日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC07] 地球温暖化防⽌と地学(CO2地中貯留・有効利⽤、地球⼯学)

2024年5月28日(火) 10:45 〜 12:00 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:徂徠 正夫(国立研究開発法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)、薛 自求(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構)、愛知 正温(東京大学大学院新領域創成科学研究科)、今野 義浩(The University of Tokyo, Japan)、座長:愛知 正温(東京大学大学院新領域創成科学研究科)


11:15 〜 11:30

[HSC07-09] 沿岸域CCSのモニタリング効率化に向けたワイヤーラインDAS-VSPの適用性検討

*新部 貴夫1、三浦 卓也1、菅原 宗1、今井 優希2、永田 丈也3 (1.石油資源開発株式会社、2.(株)地球科学総合研究所、3.株式会社物理計測コンサルタント)

キーワード:CCSモニタリング、DAS-VSP、沿岸域CCS

CCSにおけるモニタリングは多様な技術を組み合わせて実施されるが、坑井から離れた位置におけるプリューム挙動把握が可能な弾性波探査は多くのプロジェクトで実施されている。一方で、他のモニタリング種目に比べて弾性波探査は調査コストが高価であるため、そのコスト抑制が大きな課題として指摘されている。特に、沿岸域における弾性波探査は一般にデータ取得が複雑であり、調査コストが更に大きくなる傾向がある。加えて、調査期間の圧縮などを通じた漁業活動への影響軽減などを考慮する必要もある。
効率的なCCSモニタリングの手法として、近年、光ファイバーを用いたDAS-VSPが多くのプロジェクトで適用されるに至っている。陸域での適用事例が多いが、沿岸域での適用を想定した場合、海底着底型の受振器が不要になることで弾性波探査のコストを大幅に抑制できる可能性がある。また、受振器設置のオペレーションが不要になるため、調査期間の圧縮および漁業活動への影響軽減も期待される。沿岸域に加えて既存油ガス田を対象としたCCSの場合、フィールド内の既存井を活用できればイメージング範囲が拡張できるため、更に効果的なモニタリングが実現する可能性がある。
既存井にDASを設置する場合は、ワイヤーラインあるいはスリックラインによる設置方式が想定される。同手法による事例も多く報告されているが、坑井傾斜、坑壁とのカップリング、坑井のセメント状態、収録装置を兼ねるインテロゲータによって感度やノイズ状況、SN比が異なることが報告されている (Willis, 2022)。これら要件は調査毎に固有なため、事例の収集を通じた要因検討はCCUS事業の拡張に向けて重要と考えらえる。
以上の背景のもと、本研究ではワイヤーライン法によるDAS-VSPを対象に、品質に影響を与える要素の把握と将来的なモニタリング効率化に向けた検証を目的として複数のデータ取得実験を実施した。2022年には、長岡の物理計測コンサルタント敷地内にある深度約300mの垂直井を用いたデータ取得実験を行なった。また同じ2022年と2023年にかけては、既存油田における休止井を用いたデータ取得実験を行うことで、DAS-VSPの品質評価を行った。本発表ではこれら成果概要を紹介すると共に、得られた知見から想定される沿岸域CCSモニタリングデザインに関しても議論する。

Reference
Willis, M. E. (2022): Distributed Acoustic Sensing for Seismic Measurements – What Geophysicists and Engineers Need to Know, SEG Distinguished Instructor Short Course.