[S-SS11] 活断層と古地震

[SSS11-P02] UAV レーザ測量による申川断層の変位微地形検出と掘削による浅部地下構造の推定

*西川 治¹、細矢 卓志²、松多 信尚³ (1.秋田大学大学院国際資源学研究科、2.中央開発株式会社、3.岡山大学大学院教育学研究科 )

キーワード：UAV レーザ測量、申川断層、男鹿半島

申川断層は、秋田県男鹿半島北岸基部に広がる五里合低地とその東側の潟西段丘とを画して南北に延びる東傾斜の逆断層である。陸上部の断層地形の長さは約５kmであるが、かつて海岸の露頭で断層面が確認されており（活断層研究会　1991, 新編日本の活断層）、北方の海域に長く延長していると考えられている。断層上盤の潟西段丘面はNE-SW軸の背斜によって変位し、断層近傍では明瞭な撓曲によって段丘面は西に向かって高度を下げ断層トレース西側に広がる五里合低地の地下に没している。
本研究では、申川断層付近の３カ所で掘削調査を行うとともに、UAV レーザ測量による撓曲崖の地形解析を行い、断層周辺の地下構造と地表変位の関係について検討した。
撓曲崖基部から約30 m西側の五里合低地の沖積層堆積物は、表層部を厚さ約２mの泥炭層が覆う軟質な砂層からなり、深度12mで比較的よく締まった潟西層砂層に達する。断層の東側の撓曲崖で実施した掘削では、堀止深度まで少量の細礫が混じる潟西層砂層が占める。20 m以深では、0~2本/mの密度で小断層が発達している。今回の掘削は断層面まで到達しなかったが、断層面は撓曲崖基部から水平距離３ｍおよび25 ｍ東側の地点ではそれぞれ10mおよび26m以深にあると推定され、浅部でやや高角の断層面が推定される。
五里合低地東縁部に沿って南北500 m、撓曲地形を横断するように東西約1000 mの区画でUAV（ドローン）によるレーザ測量をおこなった。レーザ測量はDJI 社製 Matrice 300 RTKドローンに Zenmuse L1 を搭載し、真下（90°）および60°斜め方向の計測を0.5m間隔で実施した．測量範囲には、40 m程度の高度差があるため、高度80 m程度で測定を行った。計測データから建物や樹木などの地物を取り除いてグラウンドデータを抽出し、地形の詳細な平面図および断面図を作成した。
上盤には、申川断層の走向方向に調和的な小断層による変位と考えられる複数の小段差が検出された。撓曲崖の上部（上盤側）には高まりが存在しその東側には周囲より２～３m低い幅約100 mの舟底状の地形が発達する。この構造はバックスラストや上盤の撓曲変形に伴う正断層による変位の可能性がある。