日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

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[O-08] 高校生ポスター発表

2024年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球惑星科学系 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(文部科学省)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O08-P24] 三陸ジオパーク北部エリアの災害への備えと評価の研究

*川口 修治1、*小川 主真1、*松坂 彩良1、*藤森 貴志1、*田頭 航来1 (1.マリエント「ちきゅう」たんけんクラブ・シニア)

キーワード:ジオパーク活動、地震、津波、防災

1 背景と目的
 本クラブは2018年から三陸ジオパークについて研究し、有意義で魅力のあるジオパーク活動について検討して各種提案をしてきた。今年度は、北部エリアのジオサイトについて現状の問題点と課題を洗い出すためジオ多様性評価を利用し改善とその魅力を高める検討をした。その過程で災害への備えと評価を重視すべきという意見が出され、避難経路と新たな評価の観点を設定して検討した。

2 データおよび解析方法 
 ジオサイトの評価は高木・長田2)による評価法を用いた。評価は6つの主項目と、各々の主項目について3つずつの副項目を設定し、合計18項目の採点を4段階で評価するものである。主項目は 1.教育的価値(Ved)、 2.科学的価値(Vsc)、 3.観光価値(Vtr)、 4.安全性・アクセス(Vsa)、 5.保護・保全とサイトの持続可能性(Vcs)、 6.情報の整備状況(Vti)である。
 本論で取り扱うサイトは、会員の通学範囲の青森県八戸市から岩手県洋野町にある12のサイト(図1)とした。
 担当者が実際にサイトを訪れ調査し、まとめてカルテを作成した。補助資料として三陸ジオパークガイドブック(2020)、各種パンフレット、各種Web資料、当クラブのジオパーク巡検と三陸ジオパーク認定ガイドの説明を参考にした。
 担当者が作成したカルテについて検討をした。高木・長田2)評価法による11のジオサイトの評価と、会員の評価は異なる傾向にあったので、その違いについて検討した。検討の過程で、三陸ジオパークの各サイトについての理解が深まり、さらに評価のあり方について疑問が生じた。令和6年(2024年)能登半島地震を話題にした際、「三陸ジオパークでは、訪問者の命を守るため防災と避難により重点を置いた評価が必要ではないか」というものだった。
 そこで津波避難を意識した安全性評価を増やすことを検討した。基礎資料として各サイトの避難経路を調べ、場合によっては新たに設定した。避難経路は自助を基本とし、各サイトから令和2年4⽉に公表された国の新たな巨⼤地震モデル想定高度以上の避難場所までとした。また防災と避難について防災士の助言を得た。

3 結果
 避難経路はサイトの範囲、避難の元となるハザードマップ、経路表示や各種構造物などの問題点が挙げられ、それぞれについて検討した。
 その結果、新規準「災害への備え(The value of disaster preparedness)」として3つの評価の観点、 1.避難経路明示と説明(Vdp1)、2.避難訓練の実施とその頻度(Vdp2)、3.災害対応の柔軟性(Vdp3)を設定した。
 各サイトをこの観点で評価しカルテを作成し、改善について検討した。特に避難訓練の実施とその頻度については、多くの目で確認して安全な経路にするため、避難行動を身体でおぼえるために必須であると防災士からの助言があった。評価にあたって、各サイトの特色をどう考慮するか、この評価をどのように利用するかなどについて疑問が出され、これを課題として研究を継続することとした。

4 考察と今後の課題 
 ジオ多様性評価を用いて客観的に問題点や改善点を知ることができた。また評価そのものについて考察したことは有意義であった。避難経路の検討において、ハザードマップの更新や地域ごとの津波特性を盛り込んだ避難計画、工夫された表示、JR八戸線の線路を越えた避難等の取り組みを知り、地域の取り組みに驚きまた感心した。今後、この評価の改良と他のサイトへの応用を課題とし継続していきたい。また、いつ起きてもおかしくない日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震などに、正しくおそれ準備する姿勢を身につけたいと考える。

参考文献 
1)三陸ジオパーク推進協議会. 2020. 三陸ジオパークガイドブック
2)高木秀雄・長田翔(2020)三陸ジオパークのジオサイトの評価とその活用,早稲田大学教育・総合科学学術院学術研究(自然科学編)第68号,p27-49.
3)国土交通省ハザードマップポータルサイト 参照2024年4月10日