09:00 〜 09:20
[PPS09-01] 小型月着陸実証機「SLIM」の月面着陸結果について
★招待講演

キーワード:月探査、月着陸、ピンポイント着陸、高精度着陸、SLIM
小型月着陸実証機「SLIM」は、1)高精度着陸技術の月面着陸による実証、2)今後の月惑星探査の高頻度化に繋がりうる軽量な月惑星探査機システムの実現、を2つの目的として、2016年から活動を開始した宇宙航空研究開発機構(JAXA)のプロジェクトである。目標とする着陸精度は100mであり、従来の月着陸機の精度が数km~10数km程度であったことに比べると、その実現は大きな飛躍となる。
SLIMはX線分光撮像衛星「XRISM」と共にH-2Aロケットにて 2023年9月7日に打ち上げられ、以後、地球周回フェーズ、月遷移フェーズを経て2023年12月25日に月周回軌道に投入された。その後、数度の軌道変更運用により軌道高度を下げ、高度約600km×約15kmの軌道に遷移した後、2024年1月20日0時頃、近月点付近から月着陸降下を開始した。
その後、SLIMは正常に動力降下フェーズ、垂直降下フェーズと推移して、正常に高度50m付近でのホバリング状態に至った。この過程では、7地点で合計14回の航法カメラ撮像画像を用いた画像照合航法が探査機上で実施されているが、地上での画像照合結果も踏まえて、全て正常に実施されたことが確認されている。画像照合実施後の誘導制御による補正も正常に実施されており、誤差は想定の範囲内で推移した。
高度50m付近でのホバリング中には航法カメラ撮像及び障害物検知が行われ、その後、SLIMは障害物回避、つまり視野内で最も安全と考えられる地点を目指した降下を開始する。すなわち、高度50m以降は着陸精度ではなく着陸安全性を優先した挙動となるため、ピンポイント着陸精度については、高度50m付近での位置誤差により評価する計画となっていた。
高度50m付近で順次撮像された2枚の航法カメラ画像について、着陸後、Chandrayaan-2が撮像した月面写真と照合し、着陸目標地点とSLIM位置の比較を行ったところ、1枚目の画像で約3.4m, 2枚目の画像で約10.2mという結果となった。後者の撮像は、後述する推進系異常事象の影響を既に受けていると考えており、プロジェクトとしては、前者の方が実際のピンポイント着理精度を反映した値と考えている。
一方で、高度50m付近で推進系に何らかの異常が発生し、結果として、メインエンジン2機のうち1機の推力が失われた。一定の冗長性と異常対応機能を有していたこともあり、SLIMは東に移動しながら、高度5m付近で2機の超小型ローバ、LEV1及びLEV2(SORA-Q)を分離した後、当初の接地条件より低い降下速度で接地し、恐らく降下速度以外の条件が接地条件を逸脱したため、本来の想定と異なる姿勢で静定した。
講演時には、着陸運用の詳細と着陸後に行った運用等について報告する。
SLIMはX線分光撮像衛星「XRISM」と共にH-2Aロケットにて 2023年9月7日に打ち上げられ、以後、地球周回フェーズ、月遷移フェーズを経て2023年12月25日に月周回軌道に投入された。その後、数度の軌道変更運用により軌道高度を下げ、高度約600km×約15kmの軌道に遷移した後、2024年1月20日0時頃、近月点付近から月着陸降下を開始した。
その後、SLIMは正常に動力降下フェーズ、垂直降下フェーズと推移して、正常に高度50m付近でのホバリング状態に至った。この過程では、7地点で合計14回の航法カメラ撮像画像を用いた画像照合航法が探査機上で実施されているが、地上での画像照合結果も踏まえて、全て正常に実施されたことが確認されている。画像照合実施後の誘導制御による補正も正常に実施されており、誤差は想定の範囲内で推移した。
高度50m付近でのホバリング中には航法カメラ撮像及び障害物検知が行われ、その後、SLIMは障害物回避、つまり視野内で最も安全と考えられる地点を目指した降下を開始する。すなわち、高度50m以降は着陸精度ではなく着陸安全性を優先した挙動となるため、ピンポイント着陸精度については、高度50m付近での位置誤差により評価する計画となっていた。
高度50m付近で順次撮像された2枚の航法カメラ画像について、着陸後、Chandrayaan-2が撮像した月面写真と照合し、着陸目標地点とSLIM位置の比較を行ったところ、1枚目の画像で約3.4m, 2枚目の画像で約10.2mという結果となった。後者の撮像は、後述する推進系異常事象の影響を既に受けていると考えており、プロジェクトとしては、前者の方が実際のピンポイント着理精度を反映した値と考えている。
一方で、高度50m付近で推進系に何らかの異常が発生し、結果として、メインエンジン2機のうち1機の推力が失われた。一定の冗長性と異常対応機能を有していたこともあり、SLIMは東に移動しながら、高度5m付近で2機の超小型ローバ、LEV1及びLEV2(SORA-Q)を分離した後、当初の接地条件より低い降下速度で接地し、恐らく降下速度以外の条件が接地条件を逸脱したため、本来の想定と異なる姿勢で静定した。
講演時には、着陸運用の詳細と着陸後に行った運用等について報告する。
