13:45 〜 15:15
[O08-P86] 視程観測の自動化と気象観測システムの構築
キーワード:気象、視程、視程観測、深層学習
視程観測の自動化と気象観測システムの構築
Automatic observation of Visibility and Development of Meteorological observation system
*安原 知廣1、*山野辺 縁1、*島貫 いく1
*CHIHIRO YASUHARA1, *YUKARI YAMANOBE1, *IKU SHIMANUKI1
1. 東京都立立川高等学校
1. Tokyo Metropolitan Tachikawa High School
研究背景・目的
視程とは、観測場所から識別することのできる距離の程度を表す気象用語で、大気汚染等の指標となる。本校天文気象部は79年前から気象観測を始めた。2019年に先輩が過去データを分析し、悪視程と大気汚染や気象との関係を明らかにした。それをきっかけに目視による定時観測を再開した。2020年からは視程の自動観測装置とモニタリングシステムの開発に取り組んだ。本研究では、自動視程観測システムの完成を目的とし、新たな深層学習を用いた視程自動判別プログラムの作成に取り組んだ。また視覚的に操作が可能な、気象情報の公開のためのアーカイブツールを開発した。さらに、一部未調査だった1980年代から近年の視程の分析に取り組み、90年代の一時的な視程の低下や近年の良視程について考察した。
新たな機械学習を用いた自動視程判別
先行研究で作成したモデルでは自動観測装置にて撮影した画像を手作業で切り抜きする必要があったため、本研究ではYOLOv8を用いた新たな機械学習モデルですべての視程目標物の同時判別を行った。しかし、システムの特性上、全体の画像に対し面積が小さい目標物はあまり良く判別できないことが判明した。そこで画像のずれを自動修正するシステムを完成させ、より精度が高いモデルを小さい目標物に対して作成した。スカイツリー(36km)と新宿ビル群(25km)のCNNモデルは先行研究にて作成できていたため、本研究では三鷹のビル(13km)、西国分寺のマンション、一橋大学の建物についてモデルを作成した。手法は先行研究同様、3000枚の教師データを利用してVGG16の転移学習を行った。作成したモデルを用いて図3のような視程自動判別のシステムを構築した。結果、最大で88.6%の精度で判別することができた。今後は誤った判別をおこなってしまったものについてgrad-camなどを使用してモデルの分析、精度向上に努める。
過去観測記録の公開活用と一元化
近年、手書きの観測用紙は長期保存等を理由に劣化し始め、記録の喪失が懸念されている。そこで視覚的に操作可能なアーカイブツールの作成に取り組んだ。過去の観測用紙を画像として保存し、主にVue.jsとFastAPIとMySQLを利用した年月指定して資料検索を行うwebアプリを作成した。さらに、蓄積した気象データを日時指定して表及びグラフを描画する機能を取り入れた。また、観測データの一元化を目指しリアルタイムモニタリングシステム(2021)の機能を追加した。加えて、視程の自動判別プログラムを利用した半リアルタイムの視程判別結果表示が可能になった。
視程の変動についての考察
視程の経年変化を可視化するため、1980年から2023年までの本校(立川)の記録と気象庁(東京)の数値記録を入力し、グラフを作成して比較した。(図6)1980年代には70年代後半の回復状態が継続していたが、気象庁の記録から90年代に視程の低下が読み取れる。低視程のピークがディーゼル車の保有台数のピークと概ね一致し、2000年以降の規制により減少していることから、ディーゼル車の排気ガスの影響が大きいのではないかと推測した。近年の視程は良好で、低視程の日のほとんどは天候が要因といえる。但し50km以上見える極端に視程が良い日は減少しており、原因を探りたい。
まとめ
本研究では一度に複数の視程目標物の見えるか見えないかを判別できるモデルを作成し、検証途中ではあるが高い精度で検出できることが分かった。また、過去の観測用紙をデジタル化し,SQLの知識がない研究員や部員でもノーコードで視覚的に閲覧することができるアーカイブツールを作成した。また、視程の経年変化から90年代の一時的な視程の低下や近年の良視程について考察した。
今後はさらなる判別精度の向上、またwebをレスポンシブデザインに統一した後データの一般公開に取り組む。さらに、観測を継続して視程に変化を与える要因を探り、最終的に2024年立川高校気象観測システムの完成を目指す。
