17:15 〜 18:45
[SCG54-P08] 漂流軽石研究における水置換法による連結および孤立空隙率測定
キーワード:漂流軽石、空隙率測定、連結空隙率、水置換法、軽石浮遊性
海域火山で生じる漂流軽石現象において、軽石の挙動を支配する軽石の空隙率は重要な物性である。本研究では、簡便な水置換法による空隙率測定を漂流軽石試料に適用するための技術的検討について報告する。
水に対する軽石の浮遊性は孤立空隙率および連結空隙内の水の飽和度によって変化する。軽石の連結空隙率および孤立空隙率を得るには骨格密度を測定する必要がある。骨格密度は、固相(ガラスおよび結晶)と孤立空隙の体積の合計で試料質量を割って算出される。骨格密度は機器を用いたガス置換法によって測定される場合が多い。竹内ほか(2023, 日本火山学会秋季大会)は、骨格密度のみならず、かさ密度及び固相密度といった全空隙率・連結空隙率・孤立空隙率の計算に必要な密度測定すべてを安価な器具を用いて行うことができる水置換法を開発した。水置換法では、物体の体積を水の体積に置換し、精密に秤量可能な質量から水の密度を仮定して物体体積を換算する。本研究の水置換法では、軽石の連結空隙へほぼ完全に水を含浸させるために、真空を用いた水の含浸操作(Yokoyama and Takeuchi, 2009, JGR)を行う点が重要である。またGardner et al. (1996, BV)が提案した水置換法による軽石のかさ密度測定も同時に行う。水置換法を陸上噴火の軽石に適用し、疑似流体置換法とガス置換法による機器を用いた結果と同様の測定値が得られた。一粒子だけでなく、多数粒子を一括して測定し、密度・空隙率の平均値を得ることもできる。
漂流軽石粒子は沈みえる軽石と沈まない軽石の二つに分類できる(Takeuchi et al., submitted)。沈みえる軽石は連結空隙内に残された空気により浮遊性を持ち、空気を失うと沈む(Fauria et al., 2017, EPSL)。沈まない軽石は高い孤立空隙率により、空隙率が変わらない限り、沈まない。水置換法測定の操作の中で、含浸操作および比重瓶測定の際に、軽石の浮遊性が影響する。軽石が沈みえる軽石か、沈まない軽石かのどちらかは事前にはわからない。沈まない軽石への対策のため、水置換法を行う際には、試料の浮遊を抑えるために金属製の重りを用いる。重りの体積は事前に水置換法により測定しておく。含浸操作後、沈みえる軽石は沈む。ただし沈むまでに時間を要する場合がある。含浸操作後も沈まない軽石は、骨格密度が水の密度よりも低い。火山岩の固相密度は2.2から2.9 g/cm3であるため(Takeuchi et al., 2021, JVGR)、水の密度よりも低い骨格密度は豊富な孤立空隙を軽石が含むことを意味する。含浸操作は軽石が沈みえる軽石か、沈まない軽石かのどちらかを判定していることにもなり、含浸に海水を用いれば海水に対する浮遊沈降性を評価できる。
本研究の水置換法で用いる主な器具は電子天秤・蓋を改造した真空デシケーター・真空ポンプ・比重瓶である。数cm3体積の小さい試料を測定する際には上記の精密な器具が必要であるが、試料体積が大きくなるほど精密な器具でなくても測定が可能になる。最も安価な器具として例えば、真空ポンプの代わりにアスピレーターを、比重瓶の代わりにサンプル瓶やペール缶を用い、測定の精度に関する技術的検証を行っている。ペール缶を用いた測定が可能になれば、直径数十 cm級の粒子に対する測定も可能となる。安価な器具での測定は、軽石の密度・空隙率測定のコスト面でのハードルを低減し、研究のみならず学校での理科教育においても普及の可能性がある。
水に対する軽石の浮遊性は孤立空隙率および連結空隙内の水の飽和度によって変化する。軽石の連結空隙率および孤立空隙率を得るには骨格密度を測定する必要がある。骨格密度は、固相(ガラスおよび結晶)と孤立空隙の体積の合計で試料質量を割って算出される。骨格密度は機器を用いたガス置換法によって測定される場合が多い。竹内ほか(2023, 日本火山学会秋季大会)は、骨格密度のみならず、かさ密度及び固相密度といった全空隙率・連結空隙率・孤立空隙率の計算に必要な密度測定すべてを安価な器具を用いて行うことができる水置換法を開発した。水置換法では、物体の体積を水の体積に置換し、精密に秤量可能な質量から水の密度を仮定して物体体積を換算する。本研究の水置換法では、軽石の連結空隙へほぼ完全に水を含浸させるために、真空を用いた水の含浸操作(Yokoyama and Takeuchi, 2009, JGR)を行う点が重要である。またGardner et al. (1996, BV)が提案した水置換法による軽石のかさ密度測定も同時に行う。水置換法を陸上噴火の軽石に適用し、疑似流体置換法とガス置換法による機器を用いた結果と同様の測定値が得られた。一粒子だけでなく、多数粒子を一括して測定し、密度・空隙率の平均値を得ることもできる。
漂流軽石粒子は沈みえる軽石と沈まない軽石の二つに分類できる(Takeuchi et al., submitted)。沈みえる軽石は連結空隙内に残された空気により浮遊性を持ち、空気を失うと沈む(Fauria et al., 2017, EPSL)。沈まない軽石は高い孤立空隙率により、空隙率が変わらない限り、沈まない。水置換法測定の操作の中で、含浸操作および比重瓶測定の際に、軽石の浮遊性が影響する。軽石が沈みえる軽石か、沈まない軽石かのどちらかは事前にはわからない。沈まない軽石への対策のため、水置換法を行う際には、試料の浮遊を抑えるために金属製の重りを用いる。重りの体積は事前に水置換法により測定しておく。含浸操作後、沈みえる軽石は沈む。ただし沈むまでに時間を要する場合がある。含浸操作後も沈まない軽石は、骨格密度が水の密度よりも低い。火山岩の固相密度は2.2から2.9 g/cm3であるため(Takeuchi et al., 2021, JVGR)、水の密度よりも低い骨格密度は豊富な孤立空隙を軽石が含むことを意味する。含浸操作は軽石が沈みえる軽石か、沈まない軽石かのどちらかを判定していることにもなり、含浸に海水を用いれば海水に対する浮遊沈降性を評価できる。
本研究の水置換法で用いる主な器具は電子天秤・蓋を改造した真空デシケーター・真空ポンプ・比重瓶である。数cm3体積の小さい試料を測定する際には上記の精密な器具が必要であるが、試料体積が大きくなるほど精密な器具でなくても測定が可能になる。最も安価な器具として例えば、真空ポンプの代わりにアスピレーターを、比重瓶の代わりにサンプル瓶やペール缶を用い、測定の精度に関する技術的検証を行っている。ペール缶を用いた測定が可能になれば、直径数十 cm級の粒子に対する測定も可能となる。安価な器具での測定は、軽石の密度・空隙率測定のコスト面でのハードルを低減し、研究のみならず学校での理科教育においても普及の可能性がある。