日本地球惑星科学連合2024年大会

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[O-08] 高校生ポスター発表

2024年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球惑星科学系 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(文部科学省)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O08-P83] 大島町における観光客に向けた土砂災害ハザードマップの検討

*久我 佳乃子1、*秋田 彩貴1、*南 萌々菜1、*熊﨑 あずさ1 (1.東京都立三鷹中等教育学校)

キーワード:土砂災害、ハザードマップ、伊豆大島

Ⅰ.研究背景
2023年12月25日から26日にかけて学校主催の伊豆大島ジオパークでのフィールドワークに参加した。その事後学習の際に、初めて訪れた観光客目線でハザードマップを拝見した際にどこの避難所に行くべきなのか、どこの場所が危険なのかということが記載されておらず、情報が不足していると考えた。そこで私たちは初めて大島に訪れた観光客にもわかりやすく見やすい地図を作成したいと考え、調査を行うことにした。
研究方法としては、大島町の公式Webページに掲載されている観光地と土砂災害時の避難所をそれぞれ地理院地図にマッピングし、それぞれ観光地から一番近い避難所をGoogleマップの経路検索を用いて時間と距離、また、ハザードマップポータルサイトの「重ねるハザードマップ」より引用した土砂災害の危険がある地域から判断こととした。
Ⅱ. 研究方法
大島町における土砂災害に対する避難所、観光地、災害の危険がある区域などを傾斜量図に重ねてハザードマップを作成した。(図1)一般社団法人・危機管理促進協会(2021)は、「子どもや高齢者が無理なく徒歩で移動できる距離は一般的に2km程度までと見積もられている」としている。大島町は東京都23区と比べて傾斜量が大きい地域が多いため避難する際にはより時間がかかる可能性が高いと考えた。そこで最寄りの避難所まで1.5km以上ある観光地をリストアップした。(表1)また、各観光地から最寄りの避難所までの移動距離をGoogle mapにより算出した。さらに実際に大島町にフィールドワークに訪れて実際に避難経路を歩いて調査を行った。
Ⅲ.結果
避難所が遠い観光地には調べた22の観光地のうち11件が当てはまっていた。さらに、「重ねるハザードマップ」において示されている土石流危険渓流、急斜面の崩壊や土石流のリスクがある地域に含まれている避難所が遠い観光地のうち、地層切断面、日の出浜海水浴場、秋の浜海水浴場、火山博物館、椿花ガーデン、都立大島公園の6件が当てはまっていた。よって、これらの観光地に行く際は事前に観光客に知らせておく必要があると考えた。また、2013年、台風26号による土砂災害が起きた地域を大島町内の他の地域と比べると急斜面の崩壊や土石流のリスクにおいて大きな差はないことが分かった。
調査より、大島町にある観光地の約半数は最寄りの避難所まで1.5km以上あることが分かった。このことから、土砂災害が発生した際には避難が困難になる可能性が高い観光地が多く存在することが分かる。また、2013年に土砂災害が起きた地域と同じ土石流等の被害を受ける恐れがある場所も多く存在することが分かった。特に危険性が高いと考えられるのは大島町元町に位置する火山博物館や椿花ガーデンで、土砂災害が起きる可能性が高い上に避難所までの最短距離も1.8㎞、2㎞と遠くなっている。
Ⅳ.考察
島民だけでなく観光客も含めて、島内全員が素早く避難できるように、避難する際の助けとして、避難経路、倒れて道を塞ぐ可能性のあるブロック塀の場所、狭く多くの人が通ることが難しい道、各観光地に訪れる観光客の人数から予想される人の動きなどが記載されたハザードマップを作成した。
また、大島町を訪れる観光客は地元住民よりも土地勘がなく頼れる人もいない場合が多いため、近くの避難所やそこまでの経路を事前に理解し、訪れる観光地の土砂災害の危険性と、最寄りの避難所の確認をしておくべきだと考える。しかし、全ての観光客が自主的に観光前に避難所と避難経路を確認することは難しく、現実的ではない。そのため、まずはより多くの観光客に避難所及び避難経路を目にしてもらうための取り組みが求められる。例として、ターミナルや船内、島内の観光地内での大島町の土砂災害ハザードマップの掲載、土砂災害ハザードマップのデータ化が挙げられる。今後は、これらの実現にむけて調査を行っていきたい。