日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM03] 地形

2024年5月28日(火) 09:00 〜 10:30 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:岩橋 純子(国土地理院)、齋藤 仁(名古屋大学 大学院環境学研究科)、高波 紳太郎(明治大学)、Newman R Newman(Hokkaido University)、座長:岩橋 純子(国土地理院)、高波 紳太郎(明治大学)、Daniel R Newman(Hokkaido University)、齋藤 仁(名古屋大学 大学院環境学研究科)


09:30 〜 09:45

[HGM03-03] 大気生成および地上生成Be-10の併用に基づくソイルクリープダイナミクスのモデル化─阿武隈山北部の山腹斜面での検証─

*近藤 有史1松四 雄騎2、松崎 浩之3 (1.京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻、2.京都大学防災研究所、3.東京大学総合研究博物館MALT)

湿潤温帯地域の丘陵斜面の土層は、深度方向へと流束を変えながら斜面下方へと次第に移動する。ソイルクリープは、谷頭凹地の土層深を増加させるとともに、土層構造を長い時間スケールで発達させ、短期的な地中水の循環プロセス、ひいては降水浸透による斜面の不安定性を制御する。本研究では、山腹斜面に分布する岩盤中の地上生成Be-10濃度および土層中の大気生成Be-10存在量の深度分布に基づき、長期的なソイルクリープ過程のモデル化を試みた。本研究で開発されたソイルクリープモデルは、土塊の塑性変形による粘性輸送と地表からの外乱による離散的な粒子流輸送に対応する2つの速度分布から構成される。これら異なる輸送則を線形結合することにより、ソイルクリープ速度の深度分布はモデル化された。地上生成Be-10より決定される土層生成速度関数および、土層深と地形曲率の空間分布から、モデルの速度と物質収支を制約するとともに、大気生成Be-10蓄積量の深度プロファイルから、ソイルクリープ様態の深度方向への変化を規定するモデルのパラメータを決定した。モデルの適合度は、大気生成Be-10プロファイルに基づき計算された土層の滞留時間を、土層中の炭化物から得られたC-14年代と比較することで評価された。

モデルの検証は阿武隈山地北部の花崗閃緑岩を基盤とする丘陵斜面で実施した。対象とした山腹斜面は、凸状の尾根頂部と平坦な中腹部を有し、下方へとわずかに凹状となる。山腹斜面全体を覆う厚い土層(1 m以上)は、深さ40-60 cm付近を境として上部の軟らかい部分と下部の硬い部分へと分けられることが特徴である。地上生成Be-10試料は、なだらかに張り出す尾根に掘削し露出した岩盤より採取された。大気生成Be-10分析用試料は、尾根から谷へと延びる側線上の4つの掘削断面で、地表から深さ約2 mまで10 cm間隔で連続的に採取された。合わせてC-14年代測定のために、土層内に埋もれた木炭粒も採取した。大気生成Be-10プロファイルのデータセットは、2層流ソイルクリープモデルを地上生成Be-10に由来する土層生成速度とC-14年代に基づく深度依存の土層滞留時間に当てはめることで、よく説明された。