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[O08-P85] 多摩川周辺における砂利採取と砂利穴
キーワード:砂利穴、多摩川、液状化
多摩川周辺における砂利採取と砂利穴
Gravel extraction and gravel pits around the Tama River
*大石 和幹¹、*外山椋太¹
*KAZUKI OISHI¹,*RYOTA TOYAMA¹
1.東京都立立川高等学校
1.Tokyo Metropolitan Tachikawa High School
はじめに
地学の授業で多摩川の「砂利穴」と呼ばれる砂利採取地の存在を知り興味を持った。多摩川の砂利は明治時代に都心の建物や道路に使用され河床が低下して1930年代に採取が禁止された。そこで陸砂利に目が向けられ、流域で砂利穴が数多く掘られたが、埋め立て時にごみや廃棄物も入れられ公害問題も起きた。私達は地震時に地盤が軟弱で危険ではないかと考え調査したところ、東日本大震災の際に茨城県の砂利採取埋立地で液状化した被害を知った。埋める際、ゴミなどを埋めた箇所があることを知り、埋められた土地が周りの土地に比べて災害時に危険なのではないかと考え、研究を始めた。
方法:文献調査
・砂利採取と砂利穴について
江戸時代から行われ、明治時代には機械化することで本格化した。しかし、多摩川での砂利採取は大量採掘による河床面の低下のため、徐々に採取が禁止され、全面禁止となった。多摩川流域は多摩川によって形成された土地であり掘れば砂利を取ることができるため、新たな砂利採取場として陸砂利に目が向けられるようになった。こうして掘られた穴が砂利穴である。土地不足により砂利穴は次第に埋められ、その後埋められた土地に公共施設や運動場、工場や住宅などが建設された。
・砂利穴の埋め立てについて
文献や狛江市、府中市、稲城市HPの調査、顧問の地元の親類からの伝聞等から、沖積低地(田があったところや旧河川)の砂利穴の状況やゴミの埋め立てがあったことを知った。
また、羽村・瑞穂地区では、段丘面で陸砂利をとるための砂利穴ができ、埋め立て地に焼却不適ゴミ、テレビ・冷蔵庫・洗濯機などの粗大ゴミ、廃化学薬品に至るまで様々なゴミが廃棄され公害が発生した。そのため昭和51年4月、周辺住民および羽村町、瑞穂町は廃棄物の投棄差し止めを求めて、東京地方裁判所に申し立てを行った。
・茨城県の砂利採取場跡地における液状化
2011年の東日本大震災時に茨城県内陸部で発生した液状化について調べた研究では、鹿嶋市・神栖市における液状化発生域の約45%は砂利採取場跡地で発生したことが確認できた。(図1)
方法:空中写真と古地図からの調査 フィールドワークの事例
国土地理院の年代別航空写真を比較し、砂利穴跡地を複数個所見つけることができた。
地点1 府中市5丁目 図2a、b
ホームセンターと倉庫が現在建っており、跡地が周囲に比べて一段下がったところにあることが確認できる(図3)。また治水地形分類図からも埋立地だと読み取ることが出来た。(図4,黄色は埋立地) 。さらに、「東京の地盤 (GIS版) 」を用いてN値の比較を行ったところ、砂利穴跡地内部A点ではN値が1~9の低い値を示しているのに対して外部B点では20~50の高い値を示していた。柱状図では地下約8mまでが表土で構成されており、この深さは跡地外部の礫層の深さとほとんど一致することが確認でき、砂利採取の痕跡であると考えられる。(図5,6,7)
地点2 川崎市高津区溝口5丁目 図8a、b
現在砂利穴跡地は埋め立てられており、配送業者の建物が建っている。砂利穴跡地外部のボーリング調査結果について確認することができず、跡地内部と外部との比較が出来なかった。しかし、跡地内部の結果では約9mの埋め土を確認することが、これの下の層が礫層であることから埋め土層が以前は礫層であったと考えることができる。また、N値についても埋め土層の部分が一桁台の低い値を示していることも確認できた。(図9)
その他にも複数個所砂利穴跡地を見つけることができた。
考察
文献調査で砂利穴の杜撰な埋め立てに関する事実と茨城県での砂利採取場跡地における液状化現象の発生について確認できた。砂利穴は埋め戻された後に宅地や公共施設等になっており、昔の痕跡が残されていないものが多い。航空写真からのみの特定になってしまう上、行政等も当時の砂利穴の所在地が私有地であったがために、詳細な砂利穴所在地を把握できていないことが問題である。さらに、地盤調査においても砂利穴跡地内外でn値に違いがみられたため、災害時の液状化発生の危険性が高いと考えられる。この他の他にも幾つか発見しておりさらに調査を進める。
参考文献
・新多摩川誌 河川環境管理財団発行
・『 2011 年東北地方太平洋沖地震による茨城県神栖市,鹿嶋市の 液状化発生域と砂利採取場分布の変遷との関係 』青山雅史
・国土地理院地図
