日本地球惑星科学連合2024年大会

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[O-08] 高校生ポスター発表

2024年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球惑星科学系 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(文部科学省)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O08-P87] 光害の可視化~高輝度ランプの影響を探る~

*中村 桃子1、*古都 紗妃1、*森田 幸香1 (1.東京都立立川高等学校 天文気象部)

キーワード:光害

研究背景・目的
 日々の天体観測から光害の夜空の明るさへの影響を感じ、2021年より本部先輩がデジタル一眼レフカメラを用いた自動観測による夜空の分析を開始した。本研究では観測を継続し、先行研究から増えた画像とデータを用いて比較を行った。また、水平方向を分析した先行研究に加えてSQM-LとHQカメラを用いた天頂方向の調査・分析を行った。
研究手法
本研究では(1)~(3)の3機器で観測を行い、得られたデータを元に夜空の明るさを可視化した。
(1)デジタル一眼レフカメラの自動撮影装置による観測
 Raspberry Piで制御したカメラ2台を都心方面と八王子方面に向けて設置し、毎日18時~5時の1時間ごとに自動撮影した(2021年1月~2024年4月)。得られたデータを用いて、以下の観点でグラフを作成し、分析した。
(2)SQM-Lを用いた全天と天頂の観測
①全天の変化
本校屋上と本部の合宿先である長野県入笠山(以下、入笠山)にて18時から翌朝6時の1時間ごとに8方位、仰角10度ずつ光度を計測し、Pythonでグラフを作成、分析した。
②天頂の変化
①で観測した値のうち仰角90度の値のみを抽出してグラフを作成し、分析した。
(3)HQカメラを用いた天頂の観測
 より安価で広範囲の撮影が可能なRaspberry Pi専用のカメラであるHQカメラを天頂方向に向け17時から6時までの5分ごとに定時撮影を行った。撮影した画像をグレースケール化してその輝度値を平均して求め、グラフを作成し分析した(2023年10月~2024年4月)。
結果と考察
(1)デジタル一眼レフカメラの自動撮影装置による観測
①画像処理ソフト「ImageJ」による可視化
 雲による影響を調べるため、画像処理ソフト「Image J」を用いて1画素ごとの明るさに基づき着色・三次元化したところ、曇りの日は遠景の低い雲の部分が明るくなっていた。ここから雲による街明かりの散乱の影響が考えられた(図1)。
②都心方面の年間の明るさの変化
 都心方面の2023年の明るさの変化をPythonでグラフを作成し、昨年度の八王子方面の年間の明るさの変化のグラフと比較したところ、変化の傾向は同じであり、都心方面の方が八王子方面よりも明るいということが分かった(図2)。
(2)SQM-Lを用いた全天と天頂の観測
①全天の変化
 本校屋上と入笠山でのデータを比較したところ、立川は入笠山より著しく明るいことが分かった(図3)。
②天頂の変化
 日の入り日の出時刻の値と時刻による変化の傾向は同じこと、しかし薄明終了後の20~3時は立川が入笠山より著しく明るい事が分かった(図4)。
(3)HQカメラを用いた天頂の観測
①1日の天頂方向の明るさの推移
快晴四夜の明るさの推移を折れ線グラフにし、大幅に値が減少した時刻と校庭のメタルハライドランプの消灯時間が一致し、天頂方向はナイター照明の影響を受けることが分かった(図5)。
②抽出した天頂画像500ピクセル四方の明るさの散布図
画像内の雲による直接的な影響を除くため、画像の中心から500ピクセル四方部分をトリミングして取り出し雲が写っていない画像のみを選別し、以下の五つに分類した。快晴は元画像内に雲が写っていない状態、雲/月ありは元画像内に雲/月が写っている状態とする。
⑴ナイター点灯、快晴 ⑵ナイター点灯、雲あり ⑶ナイター消灯、快晴 ⑷ナイター消灯、雲あり ⑸ナイター消灯、月あり
これらの明るさの値をグラフ化したところ、ナイター照明、周辺の雲、月は空自体の明るさにも影響を与えることが分かった。
まとめと今後の展望
一眼レフカメラによる調査では、遠景の雲による街明かりの反射の様子や都心・八王子方面の夜空の明るさの差異を可視化した。またSQM-Lでは入笠山は立川より夜空が暗く、HQカメラでは天頂においてもナイターが夜空の明るさに影響することが分かった。夜間の夜空の明るさ本研究で開始した天頂の明るさの調査について、天候、季節などの条件による違いを分析するために、上記機器による撮影を継続し、比較する。また、LED、HIDなどの街明かりのより詳細な分析を行う。
参考文献
1) 本部、平岡七海他『デジタル一眼レフカメラとSQMを用いて夜空の明るさの変化を探る』、2022、天文学会 2)本部、大磯佳苗他『デジタル一眼レフカメラを用いて夜空の明るさの変化を探る』、2021、天文学会 3) 本部、浜島悠哉他『視程観測機“Clear Sky”』、2019、高校高専気象観測機器コンテスト4)本部、平岡七海他『夜空撮影装置「マチノアカリ」で探る東京の光害~街明りが夜空の及ぼす影響~』、2022、高校高専気象観測機器コンテスト5) 小野間史樹、デジカメ星空診断ハンドブック、星空公団、6)夜空の明るさを測ってみよう、環境省 他