日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

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[O-08] 高校生ポスター発表

2024年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球惑星科学系 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(文部科学省)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O08-P94] pythonを用いた月のクレーター自動測定プログラムの開発

*飯塚 瑛1 (1.埼玉県立春日部高等学校)

月のクレーターの深さを写真から調べる試みは今まで多くの人々によってなされてきたが、その多くは手作業によるものであり多くの時間を要し、また人の目で数値を測る故正確性を書くものが多かった。私はこれらの作業を自動化し、多くの人が気軽に月研究にかかわれるようにpythonを用いることで月の写真から月のクレーターの深さ及び、その他さまざまな月面地形の高低差を自動的に測定するプログラムを作成した。これによって従来の手作業で測定する方法と比べて簡単かつ正確に高低差の計測をすることが可能となった。このプログラムでは使用者は月の写真と撮影日時を入力し、その後高低差を求めたい場所の影の長さをマウスで指定するだけで測定が完了する。プログラムを作成するにあたって、国立天文台のサイトの暦象年表の月の自転軸を表示するサイトをwebスクレイピングによってプログラムに組み込むことで月の秤動によるブレを無くし、月齢の影響を受けにくい正確な測定を実現した。このプログラムの機能として高さを測りたい対象の影が長さのわかる程度の写真があればクレーターに限らず様々な月の地形の高さの測定が可能である。よって本研究ではこのプログラムを活用した新たな月研究のアプローチを模索し、実際に検証している。
 プログラムの概要について説明する。まずこのプログラムにおいて入力を求めるものは写真データとその写真の撮影された時刻(西暦、月、日、時、分、秒)である。この時刻をwebスクレイピングによって呼び出した国立天文台のサイトに入力し、月と太陽と地球の位置関係を出力する。次に入力された写真からハフ変換によって写真上の月の位置と相対的な大きさを測る。そしてここからユーザーに写真を表示し、マウスを用いて対象の影の長さを指定させる。ここで指定された影の長さは先ほどwebスクレイピングで調べたデータを用いて見かけの長さから実際の長さに変換される。最後に先ほど求めたすべてのデータを使用して三角関数より対象の高さを出力してプログラムは終了する。
 このプログラムの正確性について。このプログラムでは影の長さをどれだけ正確に指定できるかによって、出力される対象の高さの正確性が大きく変わる。またこの影の長さの指定は写真のピクセル単位で行うため写真の解像度も正確性に大きく影響する。さらに対象の高さ当たりの影の長さ、つまり入射光の角度および月面座標も正確性を左右する。よってこのプログラムでは多くの要因によって数値が変化しうるゆえ、一概に正確性を議論することは不可能である。しかし十分に影が確認できる写真で影の長さが写真上10ピクセル以上であれば誤差が1kmを超えることはない。
 このプログラムを研究に活用することについて。私はクレーターの深さと幅の関係などの調査にこのプログラムを活用している。また上記の通りこのプログラムでは影の長ささえ分かればクレーター以外の地形にも活用することが出来るため、月面の溝、山地形の研究にも活用する方法を模索している。
 今後の展望について。今後は様々な人々がこのプログラムを簡単に使用できるようにGUIを作成する予定である。長さを図る作業の自動化、 ハフ変換のパラメーター調整を自動化、使用する画像を自動でトリミング、加工するプログラムの追加を考えている。また現在はMicrosoft社の提供するVisual Studio Code上でプログラムを動作させているため一般の人でも使えるように独立したプログラムの作成をする予定である。
 最後に、本研究を進めるにあたって多大なる協力をしてくださった東京学芸大学の土橋一仁教授に深謝の意を表します。