・稲城市、狛江市、調布市ホームページ
・国立研究開発法人 防災科学技術研究所 自然災害情報室
・東京都建設局
Gravel extraction and gravel pits around the Tama River
*大石 和幹¹、*外山椋太¹
*KAZUKI OISHI¹,*RYOTA TOYAMA¹
1.東京都立立川高等学校
1.Tokyo Metropolitan Tachikawa High School
はじめに
地学の授業で多摩川の「砂利穴」と呼ばれる砂利採取地の存在を知り興味を持った。多摩川の砂利は明治時代に都心の建物や道路に使用され河床が低下して1930年代に採取が禁止された。そこで陸砂利に目が向けられ、流域で砂利穴が数多く掘られたが、埋め立て時にごみや廃棄物も入れられ公害問題も起きた。私達は地震時に地盤が軟弱で危険ではないかと考え調査したところ、東日本大震災の際に茨城県の砂利採取埋立地で液状化した被害を知った。埋める際、ゴミなどを埋めた箇所があることを知り、埋められた土地が周りの土地に比べて災害時に危険なのではないかと考え、研究を始めた。
方法:文献調査
・砂利採取と砂利穴について
江戸時代から行われ、明治時代には機械化することで本格化した。しかし、多摩川での砂利採取は大量採掘による河床面の低下のため、徐々に採取が禁止され、全面禁止となった。多摩川流域は多摩川によって形成された土地であり掘れば砂利を取ることができるため、新たな砂利採取場として陸砂利に目が向けられるようになった。こうして掘られた穴が砂利穴である。土地不足により砂利穴は次第に埋められ、その後埋められた土地に公共施設や運動場、工場や住宅などが建設された。
・砂利穴の埋め立てについて
文献や狛江市、府中市、稲城市HPの調査、顧問の地元の親類からの伝聞等から、沖積低地(田があったところや旧河川)の砂利穴の状況やゴミの埋め立てがあったことを知った。
また、羽村・瑞穂地区では、段丘面で陸砂利をとるための砂利穴ができ、埋め立て地に焼却不適ゴミ、テレビ・冷蔵庫・洗濯機などの粗大ゴミ、廃化学薬品に至るまで様々なゴミが廃棄され公害が発生した。そのため昭和51年4月、周辺住民および羽村町、瑞穂町は廃棄物の投棄差し止めを求めて、東京地方裁判所に申し立てを行った。
・茨城県の砂利採取場跡地における液状化
2011年の東日本大震災時に茨城県内陸部で発生した液状化について調べた研究では、鹿嶋市・神栖市における液状化発生域の約45%は砂利採取場跡地で発生したことが確認できた。(図1)
方法:空中写真と古地図からの調査 フィールドワークの事例
国土地理院の年代別航空写真を比較し、砂利穴跡地を複数個所見つけることができた。
地点1 府中市5丁目 図2a、b
ホームセンターと倉庫が現在建っており、跡地が周囲に比べて一段下がったところにあることが確認できる(図3)。また治水地形分類図からも埋立地だと読み取ることが出来た。(図4,黄色は埋立地) 。さらに、「東京の地盤 (GIS版) 」を用いてN値の比較を行ったところ、砂利穴跡地内部A点ではN値が1~9の低い値を示しているのに対して外部B点では20~50の高い値を示していた。柱状図では地下約8mまでが表土で構成されており、この深さは跡地外部の礫層の深さとほとんど一致することが確認でき、砂利採取の痕跡であると考えられる。(図5,6,7)
地点2 川崎市高津区溝口5丁目 図8a、b
現在砂利穴跡地は埋め立てられており、配送業者の建物が建っている。砂利穴跡地外部のボーリング調査結果について確認することができず、跡地内部と外部との比較が出来なかった。しかし、跡地内部の結果では約9mの埋め土を確認することが、これの下の層が礫層であることから埋め土層が以前は礫層であったと考えることができる。また、N値についても埋め土層の部分が一桁台の低い値を示していることも確認できた。(図9)
その他にも複数個所砂利穴跡地を見つけることができた。
考察
文献調査で砂利穴の杜撰な埋め立てに関する事実と茨城県での砂利採取場跡地における液状化現象の発生について確認できた。砂利穴は埋め戻された後に宅地や公共施設等になっており、昔の痕跡が残されていないものが多い。航空写真からのみの特定になってしまう上、行政等も当時の砂利穴の所在地が私有地であったがために、詳細な砂利穴所在地を把握できていないことが問題である。さらに、地盤調査においても砂利穴跡地内外でn値に違いがみられたため、災害時の液状化発生の危険性が高いと考えられる。この他の他にも幾つか発見しておりさらに調査を進める。
参考文献
・新多摩川誌 河川環境管理財団発行
・『 2011 年東北地方太平洋沖地震による茨城県神栖市,鹿嶋市の 液状化発生域と砂利採取場分布の変遷との関係 』青山雅史
・国土地理院地図
・稲城市、狛江市、調布市ホームページ
・国立研究開発法人 防災科学技術研究所 自然災害情報室
・東京都建設局