日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM17] 宇宙プラズマ科学

2024年5月31日(金) 09:00 〜 10:30 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:天野 孝伸(東京大学 地球惑星科学専攻)、三宅 洋平(神戸大学大学院システム情報学研究科)、諌山 翔伍(九州大学総合理工学研究院)、梅田 隆行(北海道大学 情報基盤センター)、座長:諌山 翔伍(九州大学総合理工学研究院)、簑島 敬(海洋研究開発機構 数理科学・先端技術研究開発センター)

09:45 〜 10:00

[PEM17-14] 量子特異値変換を用いたVlasov-Maxwell方程式の量子計算vs古典高精度計算手法における量子優位なシミュレーションサイズの推定

*樋口 颯人1、Pedersen Juan2、黄海 仲星3、吉川 耕司4、豊泉 喜一郎5吉川 顕正1 (1.九州大学、2.理化学研究所、3.大阪大学、4.筑波大学、5.慶應義塾大学)

キーワード:量子計算、ブラソフシミュレーション、運動論的シミュレーション、流体計算法

近年、量子コンピューターのソフトウェア・ハードウェア両面の進歩に伴って、量子アルゴリズムには数多くのメリットがあることが証明されている。金融、化学、流体、様々な分野での量子コンピューティングの実用化が注目されている(e.g. Bouland et al.,[2020], Cao et al.,[2019], Egger et al.,[2020] and Budinski, [2022])。私たちは、無衝突宇宙プラズマシミュレーションに応用するために、量子ウォークを用いた6次元Boltzmann-Maxwell方程式の量子アルゴリズムを開発した(Higuchi et al.,[2023])。しかし、それは空間grid数に対して対数スケールで計算高速化される一方で、時間step数に対する計算複雑性が増加することが課題だった。さらに、1stepの時間発展のみに言及しており、任意の時間発展の高速化を保証していなかった。
そこで我々は、量子特異値変換ベースのハミルトニアンシミュレーションという量子数値計算手法を用いた線形Vlasov-Poisson方程式の量子アルゴリズム(Toyoizumi et al., [2023])を参考にした。それと同じフレームワークでVlasov-Maxwell方程式の量子アルゴリズムを再構築した。これにより、時間step数を含めた計算複雑性の指数関数的な改善、スムーズな任意の時間発展を可能にした。加えて、量子特異値変換による量子アルゴリズムの実装は特徴としてシンプルな構造であるため、汎用的に他の流体数値計算手法を用いることができると分かった。
本発表では現状量子コンピュータ内でプラズマシミュレーションを行うのに適している量子特異値変換アルゴリズムを紹介する。量子コンピュータシミュレータ上で解いた結果を示しながら、古典コンピュータによる高精度計算を超越するシミュレーションサイズの見積もりを解説する。また、量子コンピュータのハードウェア・ソフトウェアの開発動向を踏まえて、今後我々の領域で期待できる応用の展望も話す予定である。