14:30 〜 14:45
[G03-04] 立体模型と3DCGを利用した立体認識の特性に関する実践研究
キーワード:立体認識、立体模型、3DCG、地形
1.はじめに
地学教育において、立体の認識は重要な学習項目である。しかし、生徒が普段生活している学校周辺で合っても、地形の認識は不十分でることが多い。一般的に、地形の認識には地形図を用いることが多いが、等高線の読み取りは困難であることが報告されてきた。近年では、立体模型や3DCGなど、地形を立体的に表現する手法が増え、それらの有効性が認識されつつある。
しかし、立体模型と3DCGが、それぞれ地形の認識に対してどのような働きをするのかは、これまで検討されてこなかった。これらの教材の特徴を理解することは、目的に応じた教材準備を行う上で有用である。そこで、本研究では、地形の把握に着目し、立体模型と3DCGが生徒にどのような影響を与えているのか調査することを目的とした。
2.研究方法
渋谷周辺地域を対象とし、地形の立体模型と3DCGを作成した。立体模型は、立体模型の作成には,3Dプリンタを利用してプラスチック製の実物模型を作成した.教材の作成においては,川島ほか (2019) を参考にし,3Dプリンタにより作成したプラスチック製の立体模型と,OHPシートに地形図を用いた透明シートを作成した。3Dプリンタで立体模型を作成する際のデータは,地理院地図のH Pからダウンロードした.その際,垂直方向を約15倍に拡大し,立体模型を作成した.OHPシートには,該当する地域の地形図と,浸水予想を行う地点を印刷し,縮尺は立体模型と同様とした。地形の3DCGは,飯田・久保田 (2022)が報告したUSDZファイルとiPad (Apple Inc.) を利用する手法を用いることとした.本研究では,地理院地図から該当地域の3DCGをダウンロードし,淡色地図を3DCGに貼り付けて表示した.地形の理解による効果を明らかにするため,地図は浸水予想が表示された水害ハザードマップではなく,単色地図とした.本研究では対象地域の垂直方向を約15倍に拡大し,3DCGを作成した.垂直方向の拡大率に関しては,拡大率が大きすぎることにより,対象地域全体の地形の特徴が理解しにくくなることがある.そのため,対象地域全体の地形の特徴が理解できる範囲で,できるだけ拡大率が大きくなる倍率を試行した.結果として,垂直方向の拡大率を約15倍とした.
分析では、地形に関連が深い指標として、浸水領域を設定し、立体模型と3DCGでそれぞれ予想をさせた。予想地点は9地点とし、これらの予想の正誤をから、立体模型と3DCGの立体認識の程度を評価した。さらに、それぞれの教材に対する生徒の記述から、立体認識の違いを評価した。記述項目に関しては、「iPadを使った3Dモデルだから気づいたこと,わかったこと,理解できたことを教えてください」「立体模型+透明シートだから気づいたこと,わかったこと,理解できたことを教えてください」という質問を設定し、授業後に生徒に記述させた。
授業実践は、首都圏にある中学校3年生を対象とした。授業においては、最初に地形図に基づいて予想をさせたのち、立体模型または3DCGを観察させた。分析においては、地形図と立体模型または3DCGを比較した。
3.結果および考察
浸水予想の結果を見ると、地形図に比べて立体模型も3DCGも有意に浸水予想の正答率が向上していた。また、立体模型と3DCGを比べると、大まかな地形に関しては有意差が見られなかったが、台地上の窪地などの微小地形に関しては、立体模型で正答率が高い傾向が見られた。さらに、両者を組み合わせることにより、地形をより精緻に認識することが明らかとなった。また、立体模型と3DCGに関する評価に対して、計量テキスト分析を行ったところ、3DCGは拡大・縮小できる点が,立体模型は触覚を用いる点が,地形の理解に有用だったことが示唆された.これらのことから、立体模型と3DCGにおいて、立体認識は異なっており、組み合わせることによって立体認識がより精緻になることが示唆された。
・3DCG教材の作成方法に関しては、以下のwebページにまとめた。
https://sites.google.com/site/jouetsuargroups/%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97/07%E7%AB%8B%E4%BD%93%E3%83%8F%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%97