Automatic observation of Visibility and Development of Meteorological observation system
*安原 知廣1、*山野辺 縁1、*島貫 いく1
*CHIHIRO YASUHARA1, *YUKARI YAMANOBE1, *IKU SHIMANUKI1
1. 東京都立立川高等学校
1. Tokyo Metropolitan Tachikawa High School
研究背景・目的
視程とは、観測場所から識別することのできる距離の程度を表す気象用語で、大気汚染等の指標となる。本校天文気象部は79年前から気象観測を始めた。2019年に先輩が過去データを分析し、悪視程と大気汚染や気象との関係を明らかにした。それをきっかけに目視による定時観測を再開した。2020年からは視程の自動観測装置とモニタリングシステムの開発に取り組んだ。本研究では、自動視程観測システムの完成を目的とし、新たな深層学習を用いた視程自動判別プログラムの作成に取り組んだ。また視覚的に操作が可能な、気象情報の公開のためのアーカイブツールを開発した。さらに、一部未調査だった1980年代から近年の視程の分析に取り組み、90年代の一時的な視程の低下や近年の良視程について考察した。
新たな機械学習を用いた自動視程判別
先行研究で作成したモデルでは自動観測装置にて撮影した画像を手作業で切り抜きする必要があったため、本研究ではYOLOv8を用いた新たな機械学習モデルですべての視程目標物の同時判別を行った。しかし、システムの特性上、全体の画像に対し面積が小さい目標物はあまり良く判別できないことが判明した。そこで画像のずれを自動修正するシステムを完成させ、より精度が高いモデルを小さい目標物に対して作成した。スカイツリー(36km)と新宿ビル群(25km)のCNNモデルは先行研究にて作成できていたため、本研究では三鷹のビル(13km)、西国分寺のマンション、一橋大学の建物についてモデルを作成した。手法は先行研究同様、3000枚の教師データを利用してVGG16の転移学習を行った。作成したモデルを用いて図3のような視程自動判別のシステムを構築した。結果、最大で88.6%の精度で判別することができた。今後は誤った判別をおこなってしまったものについてgrad-camなどを使用してモデルの分析、精度向上に努める。
過去観測記録の公開活用と一元化
近年、手書きの観測用紙は長期保存等を理由に劣化し始め、記録の喪失が懸念されている。そこで視覚的に操作可能なアーカイブツールの作成に取り組んだ。過去の観測用紙を画像として保存し、主にVue.jsとFastAPIとMySQLを利用した年月指定して資料検索を行うwebアプリを作成した。さらに、蓄積した気象データを日時指定して表及びグラフを描画する機能を取り入れた。また、観測データの一元化を目指しリアルタイムモニタリングシステム(2021)の機能を追加した。加えて、視程の自動判別プログラムを利用した半リアルタイムの視程判別結果表示が可能になった。
視程の変動についての考察
視程の経年変化を可視化するため、1980年から2023年までの本校(立川)の記録と気象庁(東京)の数値記録を入力し、グラフを作成して比較した。(図6)1980年代には70年代後半の回復状態が継続していたが、気象庁の記録から90年代に視程の低下が読み取れる。低視程のピークがディーゼル車の保有台数のピークと概ね一致し、2000年以降の規制により減少していることから、ディーゼル車の排気ガスの影響が大きいのではないかと推測した。近年の視程は良好で、低視程の日のほとんどは天候が要因といえる。但し50km以上見える極端に視程が良い日は減少しており、原因を探りたい。
まとめ
本研究では一度に複数の視程目標物の見えるか見えないかを判別できるモデルを作成し、検証途中ではあるが高い精度で検出できることが分かった。また、過去の観測用紙をデジタル化し,SQLの知識がない研究員や部員でもノーコードで視覚的に閲覧することができるアーカイブツールを作成した。また、視程の経年変化から90年代の一時的な視程の低下や近年の良視程について考察した。
今後はさらなる判別精度の向上、またwebをレスポンシブデザインに統一した後データの一般公開に取り組む。さらに、観測を継続して視程に変化を与える要因を探り、最終的に2024年立川高校気象観測システムの完成を目指す。