13:45 〜 15:15
[O08-P84] 海藻の色素を用いた太陽光パネルの発電効率の向上
1. 背景・目的
私は今回海藻に含まれるフィコビリンという色素を用いてペロブスカイト太陽光パネルという太陽光パネルの発電効率を上げるという実験を行った。この実験を行った背景として、海藻が非常に暗い海で光合成を行っているという点に注目し、この光合成の効率の良さは海藻に含まれる色素が理由だと考えた。インターネットの文献などを調べていくうちに、海藻にはフィコビリンという青色の光を強く吸収する色素があることがわかった。そのため、この色素を太陽光発電に活かすことができれば、発電効率が上げられるのではないかと考えた。そこで本研究では、色素による太陽光パネルの発電効率の向上を検証するために、以下の2つの実験 A)海藻の色素抽出と分離 B)太陽光パネルへの海藻の色素の応用 を行った。
A)海藻の色素抽出と分離
2−A. 実験方法
本実験では海藻のサンプルとして海からアオサを取ってきて用いた。このアオサを水分が抜けるまで乾かし、ジエチルエテールに浸してすりこ木で潰して色素を取り出した。本実験ではこの色素の試料からフィコビリンのみを抽出したかったため、この試料をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて色素ごとに分離させた。この際、展開溶媒としてヘキサンとアセトンの混合液を用いた。また分離された色素溶液は分光器を用いて太陽光のどの色を吸収しているかを確認し、吸収スペクトルの光バンドから最も近い色素に分類した。
3−A . 結果
シリカカラムクロマトグラフィーを用いて色素を分離し、青色と緑色の光を強く吸収するフィコビリンに近い溶液をアオサから分離することができた。
4−A. 考察
実験を行う際、最初にアオサをうまく脱水しなければなかなか色素が分離できなかった。おそらく色素が水に溶け出してしまい、シリカゲルでうまく分離できなくなるからだと考えた。
B)太陽光パネルへの海藻の色素の応用
2−B. 実験方法
A)で取り出したフィコビリンを太陽光パネルに塗り、フィコビリンを塗っていないパネルと発電効率を比べた。今回の実験ではペロブスカイト太陽光パネルという電子基板の上に電解液を塗り乾かすという製法で作る太陽光パネルを用いた。太陽光パネルの作り方については参考資料2を用いた。また、太陽光パネルを用い、1) 晴天の日の屋外、2) 曇の日の屋外、3) 室内(LEDライト)の3つの条件下で2つの太陽光パネルの発電効率の違いを調べた。ただし、発電効率における光度以外の影響を低減させるために、温度、湿度、および太陽光パネルの大きさは天候によらず可能な限り揃うように留意した。
3−B. 結果
3つのどのケースにおいてもフィコビリンを含んだ太陽光パネルのほうが20〜40%程度高い発電効率が得られた。特に、晴天の日にはフィコビリンを含んだパネルのほうが140%発電できており、発電効率に大きな差が見られた。一方で、高い発電効率は持続せず、10分程度で低下した。
4−B. 考察
晴天の日が一番発電効率に差が現れた理由として、晴天の日は空気による光の拡散により、青い光が届きやすく、フィコビリンは青い光に対して高い吸収性を示すからだと考えた。
5. まとめ
今回の実験では、アオサから色素を取り出し、フィコビリンを分離した後、その色素を電解液に混ぜ、フィコビリンの塗ってある太陽光パネルを生成した。また、このフィコビリンを含んだ太陽光パネルは電解液のみが塗られている太陽光パネルと比べた際に、晴天の日の外、曇りの日の外、LEDライト喉の条件下においても20%から40%ほど高い発電効率を示した。しかしながら、電解液にフィコビリンなどの異物を混ぜると耐久性が落ちてしまい、発電効率は10分ほどで激しく低下した。そのため、今回の実験では発電効率のみに注目したが、今後は耐久性を上げる実験などに取り組んでいきたい。
6.参考資料
今回植物の色素判別やペロブスカイト太陽光パネル製造のために以下の資料を参考にした。
参考資料1 ― 東邦大学生物分子科学科 色素と吸収スペクトルについてのサイト
参考資料2 ― 若狭信次 著:「手作り太陽電池のすべて 色素増感太陽電池を作ろう」、パワー社、2010年
