13:45 〜 15:15
[O08-P88] ビデオと電波を用いた機械学習による流星のリアルタイム検知システムの構築
キーワード:流星、機械学習
研究の背景と目的
本校天文気象部では、1953年からペルセウス座流星群の眼視観測を続けており、現在はふたご座流星群の観測も行っている。しかし、徹夜観測を増やすのは負担が大きいことからビデオと電波を用いた自動観測システムを構築しようと考えた。
手法
ビデオ観測と電波観測の2つの手法を用い、流星の自動観測システムを開発した。ビデオ観測は赤外線防犯カメラであるATOMCam2を5台用いて観測装置を製作した。電波観測は八木アンテナを設置し、以前から使われているHRO電波を受信した。また、リアルタイムで機械学習により流星検出するプログラムをそれぞれ開発した。
ビデオ観測装置の製作と検出プログラムの開発
防犯カメラを4方位と天頂方向に向けて5台設置し、全天を網羅する形で合成するプログラムを開発した。
検知プログラムでは、保存される1分動画を12分割した5秒分の動画を生成し、その比較明合成と加算平均合成の差分画像を利用する。Ver1では、ノイズを除外した白ピクセル数を適切な閾値を設定することで求め、白ピクセル数の急増により流星の検知を行った。しかし、適合率、再現率ともに高くなかったため、YOLOv9で機械学習により流星検出を行うVer2を開発した。流星が含まれる画像200枚からデータセットを自作し、機械学習を行った。そして、人工衛星の誤検知を避けるため、1分間に3枚以上で検知した場合、それらの画像を除外するようにした。その結果、流星検知に成功し、適合率、再現率ともに改善された。特に再現率は大幅に改善された。このことから、流星の取りこぼしが以前よりも減ったと言える。しかし、このプログラムでは1分間に複数の流星があった場合、取りこぼしてしまうことがある。このことから、現在人工衛星の有無を1分と5秒の比較明合成画像のIoUで判断する手法を開発している。
さらに、流星の経路特定プログラムの開発を手掛けた。まず、画像からWCSを記録するAstrometry.netを用い流星の発行点と消失点の赤経赤緯を求めた。その赤経赤緯から天文年鑑の公式を用い発行点と消失点の方位角と高度を求めた。今後は他地点の観測データから、流星の実経路を特定したい。
電波観測装置の製作と検出プログラムの開発
電波観測では、流星観測用に送信されている53.755MHzの電波を使用する。
フリーソフトのMROFFTから得られたエコー画像から流星を自動検知するプログラムの開発を行った。物体検出を行うYOLOv8を用いて流星を判別するモデルを開発した。画像から目的の周波数を切り出し、物体検出によって流星を判別して流星が発生した時刻を取得する。実際にモデルを作り判別に成功した。
リアルタイム検知システムの開発
4と5で紹介した検知プログラムをリアルタイムで実行するプログラムを開発し、流星を検出した場合NASに観測時刻と検出した流星の画像を保存するようにした。また、ビデオ観測では、図1のように流星出現をリアルタイムでコミュニケーションアプリのDiscordに通知することに成功した。
ビデオ、電波、眼視の3手法による2023年オリオン座流星群の観測結果と考察
2023年オリオン座流星群ではビデオ、電波、眼視の3つを比較した。ビデオ観測と電波観測は目視で確認した結果となっている。図2より1時に晴れてからビデオが極端に多くなっていることがわかる。ビデオが眼視よりも多くなった理由は赤外線防犯カメラで、眼視で確認が難しい等級の低い流星を捉えたからだと考えられる。また、電波観測では想定していたより検知数が少なくなった。これは、電波観測の検知精度自体が低いことやオリオン座流星群では対地速度の速い流星が多いことが要因だと考えられる。
まとめと今後の展望
ビデオ・電波ともに観測装置を製作し、機械学習を用いた流星検知プログラムの開発を進めた。ビデオ観測は流星のリアルタイム検知、5台分の動画の合成に成功した。観測結果から、ビデオ観測は電波・眼視よりも数多くの流星をとらえていることがわかった。今後は、電波観測のリアルタイムでの流星の検出システムの完成を目指す。また、電波観測の観測精度を改善する。そして、ビデオの流星経路と電波の反射領域から同一流星の特定を行う。
参考文献
・国立天文台「流星群」https://www.nao.ac.jp/astro/basic/meteor-shower.html
・ATOM「ATOMCam2」https://www.atomtech.co.jp/products/atomcam2
・mnakada「atomcam_tools」https://github.com/mnakada/atomcam_tools
・原口美悠(2021)『流星自動検出パイプラインの構築』「岡山大学地球および惑星大気科学研究室 卒業論文」
・長谷川均(2024)『ATOMCamで検出された流星検出と位置測定』「流星電波観測報告会2024」
・WongKinYiu「yolov9」 https://github.com/WongKinYiu/yolov9
・Astrometry.net https://nova.astrometry.net
・天文年鑑編集委員会(2023)『天文年鑑 2024年版』誠文堂新光社
・流星電波観測国際プロジェクトhttps://www.amro-net.jp/
