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[O08-P67] 高校生による高エネルギー宇宙線探索
キーワード:宇宙線
高校生による高エネルギー宇宙線探索
序論
本実験の最終目標は最高エネルギー宇宙線を捉えることである。最高エネルギー宇宙線とは、宇宙空間を飛び交う粒子である宇宙線の中でも特に、10^19 eV(GZK限界)よりもエネルギーが高く、理論的に存在し得ない宇宙線の総称である。最高エネルギー宇宙線は、高エネルギー宇宙線が大気中の原子核と衝突することで発生する大気シャワーという現象を用いて、テレスコープアレイ実験等で数十回観測されている。[1] しかし一般的な大気シャワーの検出には高価な装置が使われており、高校生が実験に用いることはできない。より安価なCosmic Watchを用いて大気シャワーを検出する仕組みを確立することで高校生でも高エネルギー宇宙線を観測できると考え、本実験を行った。
Cosmic Watch
Cosmic Watchは図1のような検出器で、宇宙線が到来するとシンチレータが発光し、SiPMでその光を変換、AudinoでPCに送信しやすい形に変換するという仕組みである。シンチレータの面積は5 cm×5 cm。
4台測定
・方法
環境放射線と、検出器の横から到来する宇宙線を除去した検出をすることを目的とし、上下にコインシデンスした2台の検出器を2セット用いて(図2)、それらの同時計数頻度の検出器間距離依存性を調べた。大気シャワーは数km単位で変化するため、到来頻度は変化しないはずであると考えた。場所を変えて2回実験を行い、1回目は検出器間距離を0cm、50cmに、二回目は50cm、100cmに設定した。
・解析
同時に到来したとする時間である時間幅(図3)を設定した。誤差はポアソン分布に従うとして評価した。偶然同時計数は図4の式を用いて計算した。
・結果
時間幅を2ms に設定して解析を行った。到来頻度は検出器間距離を大きくしても誤差の範囲内で一致した(図5)。また偶然同時計数頻度を超える到来頻度があった。
・考察
到来頻度が変化せず、また偶然同時計数を超える到来頻度があったことから、大気シャワーを観測している可能性が高いと結論付けた。しかしこの実験では大気シャワーであるという確証は得られなかった。
銅板実験
・方法
大気中の原子核よりも原子番号が大きい銅板を宇宙線が通過すると、大気シャワーに比べ数の多い電磁カスケードが発生すると考えられる。このカスケードを観測できれば、イベント数を確保すればこの測定系で大気シャワーも観測可能であるといえる。銅板を測定系の上部に設置することにより同時計数頻度が増加したならば、このカスケードの影響がこの測定系で見えていることになるため、銅板の有無で到来頻度がどのように変化するか調べた(図6)。
・結果
時間幅は検出器の動作時間である2msに設定して解析を行った。到来頻度は銅板ありの方がなしに比べて有意に大きかった(図7)。
・考察
銅板ありの方がなしに比べ到来頻度が大きいことから、イベント数が確保できればこの測定系で大気シャワーを含む電磁カスケードを測定可能であると考えられる。
4台平面測定
・方法
宇宙線に対する検出器で測定可能な有効面積の増加によりイベント数を増やすことができ、その分大気シャワーを検出しやすくなると考え、Cosmic Watchを平面に4台設置して検出を行った(図8)。実験は検出器間距離を変えて2回行った。はじめに2台ごとの同時計数頻度を調べた。
・結果
検出器間距離が同じであっても、検出器の組み合わせによって到来頻度が有意に変化した(図9)。
・考察
到来頻度が検出器の組み合わせにより変化したことから、この実験では検出器の個体差が見えていると考えられる。そのため今後は、この個体差を均すため検出器の位置関係を変えて再度実験する必要がある。
クォークネット検出器
シンチレータの面積は30 cm×27 cm。シンチレータに宇宙線が到来することで発生するシンチレーション光が、光電子増倍管により増幅され、FFGAにてGPSの情報と併せてデータ整理が行われ、それがPCに記録されるという仕組みである(図10)。
クォークネット検出器を用いた測定
・方法
Cosmic Watchよりも有効面積の大きいクォークネット検出器を用いて検出することでイベント数を確保することを目的とし、図11の測定系で測定を行った。
・結果
到来頻度は検出器間距離が大きくなるに従い有意に減少した(図12)。
・考察
大気シャワーは数km単位でその到来頻度が変化するため、減少傾向は本来見えないはずである。そのため建物の構造等の影響により減少傾向が見えたと考えられる。現在場所を変えて再測定を行っている。
まとめ・展望
4台測定により大気シャワーを検出可能だが、Cosmic Watchではシンチレータの面積が小さいために検出が難しく、ゆえにクォークネット検出器を用いる必要があることが分かった。今後はCosmic Watchで平面4台測定の測定方法、解析方法を確立し、それをクォークネット検出器での測定に反映していく予定である。