・本研究の一部は、ちゅうでん教育振興財団の助成を受けた。
地学教育において、立体の認識は重要な学習項目である。しかし、生徒が普段生活している学校周辺で合っても、地形の認識は不十分でることが多い。一般的に、地形の認識には地形図を用いることが多いが、等高線の読み取りは困難であることが報告されてきた。近年では、立体模型や3DCGなど、地形を立体的に表現する手法が増え、それらの有効性が認識されつつある。
しかし、立体模型と3DCGが、それぞれ地形の認識に対してどのような働きをするのかは、これまで検討されてこなかった。これらの教材の特徴を理解することは、目的に応じた教材準備を行う上で有用である。そこで、本研究では、地形の把握に着目し、立体模型と3DCGが生徒にどのような影響を与えているのか調査することを目的とした。
2.研究方法
渋谷周辺地域を対象とし、地形の立体模型と3DCGを作成した。立体模型は、立体模型の作成には,3Dプリンタを利用してプラスチック製の実物模型を作成した.教材の作成においては,川島ほか (2019) を参考にし,3Dプリンタにより作成したプラスチック製の立体模型と,OHPシートに地形図を用いた透明シートを作成した。3Dプリンタで立体模型を作成する際のデータは,地理院地図のH Pからダウンロードした.その際,垂直方向を約15倍に拡大し,立体模型を作成した.OHPシートには,該当する地域の地形図と,浸水予想を行う地点を印刷し,縮尺は立体模型と同様とした。地形の3DCGは,飯田・久保田 (2022)が報告したUSDZファイルとiPad (Apple Inc.) を利用する手法を用いることとした.本研究では,地理院地図から該当地域の3DCGをダウンロードし,淡色地図を3DCGに貼り付けて表示した.地形の理解による効果を明らかにするため,地図は浸水予想が表示された水害ハザードマップではなく,単色地図とした.本研究では対象地域の垂直方向を約15倍に拡大し,3DCGを作成した.垂直方向の拡大率に関しては,拡大率が大きすぎることにより,対象地域全体の地形の特徴が理解しにくくなることがある.そのため,対象地域全体の地形の特徴が理解できる範囲で,できるだけ拡大率が大きくなる倍率を試行した.結果として,垂直方向の拡大率を約15倍とした.
分析では、地形に関連が深い指標として、浸水領域を設定し、立体模型と3DCGでそれぞれ予想をさせた。予想地点は9地点とし、これらの予想の正誤をから、立体模型と3DCGの立体認識の程度を評価した。さらに、それぞれの教材に対する生徒の記述から、立体認識の違いを評価した。記述項目に関しては、「iPadを使った3Dモデルだから気づいたこと,わかったこと,理解できたことを教えてください」「立体模型+透明シートだから気づいたこと,わかったこと,理解できたことを教えてください」という質問を設定し、授業後に生徒に記述させた。
授業実践は、首都圏にある中学校3年生を対象とした。授業においては、最初に地形図に基づいて予想をさせたのち、立体模型または3DCGを観察させた。分析においては、地形図と立体模型または3DCGを比較した。
3.結果および考察
浸水予想の結果を見ると、地形図に比べて立体模型も3DCGも有意に浸水予想の正答率が向上していた。また、立体模型と3DCGを比べると、大まかな地形に関しては有意差が見られなかったが、台地上の窪地などの微小地形に関しては、立体模型で正答率が高い傾向が見られた。さらに、両者を組み合わせることにより、地形をより精緻に認識することが明らかとなった。また、立体模型と3DCGに関する評価に対して、計量テキスト分析を行ったところ、3DCGは拡大・縮小できる点が,立体模型は触覚を用いる点が,地形の理解に有用だったことが示唆された.これらのことから、立体模型と3DCGにおいて、立体認識は異なっており、組み合わせることによって立体認識がより精緻になることが示唆された。
・3DCG教材の作成方法に関しては、以下のwebページにまとめた。
https://sites.google.com/site/jouetsuargroups/%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97/07%E7%AB%8B%E4%BD%93%E3%83%8F%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%97
・本研究の一部は、ちゅうでん教育振興財団の助成を受けた。
