日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI29] 計算科学が拓く宇宙惑星地球科学

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:大淵 済(神戸大学)、牧野 淳一郎(国立大学法人神戸大学)、亀山 真典(国立大学法人愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、堀田 英之(名古屋大学)

17:15 〜 18:45

[MGI29-P05] 大規模惑星系N体シミュレーション:Planetesimal-Driven Migration による原始惑星の外向き移動

*神野 天里1斎藤 貴之1牧野 淳一郎1 (1.神戸大学)

キーワード:惑星形成、惑星移動、N体シミュレーション

古典的な惑星形成論では、惑星の大規模な移動は考慮されておらず、惑星はその場で形成されると仮定されてきた。しかし、惑星のその場成長を仮定すると太陽系外縁部に存在する天王星や海王星を太陽系年齢以内に作ることが困難であることが知られている。さらに、1995年の系外惑星発見を皮切りに、今日では5000個以上の系外惑星が観測されており、その中には、公転周期数日という中心星に非常に近い軌道を持つホット・ジュピターなど惑星移動を考慮しなければ説明できない惑星が数々見つかってきている。
惑星移動の有力なメカニズムには、惑星がガス円盤と重力的に相互作用することで惑星が移動する Type I migration や惑星微惑星間の重力散乱によって生じる Planetesimal-Driven Migration (PDM) が知られている。前者のメカニズムでは、一般に惑星は角運動量を失うことで内側へと落下してしまう (惑星落下問題)。一方、後者のPDM では惑星が微惑星から角運動量を受け取ることで外側へも普遍的に移動する可能性が指摘されている。しかし、計算コストの高さからこれまでの PDM に関する研究では、ガス抵抗や微惑星間重力相互作用は無視されており、実際に PDM によって惑星がどのように移動するのか、その傾向は十分に調べられていない。
そこで、本研究では大規模惑星系形成N体シミュレーションコード GPLUM とスーパーコンピュータ富岳を用いることで、世界で初めて微惑星間重力相互作用やガス抵抗、Type I migration の全てを考慮した PDM の自己無撞着な大規模N体シミュレーションを行った。本研究では、微惑星円盤の中に単一の原始惑星を置き、原始惑星質量や粒子数、ガス抵抗やType I migrationの有無をパラメータとして、総計570回に及ぶシミュレーションを行い PDM が惑星移動過程に及ぼす影響を統計的に調べた。
我々の行ったシミュレーションから、 ある割合で原始惑星は Type I による抵抗がある状態でも PDM によって円盤外向きへ移動することがわかった。また、従来考えられていたよりもずっと小さな原始惑星・微惑星間質量比でも PDM によって原始惑星はダイナミックに微惑星円盤内を移動することが明らかになった。本研究の結果はPDMによって、これまで問題視されていた原始惑星落下問題を解決するだけでなく、微惑星と質量比がそこまでついていない暴走成長段階から原始惑星が円盤内を大きく移動しながら成長する可能性を示唆している。
本講演では、我々が行った PDM の自己無撞着な大規模N体シミュレーションの結果を示し、PDM が惑星移動過程に及ぼす影響を議論する。