参考文献 テレスコープアレイ実験 TA実験史上最高エネルギーの宇宙線を観測 大学院説明会2023 | テレスコープアレイ[TA]実験WEBSITE (u-tokyo.ac.jp)
序論
本実験の最終目標は最高エネルギー宇宙線を捉えることである。最高エネルギー宇宙線とは、宇宙空間を飛び交う粒子である宇宙線の中でも特に、10^19 eV(GZK限界)よりもエネルギーが高く、理論的に存在し得ない宇宙線の総称である。最高エネルギー宇宙線は、高エネルギー宇宙線が大気中の原子核と衝突することで発生する大気シャワーという現象を用いて、テレスコープアレイ実験等で数十回観測されている。[1] しかし一般的な大気シャワーの検出には高価な装置が使われており、高校生が実験に用いることはできない。より安価なCosmic Watchを用いて大気シャワーを検出する仕組みを確立することで高校生でも高エネルギー宇宙線を観測できると考え、本実験を行った。
Cosmic Watch
Cosmic Watchは図1のような検出器で、宇宙線が到来するとシンチレータが発光し、SiPMでその光を変換、AudinoでPCに送信しやすい形に変換するという仕組みである。シンチレータの面積は5 cm×5 cm。
4台測定
・方法
環境放射線と、検出器の横から到来する宇宙線を除去した検出をすることを目的とし、上下にコインシデンスした2台の検出器を2セット用いて(図2)、それらの同時計数頻度の検出器間距離依存性を調べた。大気シャワーは数km単位で変化するため、到来頻度は変化しないはずであると考えた。場所を変えて2回実験を行い、1回目は検出器間距離を0cm、50cmに、二回目は50cm、100cmに設定した。
・解析
同時に到来したとする時間である時間幅(図3)を設定した。誤差はポアソン分布に従うとして評価した。偶然同時計数は図4の式を用いて計算した。
・結果
時間幅を2ms に設定して解析を行った。到来頻度は検出器間距離を大きくしても誤差の範囲内で一致した(図5)。また偶然同時計数頻度を超える到来頻度があった。
・考察
到来頻度が変化せず、また偶然同時計数を超える到来頻度があったことから、大気シャワーを観測している可能性が高いと結論付けた。しかしこの実験では大気シャワーであるという確証は得られなかった。
銅板実験
・方法
大気中の原子核よりも原子番号が大きい銅板を宇宙線が通過すると、大気シャワーに比べ数の多い電磁カスケードが発生すると考えられる。このカスケードを観測できれば、イベント数を確保すればこの測定系で大気シャワーも観測可能であるといえる。銅板を測定系の上部に設置することにより同時計数頻度が増加したならば、このカスケードの影響がこの測定系で見えていることになるため、銅板の有無で到来頻度がどのように変化するか調べた(図6)。
・結果
時間幅は検出器の動作時間である2msに設定して解析を行った。到来頻度は銅板ありの方がなしに比べて有意に大きかった(図7)。
・考察
銅板ありの方がなしに比べ到来頻度が大きいことから、イベント数が確保できればこの測定系で大気シャワーを含む電磁カスケードを測定可能であると考えられる。
4台平面測定
・方法
宇宙線に対する検出器で測定可能な有効面積の増加によりイベント数を増やすことができ、その分大気シャワーを検出しやすくなると考え、Cosmic Watchを平面に4台設置して検出を行った(図8)。実験は検出器間距離を変えて2回行った。はじめに2台ごとの同時計数頻度を調べた。
・結果
検出器間距離が同じであっても、検出器の組み合わせによって到来頻度が有意に変化した(図9)。
・考察
到来頻度が検出器の組み合わせにより変化したことから、この実験では検出器の個体差が見えていると考えられる。そのため今後は、この個体差を均すため検出器の位置関係を変えて再度実験する必要がある。
クォークネット検出器
シンチレータの面積は30 cm×27 cm。シンチレータに宇宙線が到来することで発生するシンチレーション光が、光電子増倍管により増幅され、FFGAにてGPSの情報と併せてデータ整理が行われ、それがPCに記録されるという仕組みである(図10)。
クォークネット検出器を用いた測定
・方法
Cosmic Watchよりも有効面積の大きいクォークネット検出器を用いて検出することでイベント数を確保することを目的とし、図11の測定系で測定を行った。
・結果
到来頻度は検出器間距離が大きくなるに従い有意に減少した(図12)。
・考察
大気シャワーは数km単位でその到来頻度が変化するため、減少傾向は本来見えないはずである。そのため建物の構造等の影響により減少傾向が見えたと考えられる。現在場所を変えて再測定を行っている。
まとめ・展望
4台測定により大気シャワーを検出可能だが、Cosmic Watchではシンチレータの面積が小さいために検出が難しく、ゆえにクォークネット検出器を用いる必要があることが分かった。今後はCosmic Watchで平面4台測定の測定方法、解析方法を確立し、それをクォークネット検出器での測定に反映していく予定である。
参考文献 テレスコープアレイ実験 TA実験史上最高エネルギーの宇宙線を観測 大学院説明会2023 | テレスコープアレイ[TA]実験WEBSITE (u-tokyo.ac.jp)