日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-QR 第四紀学

[H-QR05] 第四紀:ヒトと環境系の時系列ダイナミクス

2024年5月30日(木) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:白井 正明(東京都立大学)、横山 祐典(東京大学 大気海洋研究所 )、吾妻 崇(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、里口 保文(滋賀県立琵琶湖博物館)

17:15 〜 18:45

[HQR05-P04] 霞ヶ浦南東部における過去6000年間の粒度変化

*山田 桂1、平野 友心1、渡邊 千隼1多田 賢弘2多田 隆治2鈴木 健太2香月 興太3唐 双寧1 (1.信州大学、2.千葉工業大学、3.島根大学)

キーワード:霞ヶ浦、完新世、古環境、海水準変動

茨城県南東部に位置する霞ヶ浦は,砂洲や河川堆積物の発達により外洋が閉塞された湖沼で,現在の平均水深は3.4 mと浅い.広義の霞ヶ浦は,西浦,北浦,およびこれらの両水域と接続する河川が合流する外浪逆浦からなる.霞ヶ浦(西浦)はおよそ6000年前以降,徐々に閉鎖的内湾から汽水湖へと変化し,昭和38年に利根川との水門が造られ完全な淡水湖になった.これまでに過去10000年間を対象にした数千年ごとの長期的スケールでの古環境(齋藤ほか,1990)や古水文の復元(高木ほか,2016)などが行われているものの,過去6000年間を細かな時間スケールで検討した例はない.そこで本研究は,霞ヶ浦(西浦)の南東部で掘削された2本のコア試料を用いて,過去6000年間について,高い時間分解能で古環境の復元を行うことを目的とした.
 2022年と2023年に,霞ヶ浦(西浦)の南東部2地点(KS22-04, KS23-01)と北西部1地点(KS23-02)において,パーカッションピストンコアラーを用いて3本のコアを採取した.本発表では主に南東部の2本の結果について述べ,北西部のコアおよび3本のコアの対比については渡邊ほか(H-QR05)で説明する.これらのコア試料について,岩相,CTスキャン画像により堆積構造を把握するとともに,層厚1 cmごとに粒度分析を行った.最も南東部に位置するKS23-01はコア長424 cmで,コア深度125 cm以深は主に低角の葉理と生物擾乱の発達する極細粒砂岩が見られた.125〜60 c mは低角の斜交層理が発達する泥が卓越し,60 cm以浅は双方向の葉理が発達する泥で構成されていた.また深度16 cmにシジミ密集層が認められた.KS22-04はコア長401 cmで,全体として濃灰色〜淡灰色の泥から構成され,貝殻片を含んでいた.深度100 cm以深は双方向の低角の層理が発達するが,100 cm以浅は平行葉理が見られる泥で貝殻片が散在していた.貝殻の14C年代によって求めたKS22-04, KS23-01の堆積年代に基づき南東部の2本のコアを比較すると,より南東に位置するKS23-01において砂が卓越するのに対し,北西側のKS22-04は主にシルトから構成されていた.またいずれのコアも上方へ平均粒径と含砂率ともに低下することから,南東部には約6000〜1000年前まで霞ヶ浦の湾口部から潮汐により供給された砂がデルタを形成しており,その後砂の供給は徐々に減少し泥が堆積する汽水湖へと変化したと推察される.また,両コアの平均粒径と含砂率はおよそ4000〜3000年前に一時的に急激に低下していた.関東付近では約4000〜3000年前に弥生の小海退と呼ばれる約4 mほどの海面低下(田辺ほか,2016など)が知られており,この低下に伴い湾が閉鎖的になり,一時的に泥のみが卓越する環境に至ったと考えられる.