また実験を行う際にペロブスカイト太陽光パネルの開発者である横浜桐蔭大学の宮坂力教授に多大なる協力をいただきました。
私は今回海藻に含まれるフィコビリンという色素を用いてペロブスカイト太陽光パネルという太陽光パネルの発電効率を上げるという実験を行った。この実験を行った背景として、海藻が非常に暗い海で光合成を行っているという点に注目し、この光合成の効率の良さは海藻に含まれる色素が理由だと考えた。インターネットの文献などを調べていくうちに、海藻にはフィコビリンという青色の光を強く吸収する色素があることがわかった。そのため、この色素を太陽光発電に活かすことができれば、発電効率が上げられるのではないかと考えた。そこで本研究では、色素による太陽光パネルの発電効率の向上を検証するために、以下の2つの実験 A)海藻の色素抽出と分離 B)太陽光パネルへの海藻の色素の応用 を行った。
A)海藻の色素抽出と分離
2−A. 実験方法
本実験では海藻のサンプルとして海からアオサを取ってきて用いた。このアオサを水分が抜けるまで乾かし、ジエチルエテールに浸してすりこ木で潰して色素を取り出した。本実験ではこの色素の試料からフィコビリンのみを抽出したかったため、この試料をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて色素ごとに分離させた。この際、展開溶媒としてヘキサンとアセトンの混合液を用いた。また分離された色素溶液は分光器を用いて太陽光のどの色を吸収しているかを確認し、吸収スペクトルの光バンドから最も近い色素に分類した。
3−A . 結果
シリカカラムクロマトグラフィーを用いて色素を分離し、青色と緑色の光を強く吸収するフィコビリンに近い溶液をアオサから分離することができた。
4−A. 考察
実験を行う際、最初にアオサをうまく脱水しなければなかなか色素が分離できなかった。おそらく色素が水に溶け出してしまい、シリカゲルでうまく分離できなくなるからだと考えた。
B)太陽光パネルへの海藻の色素の応用
2−B. 実験方法
A)で取り出したフィコビリンを太陽光パネルに塗り、フィコビリンを塗っていないパネルと発電効率を比べた。今回の実験ではペロブスカイト太陽光パネルという電子基板の上に電解液を塗り乾かすという製法で作る太陽光パネルを用いた。太陽光パネルの作り方については参考資料2を用いた。また、太陽光パネルを用い、1) 晴天の日の屋外、2) 曇の日の屋外、3) 室内(LEDライト)の3つの条件下で2つの太陽光パネルの発電効率の違いを調べた。ただし、発電効率における光度以外の影響を低減させるために、温度、湿度、および太陽光パネルの大きさは天候によらず可能な限り揃うように留意した。
3−B. 結果
3つのどのケースにおいてもフィコビリンを含んだ太陽光パネルのほうが20〜40%程度高い発電効率が得られた。特に、晴天の日にはフィコビリンを含んだパネルのほうが140%発電できており、発電効率に大きな差が見られた。一方で、高い発電効率は持続せず、10分程度で低下した。
4−B. 考察
晴天の日が一番発電効率に差が現れた理由として、晴天の日は空気による光の拡散により、青い光が届きやすく、フィコビリンは青い光に対して高い吸収性を示すからだと考えた。
5. まとめ
今回の実験では、アオサから色素を取り出し、フィコビリンを分離した後、その色素を電解液に混ぜ、フィコビリンの塗ってある太陽光パネルを生成した。また、このフィコビリンを含んだ太陽光パネルは電解液のみが塗られている太陽光パネルと比べた際に、晴天の日の外、曇りの日の外、LEDライト喉の条件下においても20%から40%ほど高い発電効率を示した。しかしながら、電解液にフィコビリンなどの異物を混ぜると耐久性が落ちてしまい、発電効率は10分ほどで激しく低下した。そのため、今回の実験では発電効率のみに注目したが、今後は耐久性を上げる実験などに取り組んでいきたい。
6.参考資料
今回植物の色素判別やペロブスカイト太陽光パネル製造のために以下の資料を参考にした。
参考資料1 ― 東邦大学生物分子科学科 色素と吸収スペクトルについてのサイト
参考資料2 ― 若狭信次 著:「手作り太陽電池のすべて 色素増感太陽電池を作ろう」、パワー社、2010年
また実験を行う際にペロブスカイト太陽光パネルの開発者である横浜桐蔭大学の宮坂力教授に多大なる協力をいただきました。