアルゴリズム設計

*菊地 亮太1,2篠田 太郎1大畑 祥1、砂田 茂1、鎌田 大2、村岡  浩治3、藏並 昌武3、渡邊 俊3 (1.名古屋大学、2.DoerResearch株式会社、3.宇宙航空研究開発機構)

キーワード:航空機観測、無人航空機、経路最適化、気象予報

無人航空機を用いた気象環境観測は、気象や大気環境予測の精度を高めるための有効な手段である。例えば、線状降水帯のような気象現象の予測には、低層の水蒸気量の正確な計測が不可欠であるが、無人航空機の利用において機動的な観測を実施し、予測精度向上にインパクトのある観測情報を取得することは、気象予報精度向上の観点で可能性を秘めている。効率的な観測のためには、気象環境現象の重要性を定量化し、そのデータに基づいて航空機の経路を最適化することで、気象環境情報量が大きい場所を優先的に狙って飛行する必要がある。また同時に、無人航空機による気象環境観測は、機体性能、安全面、法的ルールに関する制約を考慮する必要があり、これらの制約のもとで効率的に観測を行う必要がある。

 本研究では、観測される気象環境における情報量の最大化と運航上の制約や目標のトレードオフを考慮した最適化を実施し、新たな経路選択アルゴリズムの開発した。今回は、気象環境情報量と飛行距離の二つの目的を最適化することで、今回開発したアルゴリズムの成立性や実用性について評価することを目的とする。

 気象情報量の定量化には、スパース計測位置最適化手法を採用し、気象環境情報の重要性の定量化をする。気象環境の時空間場のような高次元の物理量を限られた観測値(今回の場合、無人航空機の経路上計測)で、再構成する問題を考える。限られた観測値から重要な気象環境構造を取り出すためにあらかじめ高次元データを低次元化する方法として、固有直交分解法による特徴モードを用いる。ここで、限られた観測値から重要な気象環境構造を取り出すことができる度合いというのが、気象環境観測における情報量と考える。本研究で固有直交分解を適用し、特徴モードを算出するために利用するデータセットは、気象庁の全球アンサンブル予報システム(GEPS)を使用する。

 多目的最適化の実施により、気象情報量とのトレードオフを明らかにし、その結果として得られた経路の特性を分析する。このトレードオフ関係からは、最も情報量が大きい経路(赤点)、最も飛行距離が短い経路(緑点)、およびトレードオフ関係のバランスが変わる経路(黒点、紫点、オレンジ点)を識別することができる。それぞれの代表点における航空機経路について、それぞれFig.1に示した。飛行可能距離に応じて気象情報量を最大化する飛行経路が大きく変わることが確認された。特に、飛行時間が限られている場合には、どの地点を観測するかが重要となる。現状の無人航空機の多くは飛行時間が限られているため、意味のある場所を把握し、そこに飛ばすことが非常に価値があると考えられる。