[S-CG54] 海域火山

[SCG54-P04] 海洋性島弧における海底カルデラ火山の一生 － 仮説

*池上 郁彦¹ (1.産業技術総合研究所)

キーワード：海底火山、カルデラ火山、カルデラ形成噴火

海底カルデラ火山は、重要な生物学的ホットスポットであり、鉱物探査における有望な採掘地であり、人類社会にとって深刻な火山災害の源でもある。近年、現世の海洋における観察機会の増加により、海底カルデラ火山の一生の多様なスナップショットを目撃することができるようになった。地質時代のカルデラから得られた知識とこれら最近の観察を結びつけることで、海洋性島弧内の海底カルデラの一生を仮説として述べてみる。このような試みは環境的、経済的、防災上必要であると考えられる。

海洋性島弧内において将来海底カルデラとなる海底火山は、新しい沈み込み帯の進出または背弧拡大によって影響を受けた既存島弧の急速な沈降のいずれかで始まるかもしれない。そのような初期段階の海底は通常、1000から2500 mの深さであり、静水圧のためにマグマが爆発的に破砕するには深すぎる。当初、火山活動は主にeffusiveな流出活動に限られ、これは火山の山体にとって非常に建設効率がよい。この「成長期」には、溶岩流とハイアロクラスタイトがその地質を支配する。典型的な現代の例は、ケルマデック弧南部の海底火山群である。

海底火山が1000 mの深さに達し、おそらく同時期に成熟したマグマだまりを確立すると、火山は高強度のマグマ噴火を起こすようになる。この変化はマグマだまりの成長または爆発的噴火による既存の山体の破壊に起因する可能性がある。この時点で火山は最初のカルデラ形成噴火を経験するが、主にマグマの破砕深度よりも下で噴出するため、軽石を大量に噴出する。その結果、初期のカルデラは比較的コンパクトで、ほぼ対称的で、深い穴を持つ。この「若年期」の段階では、軽石が山体を構築するのに非効率的であるため成長は減速する。この段階を体現する現代の例には、伊豆弧の明神海丘やケルマデック弧のブラザーズカルデラがある。

火山が約500 mより浅い深さ付近に達する頃には、山容を変化させるカルデラ形成噴火を繰り返し経験している。この時点で、静水圧はマグマの爆発的な破砕を殆ど妨げないため、陸上のカルデラで観察されるような大量の火砕流を噴出させ得る。これはカルデラが複成カルデラの段階に移行することを意味し、複雑な形状を持つカルデラ縁、充填堆積物で満たされた浅く広い堆積盆地、そして積み重なった大規模火砕流堆積物によってゆるやかに傾斜した広大な山体によって特徴づけられる。この「成熟期」では、海面の変動が火山活動と地形の形態的進化の両方を調節する上で重要な役割を果たす。このような成熟した海底カルデラの顕著な例には、伊豆弧のスミスとケルマデック弧のマコーリーがあり、それぞれが地質学的プロセスと海洋環境の複雑な相互作用を示している。

海洋性島弧内の海底カルデラ火山の一生は、地域的なテクトニクスの環境が変化することで終焉を迎える。このような「化石化期」の変化は、プレート運動の変化または背弧拡大の停止から生じる可能性がある。このテクトニックな変化は、火山マグマ供給系へのマグマの流入を減少させ、大規模なマグマだまりの結晶化を促し、火山活動の比較的急速な停止をもたらす。その後、カルデラは一時的に浅い堆積盆地として残るかもしれない。最終的には、終息した海洋性島弧は大陸または別の島弧と衝突することで、地質記録の中に化石として保存される。