日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP23] 鉱物の物理化学

2024年5月31日(金) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:萩原 雄貴(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、近藤 望(岡山大学惑星物質研究所)、柿澤 翔(高輝度光科学研究センター)

17:15 〜 18:45

[SMP23-P04] Ulexite [NaCaB5O6(OH)6・5H2O]の熱分解と湿潤雰囲気での可逆性

*山口 航佑1興野 純1 (1.筑波大学生命環境系)

キーワード:ulexite、熱分解、fundamental building block、再水和

ホウ酸塩鉱物は,結晶構造内に3配位と4配位のホウ素を持ち,それらが結合して基本構造単位(Fundamental building blocks; FBBs)を構成している.ホウ酸塩水和物は,熱分解過程でFBBが変化して複雑な相変化をすることが知られている.例えば主要ホウ酸塩鉱物の1つであるborax Na2B4O5(OH)4·8H2Oは,25℃でtincalconite Na2B4O5(OH)4·3H2Oに,600℃で無水のg-Na2B4O7に,650℃でa-Na2B4O7に変化する.さらに,tincalconiteは25℃では相対湿度60%以上でboraxに可逆的に変化する.本研究では,主要ホウ酸塩鉱物の1つであるulexite NaCaB5O6(OH)6·5H2Oの熱分解と湿潤雰囲気での可逆性を調べるために,加熱および加湿実験を行い,放射光粉末XRD,単結晶XRD,TG-DTA分析を実施した.放射光粉末XRDとTG-DTA分析の結果,ulexiteは100℃で脱水相NaCaB5O6(OH)6·3H2Oに,174℃で非晶質相に,647℃で無水相NaCaB5O9に,875℃でホウ酸カルシウムCaB2O4に変化した.さらに,単結晶XRDによって脱水相の結晶構造を初めて決定し,脱水相のFBBはulexiteのFBB と同一であることを明らかにした.Ulexiteの熱分解過程でのFBBの変化は,脱水相ではulexiteのFBBをそのまま維持し(ulexite型FBB),無水相ではulexite型FBBは一部変化したがulexite型FBBの一部を継承し(無水相型FBB),ホウ酸カルシウムにおいても無水相型FBBは一部変化したが無水相型FBBの一部を継承していた.さらに,相対湿度100%,20℃での加湿実験の結果,脱水相,非晶質相,無水相のすべてが,ulexiteに戻ることを見出した.つまり,各熱分解相は再水和反応およびOH基の付加反応によりulexiteに可逆変化することが分かった.特にulexite型FBBを維持している脱水相は急速にulexiteに戻ることを確認した.これに対して,非晶質相からulexiteに戻る場合は,ulexiteに加えてboraxも晶出することを発見した.この原因は,非晶質相のFBBが局所的にborax型のFBBを持つためであると考えた.本研究によって,主要ホウ酸塩鉱物であるboraxに加えてulexiteにも脱水相の湿潤雰囲気での可逆性が確認できたことは,主要ホウ酸塩鉱物は極端な気象現象や乾燥と湿潤の気候変動に伴って,脱水と再水和のサイクルを繰り返していることが示唆される.