11:45 〜 12:00
[SCG53-05] 極値統計学に基づく余震による揺れの早期予測手法の性能検証
キーワード:極値統計学、連続地震計記録、余震による揺れ予測、予測性能の検証
大地震直後には多くの余震が起こるため、その波形同士が地震計記録上で重なり合い、P波やS波の検知が困難となる。そのため、地震カタログの質・量が共に劣化し、余震活動の実態を把握することが困難となる。その困難を解決する方法の一つとして、大地震直後から記録された地震計記録の極値統計解析により、対象観測点における揺れの推移予測を行う手法が提案されている(Sawazaki, 2021)。この手法では、一定時間幅ごとの振幅の最大値が非定常Frechet分布(NFD)と呼ばれる極値分布の一種に従うことを利用して、NFDの支配パラメータをベイズ推定し、本震発生から数時間以内に1週間程度先までの揺れの最大値や閾値以上の揺れが起こる回数を予測する。本研究では、この極値統計学に基づく手法を規模や発生様式が異なる3個の余震系列に適用し、最大振幅および有感地震回数の予測性能を検証した。
解析対象とした余震系列は、2008年岩手・宮城内陸地震(MJ7.2)、2016年熊本地震の本震(MJ7.3)、および2018年大阪府北部の地震(MJ6.1)である。これらの地震後の揺れを記録した3日間のHi-net連続波形記録を解析した。岩手・宮城内陸地震と熊本地震では本震からの震央距離100km以内、大阪府北部の地震では50km以内のHi-net観測点を解析に用いた。Hi-net記録は0.2Hzまで機器特性を補正し、計測システムに起因する飽和がみられる波形については併設のKiK-net記録で置き換えた。
解析の結果、大阪府北部の地震を除き、最大振幅の予測が系統的に過大評価となる傾向が見られた。一方で、有感地震相当(Hi-net地中記録で0.02cm/s以上)の揺れの回数については、観測回数は概ね予測幅の中に均等に分布した。この違いは、マグニチュードに対する最大振幅の飽和や、G-R式が成立する範囲の上限、あるいはその両方の可能性が考えられる。
熊本地震においては、本震の震央の周囲だけではなく、別府や阿蘇地域で誘発された地震活動域の近傍の観測点でも強い最大振幅や多数の有感地震回数を予測し、実際にそれらの揺れを観測した。一方で岩手・宮城内陸地震については、本震の規模は熊本地震と同程度であるが、余震による揺れの最大振幅や回数は熊本地震の場合よりも小さく予測された。これらの結果は、本震の規模だけから余震活動を予測するGeneric法や、余震の発生位置の情報を使わないOmi et al. (2016, 2019)等の方法では扱えない、地震活動の面的な分布を反映した予測が本手法では扱えることを示している。
謝辞:本研究は科研費基盤C(課題番号21K03686)および情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト(STAR-E)による支援を受けています。
解析対象とした余震系列は、2008年岩手・宮城内陸地震(MJ7.2)、2016年熊本地震の本震(MJ7.3)、および2018年大阪府北部の地震(MJ6.1)である。これらの地震後の揺れを記録した3日間のHi-net連続波形記録を解析した。岩手・宮城内陸地震と熊本地震では本震からの震央距離100km以内、大阪府北部の地震では50km以内のHi-net観測点を解析に用いた。Hi-net記録は0.2Hzまで機器特性を補正し、計測システムに起因する飽和がみられる波形については併設のKiK-net記録で置き換えた。
解析の結果、大阪府北部の地震を除き、最大振幅の予測が系統的に過大評価となる傾向が見られた。一方で、有感地震相当(Hi-net地中記録で0.02cm/s以上)の揺れの回数については、観測回数は概ね予測幅の中に均等に分布した。この違いは、マグニチュードに対する最大振幅の飽和や、G-R式が成立する範囲の上限、あるいはその両方の可能性が考えられる。
熊本地震においては、本震の震央の周囲だけではなく、別府や阿蘇地域で誘発された地震活動域の近傍の観測点でも強い最大振幅や多数の有感地震回数を予測し、実際にそれらの揺れを観測した。一方で岩手・宮城内陸地震については、本震の規模は熊本地震と同程度であるが、余震による揺れの最大振幅や回数は熊本地震の場合よりも小さく予測された。これらの結果は、本震の規模だけから余震活動を予測するGeneric法や、余震の発生位置の情報を使わないOmi et al. (2016, 2019)等の方法では扱えない、地震活動の面的な分布を反映した予測が本手法では扱えることを示している。
謝辞:本研究は科研費基盤C(課題番号21K03686)および情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト(STAR-E)による支援を受けています。