13:45 〜 15:15
[O08-P26] 平瀬川・多摩川間におけるバックウォーター現象のモデル化と減災への工夫
キーワード:バックウォーター現象、水位の上昇、本流、支流
1.動機と目的
近年増加している河川の氾濫の要因の一つとしてバックウォーター現象というものがある. バックウォーター現象とは, 河川に流れる水流の勢いが増したときに, 支流の水が本流に流れ込めず, 支流の上流で氾濫が起きる現象である(図1).現在は, この対策として主に堤防の拡張が行われているが, 氾濫が起きるたびに堤防の増築を繰り返しており, 根本的な解決に至っていない.そこで,バックウォーター現象が起こる河川をモデル化した上で, 河川の合流部の内部に工夫をし, 氾濫を防ぐ手立てを発見するため研究を行った.
2.事前準備
関東地方を流れる多摩川(本流)と平瀬川(支流)(図2)を参考にした. これらの河川は2019年10月12日, 台風19号の影響でバックウォーター現象による氾濫が起こっている.国土地理院地図を用いて河川の画像解析を行った.
3.実験1
①目的
模型の岸は牛乳パックで製作し, 川底にはプラスチック段ボールを使用した(図3).水の代わりにBB弾を用いた. 本流からのBB弾の流れに影響されて支流のBB弾が詰まり、溢れるかを確かめる.
②結果・考察・課題
支流からBB弾が10粒溢れた. しかし,本流のBB弾が流れ切った後も支流で詰まった銀色のBB弾が流れ始めなかったことから, 本流のBB弾の影響ではなかったと考えられる。模型のガムテープやプラスチック段ボールの表面に凹凸があり, BB弾の流れが妨げられていたと考えられる。
4.実験2
①目的
BB弾の流れが妨げられないよう本流に机を用いた。その模型でバックウォーター現象が発生するかを確認する. BB弾の数, 支流は実験1のまま用い、本流の川幅を縮尺通りにして実験をするとBB弾が均一に流れなかったため本流の川幅を35㎝に狭めた(図4).
②結果・考察・課題
支流からのBB弾が合流部で詰まり本流に流れ込まなかったことで, 支流の上流部でBB弾が溢れた.よって,バックウォーター現象が起こったと考えられたが,同条件下で複数回実験を行ったところ,同じ状況が再現できなかった.原因として,実験をする度に支流の左右の傾きが変わり,BB弾の流れが毎回変化していることや,BB弾が表面に広がり,一層になって流れるために,水位の上昇が再現できていなかったことが考えられる. そこで水を使用することにした.
5.実験3
①目的
水を用いた模型でバックウォーター現象が起こるかを確認する. 実験1で用いた模型を使用した.多量の水を本流に継続的に流すために簡易タンクを製作した(図5). 支流に水と同時に葉を流し,支流の水がどのように流れているかを可視化した.(図6)
②結果・考察・課題
河川の合流部の水位が一時的に上昇し、支流の水と一緒に流した葉が,本流との合流部付近から支流の上流に戻るように動いた様子が見られたことから,バックウォーター現象が発生したことが確認できた.今回の実験で水位が上がった川の状態を再現できたのは数秒間だったため,実際の河川に近づけるためには水位が上がった状態を長時間保つ必要がある.
6.実験4
①目的
水を用いた模型で,支流の水が逆流しない方法を発見する。河川合流部に仕切りをつけて実験3と同じ方法で模型に水を流す.仕切りの付け方は以下の3通り(図7).(支流と平行な角度を0°とし,時計周りを正とする.)
1.長さ7cmの直線型で角度0°のもの
2.長さ7cmの直線型で角度30°のもの
3.長さ21cmで支流側から7cmの箇所で角度をつけたもの
②結果・考察・課題
1.葉の逆流は無かった.本流からの水が仕切りに当たって水位が上昇し溢れた.
2.葉の逆流は無かった.水位の上昇は小さく,溢れた量も少なかった.
3.葉の逆流は無かった.水位の上昇が大きく,溢れた量も多かった.
すべての仕切りが支流での水の逆流を防ぐことができたと考えられる.しかし,仕切り1と仕切り3では,仕切りに当たった水が相当量溢れるという結果になった.合流部で溢れた水の量は仕切り2を設置したときが最も少なかったことから,三つの仕切りのうち仕切り2がバックウォーター現象の減災に最も役立ち,本流の氾濫も防ぐことができると考えられる.
7.今後の展望
合流部の水位上昇時間を増やしバックウォーター現象の再現性が高い模型を製作する.また,実験4の結果より,仕切りによって本流の氾濫が起こると考えられるため,本流で氾濫が起きないように仕切りを改善する.さらに仕切りを取り付ける以外にも合流部の角度を変更するなどの工夫を試す.
