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[MAG34-P07] 出水時における河川と沿岸海水の137Cs濃度変動
キーワード:集中豪雨、セシウム137、溶脱
大規模出水時には、河川を経由して137Csが大量に海洋に流出し、沿岸海水中の溶存態137Cs濃度が上昇することが報告されている。既往研究では、陸域における137Cs流出は土地利用やダムの有無などの流域特性に依存することが示唆されており、出水後の沿岸海水における溶存態137Cs濃度の変化は各種の数値計算によって再現が試みられている。しかし、出水イベント時のデータは希少であり、これらの知見の検証が十分になされていない。本研究では、陸域と海洋の双方における137Cs動態とその連動性を明らかにするため、出水時の河川水および沿岸海水の同時期採取・分析を行った。調査対象は請戸川水系とその沿岸海域である。2023年9月3日から19日の期間、請戸川本流(請戸川)と支流(高瀬川)の2地点で河川水試料を13回、請戸川河口から北に約500m離れた海岸で沿岸海水試料を8回採取した。対象期間中の流域平均降水量の積算値は300mmで、9月4日、6日、8日に高強度の降雨が観測された。採取した水試料はろ過後、懸濁物質の137Cs濃度(Bq/kg)と溶存態137Cs濃度(Bq/L)を測定した。懸濁物質中の137Cs濃度は、請戸川で7.0~67 kBq/kg、高瀬川で2.4~15 kBq/kgであった。高瀬川では、下流部で降雨量が相対的に多い場合に出水ピーク時の濃度が高くなる傾向があったが、請戸川ではその逆の傾向が見られた。この違いは、2つの流域内の137Csインベントリの空間的分布の差に起因すると考えられる。請戸川と高瀬川の溶存態137Cs濃度は、それぞれ52~70 mBq/L(13サンプル中5サンプル測定済)、8.4~37 mBq/Lであった。沿岸海水の懸濁物質の137Cs濃度は2.0~95 kBq/kg、溶存態137Cs濃度は6.7~410 mBq/Lであった。いずれも9月8日の降雨後の出水ピーク5時間後に採取した試料で最高値を示し、その後10日でバックグラウンドレベルまで低下した。ピーク時の沿岸海水の溶存態137Cs濃度は、河川水よりも高い値を示しており、陸域起源の懸濁物質から相当量の137Csが溶脱したことが示唆される。