日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG06] 地球史解読:冥王代から現代まで

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、加藤 泰浩(東京大学)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源センター)、中村 謙太郎(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)


17:15 〜 18:45

[BCG06-P12] 愛媛県西予市に分布する鳥巣式石灰岩の堆積環境と堆積年代

*鬼頭 岳大1、中田 亮一2白石 史人1 (1.広島大学、2.海洋研究開発機構)

上部ジュラ系~下部白亜系の鳥巣式石灰岩は,南は九州,北は北海道まで広く分布し (田村, 1960),一般的に砂岩や泥岩などが卓越する地質体中に小規模岩体として産する.このことは,ジュラ紀後期~白亜紀前期のある時期に,炭酸塩鉱物の供給量が陸源砕屑物の供給量を局地的に上回るイベントが,ユーラシア大陸東縁の比較的広い範囲で起こったことを意味する.先行研究では,その原因が汎世界的な海水準上昇や富栄養化などにあると推測しているが (Kakizaki et al., 2012),鳥巣式石灰岩はしばしば下位の砕屑岩との境界露頭を欠いていることもあり,炭酸塩鉱物の供給量増加に至った原因は十分に理解されていない.また,このようなイベントが,ある時期に同時多発的に起きたのか,それともより長い期間に散発的に起きたのかという情報も,炭酸塩鉱物の供給量増加に至った原因を突き止めるうえで重要であり,そのためには石灰岩自体の堆積年代を高精度で決定する必要がある.
本研究において,愛媛県西予市城川町で詳細な地質調査を行ったところ,新たに鳥巣式石灰岩と下位の砕屑岩の連続露頭を発見し,これを中津川セクションとした.本セクションにおいて,石灰岩・砕屑岩の構成要素を明らかにし,また石灰岩に対してSr同位体層序学を適用することで,鳥巣式石灰岩形成の開始・終了に至った要因について明らかにすることが本研究の目的である.
中津川セクション周辺では,下位から砂岩泥岩互層,平板型・トラフ型斜交層理を伴う砂岩,層状石灰岩,塊状石灰岩へと変化した.薄片観察およびXRD分析によると,石灰岩層下位の砂岩中にも50%程度の方解石が主に生砕物およびセメントとして含まれていた.一方の石灰岩では,方解石が主に造礁性生物,微生物岩,ウーイドとして含まれていたが,下部の約70 mでは石英・長石が約5%含まれていた.これらの結果は,本セクションにおいて,石灰岩の形成に至った炭酸塩鉱物の供給量増加が,相対的海水準の低下に伴って起きたことを示唆する.また,石灰岩体の中部から発見した腕足動物の殻に対し,白石ほか (2005) の手法に基づいてSr同位体層序学を適用したところ,147.5 (±0.5) Maという堆積年代が得られた.本発表では,これらの結果などについて詳述する.

引用文献
Kakizaki, Y., Ishikawa, T., Nagaishi, K., Tanimizu, M., Hasegawa, T., Kano, A. (2012) Strontium isotopic ages of the Torinosu-type limestones (latest Jurassic to earliest Cretaceous, Japan): Implication for biocalcification event in northwestern Palaeo-Pacific. Journal of Asian Earth Sciences, 46, 140–149.
白石史人, 早坂康隆, 高橋嘉夫, 谷水雅治, 石川剛志, 松岡淳, 村山雅史, 狩野彰宏 (2005) 高知県仁淀村に分布する鳥巣石灰岩のストロンチウム同位体年代. 地質学雑誌, 111(10), 610–623.
田村実 (1960) 鳥巣層群および類似層の層位学的研究. 熊本大教育紀要, 8, 1–40.