日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT37] 稠密多点GNSS観測が切り拓く地球科学の新展開

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:太田 雄策(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)、西村 卓也(京都大学防災研究所)、大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、藤田 実季子(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

17:15 〜 18:45

[MTT37-P10] HFドップラー・TECにより観測された令和6年能登半島地震に伴う電離圏変動

*中田 裕之1細川 敬祐2大塚 雄一3野崎 憲朗2、坂井 純2 (1.千葉大学大学院工学研究院、2.電気通信大学大学院情報理工学研究科、3.名古屋大学宇宙地球環境研究所)

キーワード:HFドップラー、全電子数、電離圏変動、令和6年能登半島地震

令和6年能登半島地震はマグニチュード7.6を記録し,大きな被害を引き起こした。非常に大きな地震であり,電離圏変動の発生が期待されることから,本研究では,HFドップラー観測・TECデータを用いて電離圏変動の解析を進めた。

今回の地震は2024年1月1日16:10に発生し,その約9分後に震央上空にてTEC変動が観測された。他の地震と同様にTEC変動は南側で特に顕著に表れており,円弧状の変動の伝搬が確認された。震央上空にて変動が観測されたのとほぼ同時に,HFドップラー観測でも菅平,千葉の両観測点で短周期の変動が観測された。この変動は,震央よりレイリー波が地上を伝搬し,観測点の直下にて音波が生成され,変動が観測されたものであると考えられる。その後,HFドップラー観測では,周期的なドップラー周波数変化が観測されたが,その周期は約100秒程度であった。東北地方太平洋沖地震などのように,大きな地震の後には4分周期の変動が観測されることが知られているが,今回の100秒周期の変動は,今回の事例に特有な変動であると言える。

また,これらの周期的な変動は,5006 kHz, 6055 kHzの電波にて観測されたが,8006 kHzでは,最初の変動が観測された直後に電波受信がされなくなった。地面動により生成された音波が上空に伝搬することで,電離圏全電子数の急激な減少(Tsunamigeneic iohospheric hole)が発生することが知られており,今回の事例でも,同様の減少が発生し,電波が反射されなくなったと考えられる。ドップラー観測でも,地震発生の直前に電子密度の減少により正常波が反射されなくなり,地震発生時には異常波のみが反射されていたことが明らかとなっている。地震が発生した時間帯は,日の入り前の時間帯で,電離圏電子密度が減少していたことが影響していたと考えられる。

本研究で使用したソフトバンクの独自基準点の後処理解析用データは,「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」の枠組みを通じて,ソフトバンク株式会社およびALES株式会社より提供を受けたものを使用しました。