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[MIS08-07] ジオパークとの連携によるゼンテイカ類の系統関係・遺伝的多様性の解明
キーワード:ゼンテイカ、トビシマカンゾウ、ジオパークネットワーク、DNA解析
ゼンテイカ(Hemerocallis dumortieri)は、日本の中部地方以北に自生する山地性植物で、ニッコウキスゲの通称で知られている。一方、日本海の離島、飛島と佐渡島には、ゼンテイカの島嶼型変種とされるトビシマカンゾウが分布している。また、北海道に自生するゼンテイカは、エゾゼンテイカと呼ばれ、本州のものとは形態的に区別される。ニッコウキスゲ、トビシマカンゾウ、エゾゼンテイカは、地域の象徴的な植物となっており、知名度・市民の関心は高いが、それに反して遺伝的特徴に関する科学的知見は乏しい。トビシマカンゾウ、ニッコウキスゲ、エゾゼンテイカの自生地は、鳥海山・飛島、佐渡、栗駒山麓、男鹿半島・大潟、下北、アポイ岳などのジオパークにあり、希少植物としてジオパークの研究対象ともなることから、本研究では、日本ジオパークネットワークを生かした、各地のジオパークとの連携により、地域の象徴となり、自然教育の好適材料でもあるゼンテイカ類の系統関係、遺伝的多様性をDNA解析と自生地での形質調査により、明らかにすることを目指した。DNA解析は葉緑体遺伝子間領域2領域のシーケンシングと全ゲノムレベルでの断片解析により行い、10道県の50を超える集団からサンプルを採集し、各地のゼンテイカ類の系統関係・遺伝的多様性を調査した。その結果、トビシマカンゾウは従来言われていたゼンテイカの変種であること、北海道と本州のゼンテイカの間に明確な遺伝的分化は見られず、エゾゼンテイカと本州のゼンテイカは同一の分類群であることが確認された。ゼンテイカ類の大きな種内分化が、葉緑体DNAでは、従来言われていた北海道と本州の間ではなく、東北南部を境生じていること、形態で見ても、東北南部を境に花柄長の長差に違いヶ見られること、を明らかにした。本研究の成果は、ジオパーク活動を通じた講演会などにより市民に広く発信しており、ジオパーク活動の生物学的研究の好事例になっていると言える。