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[SCG51-03] LA-ICP-MSによる赤鉄鉱U-Pb年代測定法
キーワード:赤鉄鉱、U-Pb年代、LA-ICP-MS、スカルン
岩石の形成年代を知る手法として、一般にジルコンのウラン(U)−鉛(Pb)年代測定法が用いられている。これは、ジルコンには比較的Uが多く含まれているため、Uの放射壊変で生じるPb量が多く、精度の良い測定が可能であること、また測定上の制約となる初生鉛含有量が低く、その影響が少ないこと、ジルコン自体が物理・化学的に強靭な鉱物であり、同位体系が閉鎖系を維持しやすいこと、といった利点のためである。その一方で、従来は年代測定の対象とされていなかった鉱物のU-Pb年代測定法が試みられるようになってきている。既にザクロ石や方解石のU-Pb年代測定が実施されているが、近年、赤鉄鉱のU-Pb年代測定法の開発がなされている。
赤鉄鉱は多くの鉱床タイプ、特に酸化鉄型銅金(IOCG)鉱床で産する鉱石鉱物である。そのため鉱床の年代を直接決定する手法として、赤鉄鉱のU-Pb年代測定法は有効な年代測定法となると考えられる。そこで、本研究では、赤鉄鉱のU-Pb年代測定法の確立を行なった。
赤鉄鉱(Fe2O3)には微量のUが含まれていることがあるが、Uは以下の置換反応で赤鉄鉱に含まれると考えられている(Ciobanu et al., 2013)。
2Fe3+ ↔ U6+ + □ (最大0.013 U atoms per formula unit)
赤鉄鉱のU-Pb系に対する閉鎖温度は、アパタイトと共存する試料においてのアパタイトU-Pb年代との比較評価や、その結晶構造がルチルと似ていることからルチルの閉鎖温度を参考に、400℃程度と推定されている(Coutney-Davies et al., 2021)。
赤鉄鉱のU-Pb年代測定法を適用した例として、岩手県和賀仙人鉄・銅スカルン鉱床中の赤鉄鉱の年代測定結果を示す。和賀仙人の鉄鉱石は赤鉄鉱を含むが、国内の鉄スカルン鉱石中に赤鉄鉱を多く含む例は少ない。この地域のペルム紀堆積岩中には白亜紀花崗閃緑岩が貫入しており、その後、中新世の流紋岩の貫入も受けている。そのため、スカルンの形成、特に鉱石中の赤鉄鉱の成因に関しては、白亜紀花崗閃緑岩または中新世流紋岩のよるとの2つの説がある。今回得られた赤鉄鉱の年代は中新世であり、赤鉄鉱の形成に関しては後者の説を支持する。
文献
Ciobanu et al. (2013) Precambrian Research, 238, 129-147.
Coutney-Davies et al. (2021) Chemical Geology, 513, 54-72.
赤鉄鉱は多くの鉱床タイプ、特に酸化鉄型銅金(IOCG)鉱床で産する鉱石鉱物である。そのため鉱床の年代を直接決定する手法として、赤鉄鉱のU-Pb年代測定法は有効な年代測定法となると考えられる。そこで、本研究では、赤鉄鉱のU-Pb年代測定法の確立を行なった。
赤鉄鉱(Fe2O3)には微量のUが含まれていることがあるが、Uは以下の置換反応で赤鉄鉱に含まれると考えられている(Ciobanu et al., 2013)。
2Fe3+ ↔ U6+ + □ (最大0.013 U atoms per formula unit)
赤鉄鉱のU-Pb系に対する閉鎖温度は、アパタイトと共存する試料においてのアパタイトU-Pb年代との比較評価や、その結晶構造がルチルと似ていることからルチルの閉鎖温度を参考に、400℃程度と推定されている(Coutney-Davies et al., 2021)。
赤鉄鉱のU-Pb年代測定法を適用した例として、岩手県和賀仙人鉄・銅スカルン鉱床中の赤鉄鉱の年代測定結果を示す。和賀仙人の鉄鉱石は赤鉄鉱を含むが、国内の鉄スカルン鉱石中に赤鉄鉱を多く含む例は少ない。この地域のペルム紀堆積岩中には白亜紀花崗閃緑岩が貫入しており、その後、中新世の流紋岩の貫入も受けている。そのため、スカルンの形成、特に鉱石中の赤鉄鉱の成因に関しては、白亜紀花崗閃緑岩または中新世流紋岩のよるとの2つの説がある。今回得られた赤鉄鉱の年代は中新世であり、赤鉄鉱の形成に関しては後者の説を支持する。
文献
Ciobanu et al. (2013) Precambrian Research, 238, 129-147.
Coutney-Davies et al. (2021) Chemical Geology, 513, 54-72.