17:15 〜 18:45
[SCG45-P13] 海底チムニーの硫化鉱物の置換反応による電気化学特性の変化:水熱実験による制約
キーワード:チムニー、硫化鉱物置換反応、熱起電力
海底熱水噴出孔では噴出熱水が海水と混合して急激に冷却され、主に硫化鉱物からなるチムニーが形成される。一方、チムニーを構成する硫化鉱物は半導体であり、熱電性能を持つ可能性があるが、複雑な構造のチムニーがどれほどの熱起電力を発生するかはよくわかっていない。近年、私たちのグループは伊豆・小笠原海域から採取されたチムニーの累帯構造に対して系統的な電気測定を行い、閃亜鉛鉱やバライトから構成される高空隙のチムニー外側では抵抗が高く電気を流さないが、熱水流通孔周辺に黄銅鉱などの導電性の高い鉱物が置換しながら緻密な構造を作っている部分において、熱起電力は発生することが見出された(高橋ほか, 2023 JpGU)。本研究ではチムニーの構成鉱物である閃亜鉛鉱、黄鉄鉱、方鉛鉱を出発物質として模擬熱水と反応させる水熱実験を行い、硫化鉱物の置換組織の観察とともに比抵抗と熱起電力の測定を行った。その上で、チムニーの硫化鉱物の置換反応が海底の発電現象に与える影響を検討した。
実験は200, 250, 300 degreeCで飽和蒸気圧であり、適宜NaCl(1M)を添加した。実験では、閃亜鉛鉱や方鉛鉱にFe2+, Cu2+イオンを含む水溶液との反応では出発鉱物表面に、Cu2SとCuSの間で銅の価数が変化するCu-S系の硫化物の被膜が形成された。閃亜鉛鉱、方鉛鉱を出発物に用いた場合は比抵抗値がそれぞれ10桁、4桁と大きく低下した。一方、黄鉄鉱を出発物に用いてCu2+イオンを含む水溶液との反応では、黄鉄鉱結晶に亀裂が生じ、生成鉱物が、表面にはCu2S、亀裂内部には黄銅鉱と系統的に変化した。この反応により、計測した比抵抗値は4桁低下している。出発物表面からの置換する場合と、亀裂が生じて内部に2次鉱物ができるのは、硫黄を固定した反応を考えた場合、前者が固体体積の現象、後者が増加するときに対応しており、体積増加に伴う反応誘起応力による破壊と考えられる。黄鉄鉱内部への生成物の変化は、FeとCuの化学ポテンシャル勾配を反映していると考えられる。
実験生成物をペルチェ素子上に置いて両端を加熱・冷却した際に生じる熱起電力を測定した。温度差あたりの起電力であるゼーベック係数Sを算出した。出発物質である閃亜鉛鉱と黄鉄鉱のSはそれぞれ96,0.2(mV)である。一方、置換反応後のCu-Fe-S系の硫化物は基本的にn型であり、-2.5-95(mV)と小さな絶対値を示した。
物質の熱電性能は熱電性能指数(ZT= S2 x 電気伝導度σx 絶対温度/ 熱伝導率κ)で評価される。分子であるS2σに注目すると、例えば、閃亜鉛鉱に比べて、生成物のFe-Cu硫化鉱物10~107倍の性能が向上されることがわかった。このことは、チムニーの発達初期段階の閃亜鉛鉱空隙率の高い組織が、流通孔周辺から導電性の高いCu-Fe硫化物に変化することで熱電性能を発現することを示唆する。今後、実際の高空隙チムニーを出発物質とする置換反応実験を進めて、詳細に検討する予定である。
実験は200, 250, 300 degreeCで飽和蒸気圧であり、適宜NaCl(1M)を添加した。実験では、閃亜鉛鉱や方鉛鉱にFe2+, Cu2+イオンを含む水溶液との反応では出発鉱物表面に、Cu2SとCuSの間で銅の価数が変化するCu-S系の硫化物の被膜が形成された。閃亜鉛鉱、方鉛鉱を出発物に用いた場合は比抵抗値がそれぞれ10桁、4桁と大きく低下した。一方、黄鉄鉱を出発物に用いてCu2+イオンを含む水溶液との反応では、黄鉄鉱結晶に亀裂が生じ、生成鉱物が、表面にはCu2S、亀裂内部には黄銅鉱と系統的に変化した。この反応により、計測した比抵抗値は4桁低下している。出発物表面からの置換する場合と、亀裂が生じて内部に2次鉱物ができるのは、硫黄を固定した反応を考えた場合、前者が固体体積の現象、後者が増加するときに対応しており、体積増加に伴う反応誘起応力による破壊と考えられる。黄鉄鉱内部への生成物の変化は、FeとCuの化学ポテンシャル勾配を反映していると考えられる。
実験生成物をペルチェ素子上に置いて両端を加熱・冷却した際に生じる熱起電力を測定した。温度差あたりの起電力であるゼーベック係数Sを算出した。出発物質である閃亜鉛鉱と黄鉄鉱のSはそれぞれ96,0.2(mV)である。一方、置換反応後のCu-Fe-S系の硫化物は基本的にn型であり、-2.5-95(mV)と小さな絶対値を示した。
物質の熱電性能は熱電性能指数(ZT= S2 x 電気伝導度σx 絶対温度/ 熱伝導率κ)で評価される。分子であるS2σに注目すると、例えば、閃亜鉛鉱に比べて、生成物のFe-Cu硫化鉱物10~107倍の性能が向上されることがわかった。このことは、チムニーの発達初期段階の閃亜鉛鉱空隙率の高い組織が、流通孔周辺から導電性の高いCu-Fe硫化物に変化することで熱電性能を発現することを示唆する。今後、実際の高空隙チムニーを出発物質とする置換反応実験を進めて、詳細に検討する予定である。