日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS17] 歴史学×地球惑星科学

2024年5月30日(木) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:加納 靖之(東京大学地震研究所)、芳村 圭(東京大学生産技術研究所)、岩橋 清美(國學院大學)、玉澤 春史(東京大学生産技術研究所)

17:15 〜 18:45

[MIS17-P06] 地震被害のマルチスケール要因分析

★招待講演

*大邑 潤三1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:地震災害、マルチスケール分析、被害要因

地震による様々な被害を発生させる要因には,災害誘因である地震動そのもの,および自然的要因(自然素因)以外に,人文・社会的要因(社会素因)も存在し,これらが相互に複雑に関係して被害が発生する.こうした被害の発生構造を正しく理解するためには,特定の要因に固執したり,要因を羅列したりするのではなく,各要因の空間スケールや影響の大きさの違いをふまえた正しい整理がなされる必要がある.
本研究では地震被害やその背景にある地域的な特徴を,マルチスケール分析を用い地理学の視点から俯瞰的に捉えようとした.その上で,被害発生構造モデルを作成することにより複雑で重層的な被害の諸要因を効果的に整理することを試みた.
近代および近世期の3つの内陸地震の被害を対象にマルチスケール分析による要因分析を行った.この結果をもとに,建物倒壊被害や人的被害の発生構造(メカニズム)について,災害誘因と素因(自然素因・社会素因)の複雑で重層的な関係の全体像を,モデル化(概念図化)することに成功した.これにより地震被害の要因について, 1)要因ごとのスケールの違いと与える影響の大きさ,2)要因の性質(自然・社会)の区別, 3)複数存在する要因の中でのそれぞれの位置付け,4) 要因の重層性と相互の関係,を整理して説明することが可能になった.またモデル化によって被害の発生構造を概念的に可視化して理解することにより,異なる年代や地域の被害事例であっても被害の発生構造を比較することが容易となった.