日本地球惑星科学連合2024年大会

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[O-08] 高校生ポスター発表

2024年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球惑星科学系 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(文部科学省)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O08-P23] 河岸の表層土壌の保水性と河川の氾濫の関係性について

*小西 敦貴1、*桜井 司1、*石田 奈海1、*小宅 純誠1 (1.茨城県立日立第一高等学校)

キーワード:河川の氾濫、表層土壌、保水性

1.緒言
近年、大規模な豪雨災害が多発している。日立市には、本校付近の宮田川をはじめ沢山の河川が流れているため、SDGsの11番目の目標である「住み続けられる街作り」を達成するためにも河川の氾濫の対策を講じる必要がある。基本的に河川の氾濫は、河川内の水量が増え水位が上昇し、水が堤防を越えることで発生する。そのため、氾濫を防ぐためには、護岸工事や堤防、ダムの設置など、水の流入を抑制することや、遊水池を設置するといった河川に水を留めないようにすることが主要な対策として挙げられる。本校付近を流れる宮田川は、治水設備の組合せにより合流地点での氾濫を防ぎ、長年氾濫していなかったことが先行研究より分かっている。しかし、基本的に流速を遅くすることは、河川内にとどまる水量を増やし、これは氾濫が発生する原因の一つである。そのため、他にも氾濫を防いでいる要因があると考えた。日立市の河川は急勾配であり、河川内の水はすぐ海まで流れるため、我々は河川内に水を流入させないことに注目した。そして、大雨時に支流や本流河岸から供給される水の量を少なくすることで、河川内に多量の水が滞留することを防げるのではと考えた。そこで、河川の氾濫と土壌などの流域環境の関係を明らかにすることを目的として本研究を始めた。

2.研究方法
2-1.仮説
河川は基本的には多量の水が流入し、堤防など岸の高さを超えると氾濫する。ここで仮説を二つ立てた。一つ目は、河川に流入する水の量は河川流域の土壌による保水性により調整されること、二つ目は、文献調査より腐葉土が最も保水性に優れているということである。
2-2.保水性の評価基準
保水性を評価するための要素として、間隙率と保水力を使用する。間隙率は土壌の総容量に占める間隙の割合であるため、総容量が等しい場合は試料が含んだ水量が多いほど大きくなる。また、保水力は水を逃さない能力であるため、給水(降雨)の一定時間後に土壌から抜けた水の量が小さいほど大きくなる。これらを比較して保水性を評価する。
2-3.実験方法
実験装置は図1のものを使用し、試料として腐葉土、真砂土、鹿沼土(すべて園芸用)を使用した。文献調査より鹿沼土は細粒と粗粒がおよそ2:7で存在することが分かっているため、その比率で混合して使用した。腐葉土は、自然の状態では動物の移動などにより圧縮されていると考え、圧縮して使用した。鹿沼土と真砂土の選定理由は、腐葉土の保水性を図る指標としてで、前者が保水性の高いもの、後者が低いものとしてである。
実験手順は、コーヒードリッパー(図2)に試料を入れ、水を上部から、穴をあけたプラスチックコップ(図3)を介して116ml加える。この水の量は日立の年間降水量を降水日数で割り求めた値である。その後5分間、30秒ごとにメスシリンダー溜まった水の量を計測した。
また、追加実験として真砂土の上に腐葉土を重ねたもの、鹿沼土の上に腐葉土を重ねたもの(以降、腐真、腐鹿と呼ぶ。)に対しても、同様の実験を行った。

3.結果
溜まった水量は1分30秒の時点を除き、多い順に腐葉土、腐真、腐鹿、真砂土、鹿沼土なった。1分30秒の時点では腐鹿と真砂土の順番が入れ替わった。(図4)ここで、縦軸を試料が吸収した水量としたもの(図5)より、縦軸の値が一定になった時の縦軸の数値が小さいものの間隙率が大きく、縦軸の変化量(グラフの傾き)が小さいものの保水力が高いということがわかる。

4.考察
以上の結果から、仮説に反して間隙率、保水力ともに腐葉土が最も小さくなり、鹿沼土が最も大きくなることが分かった。そのため、鹿沼土の保水性が最も高いと考えられる。また、腐真の保水性は腐葉土より優れるが真砂土に劣り、腐鹿の保水性は腐葉土より優れるが鹿沼土より劣った。これらは、真砂土や鹿沼土の一部分が、それらよりも保水性が優れない腐葉土に置き換わったことが原因であると考えられる。

5.結論
最終的に、鹿沼土の保水性が最も優れており、腐葉土の保水性が最も劣っていることが分かった。

6.今後の展望
今後は、実験に使う試料の自然の状態について調査し、再実験を行いたい。また、各試料が流水によって動き始める条件を明らかにするため、平面でなく斜面に試料を設置する実験や、水を継続的に加える実験、加える水量を変更した実験を行いたい。

参考文献
駒村 富士弥、1977: 植生による斜面侵食および崩壊防止の効果、 緑化工技術第5巻(2)、9-13。
(株式会社サムシング)、2023年12月1日:腐植土とは-地盤調査・地盤改良のサムシング、https://www.s-thing.co.jp/column/fushokudo/、(2023年6月30日)。
(茨城県)、2023年6月9日:保安林制度について、
https://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/ringyo/rinchi/rringyo_hoanrin.html、 (2023年5月12日)。
(廣瀬建材 株式会社)、2021年1月5日:真砂土について、https://www.hirose-kenzai.com/blog/1423/、(2023年6月30日)。
矢橋 晨吾、雨宮 悠、高 錫九、高橋 悟、田中 弥寿男、1994:園芸用土の物理性に関する研究Ⅱ. 鹿沼土の土壌構造と水分特性について、千葉大園学報、48、135-140。