・流星電波観測集計センター https://www5f.biglobe.ne.jp/~hro/
本校天文気象部では、1953年からペルセウス座流星群の眼視観測を続けており、現在はふたご座流星群の観測も行っている。しかし、徹夜観測を増やすのは負担が大きいことからビデオと電波を用いた自動観測システムを構築しようと考えた。
手法
ビデオ観測と電波観測の2つの手法を用い、流星の自動観測システムを開発した。ビデオ観測は赤外線防犯カメラであるATOMCam2を5台用いて観測装置を製作した。電波観測は八木アンテナを設置し、以前から使われているHRO電波を受信した。また、リアルタイムで機械学習により流星検出するプログラムをそれぞれ開発した。
ビデオ観測装置の製作と検出プログラムの開発
防犯カメラを4方位と天頂方向に向けて5台設置し、全天を網羅する形で合成するプログラムを開発した。
検知プログラムでは、保存される1分動画を12分割した5秒分の動画を生成し、その比較明合成と加算平均合成の差分画像を利用する。Ver1では、ノイズを除外した白ピクセル数を適切な閾値を設定することで求め、白ピクセル数の急増により流星の検知を行った。しかし、適合率、再現率ともに高くなかったため、YOLOv9で機械学習により流星検出を行うVer2を開発した。流星が含まれる画像200枚からデータセットを自作し、機械学習を行った。そして、人工衛星の誤検知を避けるため、1分間に3枚以上で検知した場合、それらの画像を除外するようにした。その結果、流星検知に成功し、適合率、再現率ともに改善された。特に再現率は大幅に改善された。このことから、流星の取りこぼしが以前よりも減ったと言える。しかし、このプログラムでは1分間に複数の流星があった場合、取りこぼしてしまうことがある。このことから、現在人工衛星の有無を1分と5秒の比較明合成画像のIoUで判断する手法を開発している。
さらに、流星の経路特定プログラムの開発を手掛けた。まず、画像からWCSを記録するAstrometry.netを用い流星の発行点と消失点の赤経赤緯を求めた。その赤経赤緯から天文年鑑の公式を用い発行点と消失点の方位角と高度を求めた。今後は他地点の観測データから、流星の実経路を特定したい。
電波観測装置の製作と検出プログラムの開発
電波観測では、流星観測用に送信されている53.755MHzの電波を使用する。
フリーソフトのMROFFTから得られたエコー画像から流星を自動検知するプログラムの開発を行った。物体検出を行うYOLOv8を用いて流星を判別するモデルを開発した。画像から目的の周波数を切り出し、物体検出によって流星を判別して流星が発生した時刻を取得する。実際にモデルを作り判別に成功した。
リアルタイム検知システムの開発
4と5で紹介した検知プログラムをリアルタイムで実行するプログラムを開発し、流星を検出した場合NASに観測時刻と検出した流星の画像を保存するようにした。また、ビデオ観測では、図1のように流星出現をリアルタイムでコミュニケーションアプリのDiscordに通知することに成功した。
ビデオ、電波、眼視の3手法による2023年オリオン座流星群の観測結果と考察
2023年オリオン座流星群ではビデオ、電波、眼視の3つを比較した。ビデオ観測と電波観測は目視で確認した結果となっている。図2より1時に晴れてからビデオが極端に多くなっていることがわかる。ビデオが眼視よりも多くなった理由は赤外線防犯カメラで、眼視で確認が難しい等級の低い流星を捉えたからだと考えられる。また、電波観測では想定していたより検知数が少なくなった。これは、電波観測の検知精度自体が低いことやオリオン座流星群では対地速度の速い流星が多いことが要因だと考えられる。
まとめと今後の展望
ビデオ・電波ともに観測装置を製作し、機械学習を用いた流星検知プログラムの開発を進めた。ビデオ観測は流星のリアルタイム検知、5台分の動画の合成に成功した。観測結果から、ビデオ観測は電波・眼視よりも数多くの流星をとらえていることがわかった。今後は、電波観測のリアルタイムでの流星の検出システムの完成を目指す。また、電波観測の観測精度を改善する。そして、ビデオの流星経路と電波の反射領域から同一流星の特定を行う。
参考文献
・国立天文台「流星群」https://www.nao.ac.jp/astro/basic/meteor-shower.html
・ATOM「ATOMCam2」https://www.atomtech.co.jp/products/atomcam2
・mnakada「atomcam_tools」https://github.com/mnakada/atomcam_tools
・原口美悠(2021)『流星自動検出パイプラインの構築』「岡山大学地球および惑星大気科学研究室 卒業論文」
・長谷川均(2024)『ATOMCamで検出された流星検出と位置測定』「流星電波観測報告会2024」
・WongKinYiu「yolov9」 https://github.com/WongKinYiu/yolov9
・Astrometry.net https://nova.astrometry.net
・天文年鑑編集委員会(2023)『天文年鑑 2024年版』誠文堂新光社
・流星電波観測国際プロジェクトhttps://www.amro-net.jp/
・流星電波観測集計センター https://www5f.biglobe.ne.jp/~hro/