近年増加している河川の氾濫の要因の一つとしてバックウォーター現象というものがある. バックウォーター現象とは, 河川に流れる水流の勢いが増したときに, 支流の水が本流に流れ込めず, 支流の上流で氾濫が起きる現象である(図1).現在は, この対策として主に堤防の拡張が行われているが, 氾濫が起きるたびに堤防の増築を繰り返しており, 根本的な解決に至っていない.そこで,バックウォーター現象が起こる河川をモデル化した上で, 河川の合流部の内部に工夫をし, 氾濫を防ぐ手立てを発見するため研究を行った.
2.事前準備
関東地方を流れる多摩川(本流)と平瀬川(支流)(図2)を参考にした. これらの河川は2019年10月12日, 台風19号の影響でバックウォーター現象による氾濫が起こっている.国土地理院地図を用いて河川の画像解析を行った.
3.実験1
①目的
模型の岸は牛乳パックで製作し, 川底にはプラスチック段ボールを使用した(図3).水の代わりにBB弾を用いた. 本流からのBB弾の流れに影響されて支流のBB弾が詰まり、溢れるかを確かめる.
②結果・考察・課題
支流からBB弾が10粒溢れた. しかし,本流のBB弾が流れ切った後も支流で詰まった銀色のBB弾が流れ始めなかったことから, 本流のBB弾の影響ではなかったと考えられる。模型のガムテープやプラスチック段ボールの表面に凹凸があり, BB弾の流れが妨げられていたと考えられる。
4.実験2
①目的
BB弾の流れが妨げられないよう本流に机を用いた。その模型でバックウォーター現象が発生するかを確認する. BB弾の数, 支流は実験1のまま用い、本流の川幅を縮尺通りにして実験をするとBB弾が均一に流れなかったため本流の川幅を35㎝に狭めた(図4).
②結果・考察・課題
支流からのBB弾が合流部で詰まり本流に流れ込まなかったことで, 支流の上流部でBB弾が溢れた.よって,バックウォーター現象が起こったと考えられたが,同条件下で複数回実験を行ったところ,同じ状況が再現できなかった.原因として,実験をする度に支流の左右の傾きが変わり,BB弾の流れが毎回変化していることや,BB弾が表面に広がり,一層になって流れるために,水位の上昇が再現できていなかったことが考えられる. そこで水を使用することにした.
5.実験3
①目的
水を用いた模型でバックウォーター現象が起こるかを確認する. 実験1で用いた模型を使用した.多量の水を本流に継続的に流すために簡易タンクを製作した(図5). 支流に水と同時に葉を流し,支流の水がどのように流れているかを可視化した.(図6)
②結果・考察・課題
河川の合流部の水位が一時的に上昇し、支流の水と一緒に流した葉が,本流との合流部付近から支流の上流に戻るように動いた様子が見られたことから,バックウォーター現象が発生したことが確認できた.今回の実験で水位が上がった川の状態を再現できたのは数秒間だったため,実際の河川に近づけるためには水位が上がった状態を長時間保つ必要がある.
6.実験4
①目的
水を用いた模型で,支流の水が逆流しない方法を発見する。河川合流部に仕切りをつけて実験3と同じ方法で模型に水を流す.仕切りの付け方は以下の3通り(図7).(支流と平行な角度を0°とし,時計周りを正とする.)
1.長さ7cmの直線型で角度0°のもの
2.長さ7cmの直線型で角度30°のもの
3.長さ21cmで支流側から7cmの箇所で角度をつけたもの
②結果・考察・課題
1.葉の逆流は無かった.本流からの水が仕切りに当たって水位が上昇し溢れた.
2.葉の逆流は無かった.水位の上昇は小さく,溢れた量も少なかった.
3.葉の逆流は無かった.水位の上昇が大きく,溢れた量も多かった.
すべての仕切りが支流での水の逆流を防ぐことができたと考えられる.しかし,仕切り1と仕切り3では,仕切りに当たった水が相当量溢れるという結果になった.合流部で溢れた水の量は仕切り2を設置したときが最も少なかったことから,三つの仕切りのうち仕切り2がバックウォーター現象の減災に最も役立ち,本流の氾濫も防ぐことができると考えられる.
7.今後の展望
合流部の水位上昇時間を増やしバックウォーター現象の再現性が高い模型を製作する.また,実験4の結果より,仕切りによって本流の氾濫が起こると考えられるため,本流で氾濫が起きないように仕切りを改善する.さらに仕切りを取り付ける以外にも合流部の角度を変更するなどの工夫を試す.